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「ベーチェット病」を発症すると現れる症状はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/03/27
「ベーチェット病」を発症すると現れる症状はご存知ですか?医師が監修!

指定難病の1つに、「ベーチェット病」という病気があります。一般的には、あまりなじみがなく、「病名は聞いたことがあるけれど、詳しくはよく知らない」という方も多いのではないでしょうか。

ベーチェット病は働き盛りの男女に発病する病気で、研究は進んでいるものの原因も治療法もまだ確立されていません。ベーチェット病とはどんな病気なのか?

この記事では、ベーチェット病の特徴的な症状や検査方法・病気の予後・生活するうえでの注意点について解説しています。ベーチェット病についての理解と知識を深めていきましょう。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

ベーチェット病の原因や症状

疲れた女性

ベーチェット病とはどのような病気ですか?

ベーチェット病とは、身体の免疫機能が何かしらの原因で過剰に反応してしまい、身体の広範囲に渡って炎症が起きることで、様々な症状を引き起こす難病です。
患者さんによって現れる症状は様々で、症状が「出たり」「治まったり」を長期間かけて繰り返すのが特徴となります。
主な症状4つと、副症状から「完全型」「不全型」「特殊型」の3種類に分類されますが、原因も治療法も確立されていないため、指定難病56番に指定されています。

原因は何ですか?

現段階では、はっきりとした原因は不明です。
しかし、人間の免疫に関わる重要な分子であるヒト白血球抗原(HLA)の「HLA-B51」や「HLA-A26」というタイプが通常よりも多いことが注目されており、遺伝的な要因に環境的な要因(病原体に感染するなど)が加わることで白血球が過剰に反応してしまい、ベーチェット病を発症するのではないか、と考えられています。

特徴的な症状を教えてください

ベーチェット病の特徴的な症状として、「口腔粘膜のアフタ性潰瘍」「外陰部潰瘍」「皮膚症状」「眼症状」の4つがあり、厚生労働省の診断基準にもなっています。

  • 口腔潰瘍(口腔粘膜のアフタ性潰瘍)

口の中にできる、円形の浅い潰瘍です。頬の内側の粘膜・口蓋粘膜・口唇・舌・歯茎にできやすく、ベーチェット病の患者さんの約98%に現れます。ベーチェット病の症状の中で最初に出現することが多く、高確率で繰り返し起こりやすい症状です。潰瘍ができることで口腔内に痛みが生じ、飲食が苦痛となる患者さんもいます。

  • 外陰部潰瘍

外陰部にできる、深めの潰瘍です。口腔潰瘍と同じような形で現れますが、口腔潰瘍より深めの潰瘍になるため、患者さんによっては跡が残る場合もあります。男性では亀頭・陰嚢・陰茎にできやすく、女性では膣粘膜や大陰唇・小陰唇にできやすく、痛みを伴う潰瘍です。

  • 皮膚症状

顔や頸部・胸部に、にきびの様な皮疹(座瘡様皮疹)や、下腿や前腕に1㎝から5㎝程の皮疹(結節性紅斑様皮疹)が現れます。結節性紅斑様皮疹は周囲の皮膚が赤くなり、触れると固く、痛みを伴う皮疹です。皮膚の表面に近い血管に血栓性静脈炎がみられることもあり、こちらは特に下肢に多くみられます。

  • 眼症状(ぶどう膜炎)

ベーチェット病には様々な症状がありますが、最も注意をしなければならないのが眼症状です。前眼部と後眼部で現れる症状が異なり、前眼部では充血や眼痛、光がまぶしくて目を開けていられない(羞明)、霧がかかったように見える(霧視)の症状があり、後眼部では網膜や脈絡膜に炎症が起きて目がかすむ、視野が狭くなる(網膜絡膜炎)や、視力低下がみられます。
一時的に両眼に起こる炎症で、症状が治まれば改善されます。しかし、症状が繰り返し起こるのがベーチェット病の特徴なので、炎症を繰り返すことでダメージが蓄積し、視力低下から失明に至る場合もあるので適切な治療が必要です。

ベーチェット病の患者数はどのくらいですか?

ベーチェット病の患者数は、日本では約2万人いるといわれており、北海道や東北などの寒い地域に多く、南の暖かい地域に行くほど患者数は減少しています。
日本の他にも中国・韓国・中近東・地中海の沿岸にある地域に患者数が多くみられ、北緯30度から北緯45度付近の地域に集中していることから「シルクロード病」と呼ばれる場合もあります。
発症する年齢は20〜40代に多く、30代がピークです。男女の差はありませんが、男性のほうが副症状である神経病変や血管病変を発病しやすく、重症化しやすい傾向にあるといわれています。

ベーチェット病は遺伝するのですか?

