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強膜炎
柿崎 寛子

監修医師
柿崎 寛子(医師)

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三重大学医学部卒業 / 現在はVISTA medical center shenzhen 勤務 / 専門は眼科

強膜炎の概要

強膜炎とは、眼球を覆う「強膜」に強い炎症をきたす疾患です。

強膜とはいわゆる「白目」のことで、眼球の外側を覆う白い組織を指します。光をほとんど通さないため、眼球内に過剰な光が入らないようにしたり、眼球の形状を保ったりする役割があります。強膜は頑丈で障害されることが少ない組織であるものの、さまざまな原因によって炎症が起こることがあります。

強膜炎の原因は大きく感染性と非感染性に分けられます。感染性の場合は、目の怪我や手術によって細菌が感染したり、「単純ヘルペスウイルス」が感染したりした際に発症します。

非感染性の場合は、さまざまな全身疾患に伴って強膜炎を発症するケースがあります。国内では、強膜炎の原因は非感染性のものが最も多く認められ、そのうち約半数が「関節リウマチ」によるものだといわれています。

強膜炎を発症すると、目の痛みや充血、眼球の運動障害、視力の低下などを認めます。強膜は知覚神経が豊富であるため、目の痛みは強く、顔にまで広がるケースもあります。

強膜炎の発症を認める場合には、原因となる疾患の治療をするとともに、副腎皮質ステロイド薬の点眼薬などを用いた薬物療法が行われます。

強膜炎

強膜炎の原因

強膜炎の原因は、感染性と非感染性に大きく分けられます。

感染性

感染性では、目の手術や怪我を負った際に細菌感染を起こし、強膜炎を発症することがあります。他にも、「単純ヘルペス」や「ライム病」「ノカルジア症」「緑膿菌感染症」などによって発症するケースもあります。

単純ヘルペス

「単純ヘルペスウイルス」というウイルスによって引き起こされる感染症です。口唇や性器のほか、目にも感染することがあります。
感染後はウイルスが神経節に潜伏し、免疫力の低下などをきっかけに症状が繰り返し出現することがあります。

ライム病

「ライム病ボレリア」と呼ばれる病原体を持つマダニに噛まれることで、発症する疾患です。発症すると、筋肉痛や倦怠感を伴ってマダニに噛まれた部位に赤く盛り上がる丘疹が発生します。進行すると、記憶障害や脳・脊髄の炎症など重篤な状態に陥ることがあります。

ノカルジア症

「ノカルジア菌」による感染症です。主に副腎皮質ステロイド薬などを内服し免疫力が低下している状況で「日和見感染」として発症します。発症すると、肺や脳、皮膚へと広がり、膿瘍を形成します。

緑膿菌感染症

「緑膿菌」による感染症です。緑膿菌は水回りなどの生活環境にありふれた細菌であり、術後などの免疫力が低下している際に感染することがあります。発症すると、高熱をきたしたり感染部位に床ずれ(褥瘡)ができたりします。

非感染性

非感染性では「関節リウマチ」「ベーチェット病」「全身性エリテマトーデス」「サルコイドーシス」などが原因になることがあります。
なかでも関節リウマチによるものが最も多いです。

関節リウマチ

自己免疫の異常により慢性的に関節に炎症をきたす疾患です原因は解明されていないものの、遺伝的な要因などによって関節内に存在する「滑膜」が異常に増殖し、発症することが考えられています。発症すると、手指や足が腫れて変形したり関節がこわばったりすることがあります。

ベーチェット病

主に眼、皮膚、外陰部、口腔粘膜に炎症が起こる疾患です。原因は不明であるものの、遺伝的な要因に感染などの環境的な要因が加わることで白血球の機能に異常をきたし、発症すると考えられています。

全身性エリテマトーデス

内臓や皮膚、全身のあらゆる部分に多彩な症状を呈する女性に多い疾患です。明確な原因はわかっていないものの、自身の免疫細胞が誤って自分の体内の細胞を攻撃してしまう「自己免疫疾患」であるといわれています。

サルコイドーシス

複数の臓器に「肉芽種」という腫瘍が多発する疾患です。原因不明で、年齢や性別を問わず発症することがあります。

強膜炎の前兆や初期症状について

強膜炎を発症すると、目の痛みや充血、視力低下、眼球の運動障害などを認めます。強膜は知覚神経が豊富な組織であるため、痛みを感じやすく、強い痛みを感じやすくなります。痛みは目に留まらず、顔にまで広がるケースもあります。

強膜炎の検査・診断

強膜炎が疑われる場合には、感染性か非感染性かの鑑別のため、目やに(眼脂)を採取して培養し、原因となる細菌の存在を確認する検査が行われます。

また、強膜の炎症の程度を確認するため、散瞳薬を点眼して瞳孔を広げ、眼底に光を当てて拡大して細かく観察する「細隙灯検査」が行われることもあります。

非感染性の強膜炎が疑われる場合には、血液検査や画像検査などの全身検査を行い、関節リウマチなどの全身性の病気が隠れていないか調べます。

このほか、まれに発症することのある「後部強膜炎」の診断として、超音波検査やCT検査などが行われるケースもあります。

強膜炎の治療

感染によって強膜炎を発症している場合は、原因となる細菌に有効な抗菌薬や抗真菌薬が用いられます。抗菌薬や抗真菌薬は、内服のほか点眼薬も用いられ、頻回の点眼を行う必要があります。

非感染性の原因による場合、例えば関節リウマチなどの原因となる疾患がある場合は、疾患に対する治療が行われます。

炎症を起こした強膜に対しては、副腎皮質ステロイド薬の点眼薬を投与します。点眼薬で症状の改善が見られない場合は、点滴で投与されるケースもあります。強膜の炎症を抑えるために非ステロイド性抗炎症薬の内服薬も用いられます。

強膜炎になりやすい人・予防の方法

関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの全身疾患、膠原病などを有する場合は、強膜炎を発症するリスクがあります。

強膜炎の原因になりやすい疾患を発症している場合は、放置せず医療機関を受診し、適切な治療を受けることが予防にもつながります。


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