遺伝的な要因は原因の1つにはなっていますが、まだ解明されていないことも多いため、
家族間で遺伝するかどうかは分かっていません。現在ではヒト白血球抗原(HLA)以外の原因が次々と解明されてきていますので、研究は着実に進んできています。

ベーチェット病の診断や治療方法

血液検査の数値

検査方法を教えてください。

主な検査として、問診や触診・血液検査・髄液検査・遺伝子検査・皮膚の過敏反応を診る検査(針反応)・画像検査(MRI)などがおこなわれます。
ベーチェット病の主症状である口腔潰瘍や外陰部潰瘍・皮膚症状や眼症状があるかどうか、血液検査では炎症を示す数値が高いかなど、詳しく調べる検査です。遺伝子検査ではベーチェット病でよく見られるHLAを調べ、髄液検査では採取した髄液から細胞の数や炎症を起こす物質の量などを調べます。
また、腹部CTやMRIの画像検査は、血管に動脈瘤や血栓ができていないか確認するためにおこなう検査です。

診断はどのように行われますか?

ベーチェット病の症状は、他の病気でも現れる症状であるため、1度の診察で診断をすることは難しいです。「どんな症状が現れているのか」「症状が出たり、治まったりを繰り返しているのか」「他の病気の可能性はないか」などを注意深く観察していきます。
経過観察や検査をしながら、最終的に診断されるので、ベーチェット病と診断されるまでに時間がかかる場合もあるでしょう。厚生労働省では、4つの主症状と5つの副症状(関節炎・血管病変・精巣上体炎(副睾丸炎)・消化器病変・中枢神経病変)の組み合わせが診断基準になっており、ベーチェット病はそこからさらに3種類に分類されます。

  • 完全型ベーチェット病

ベーチェット病の主症状である「口腔粘膜のアフタ性潰瘍」「外陰部潰瘍」「皮膚症状」「眼症状」の4つが現れているものです。

  • 不全型ベーチェット病

以下の4つの組み合わせから診断されます。
1)主症状が3つ現れている。
2)主症状が2つ+副症状が2つ現れている。
3)眼症状+他の主症状1つが現れている。
4)眼症状+他の主症状2つが現れている。

  • 特殊型ベーチェット病

4つの主症状は見られないものの、副症状の関節炎・血管病変・精巣上体炎(副睾丸炎)・消化器病変・中枢神経病変が現れている状態です。

治療方法を教えてください。

ベーチェット病について研究も進み、様々な治療薬が開発されていますが、現段階では完治させる治療法はまだありません。患者さんのそれぞれの症状に合わせた生活の指導や、薬物療法が治療の基本です。
ベーチェット病は、何かしらの原因で免疫が過剰に反応してしまい、炎症が起こることで様々な症状が現れる病気のため、過剰に反応してしまった免疫を抑える薬が使用されます。
炎症に対しては炎症を鎮める薬や免疫抑制剤、痛みがある時は鎮痛剤など、患者さんそれぞれの症状に合わせた適切な薬です。

ベーチェット病の予後や生活上の注意点

洗面台

ベーチェット病の予後は?

ベーチェット病は様々な症状が長期に渡って繰り返し起こる病気ですが、一般的に予後は悪くありません。ただ、眼症状や特殊型ベーチェット病がある場合は度重なる炎症でダメージが蓄積され、後遺症が残ることもあります。
ベーチェット病の主症状である眼症状のうち、後眼部に病変が起きてしまうと視力低下の症状が現れるので、炎症を繰り返していくうちに失明する可能性があります。しかし、現在は治療薬も新しいものが開発されており、失明の可能性はかなり低くなりました。

生活するうえで注意することはありますか?

ベーチェット病はストレスを受け、身体が冷えることで症状を引き起こすといわれています。ストレス軽減や身体の休養、バランスの取れた食事、睡眠をしっかりとるなど、規則正しい生活を送るよう心掛けてください。
また、日頃から歯磨きなどで口腔内の環境を清潔に保ちましょう。歯周病や虫歯の菌による口腔潰瘍の再発や、悪化の防止につながります。喫煙は病気を悪化させる原因になりますので、禁煙するのが望ましいでしょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

ベーチェット病は「症状が出たり」「治まったり」を繰り返す病気のため、病気とは長い付き合いになります。病気を抱えながら日常生活を送ることは簡単ではないため、心身ともに疲弊してしまう時もあるでしょう。
不安なことや分からないことは、一人で抱え込まず、担当の医師や看護師などに相談してください。
また、ベーチェット病の治療は長期間に渡り継続していくものですので、症状が出ていない時期でも定期的に通院し、経過を見るようにしてください。

編集部まとめ

カルテを書く医師
ベーチェット病は身体の免疫機能が何かしらの原因で過剰に反応してしまい、身体の広範囲に渡って炎症が起きることで、様々な症状を引き起こす難病です。

なじみのない疾患で、潰瘍など他の疾患でもみられる症状なため自分では気が付かないことも多いでしょう。

病院へ検査に行ってもすぐに診断されないこともあります。しかし、放っておくと悪化し失明などの大きな症状を引き起こすこともあるので注意が必要です。

現在は治療薬なども開発され予後が良くなってきているため、病院を受診し早期に発見することが大切です。

指定難病ということもあり完治することは現状難しいのですが、症状に対し薬物療法など行い対処します。

病気とうまく付き合っていくためにも思い当たる症状がありましたら、病院を受診し治療を行うようにしましょう。

この記事の監修医師