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「サルコイドーシス」の症状・原因・診断基準はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/06/01
「サルコイドーシス」の症状・原因・診断基準はご存知ですか?医師が監修!

サルコイドーシスは、多臓器に病変をつくる原因不明の全身性炎症性の病気です。

肉芽腫と呼ばれるしこりを多臓器に形成して多様な症状を引き起こしますが、原因が特定されないので治療法がしっかりと確立していません。

どのような病気なのか今一つわかりにくい方もいると思いますので、今回はサルコイドーシスについてご紹介いたします。

どのようなものが原因として考えられているのか、そして診断基準・治療方法・余命・日常生活における注意点まで詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。

矢富 正徳

監修医師
矢富 正徳(医師)

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東京医科大学病院
保有免許・資格
日本耳鼻咽喉科学会認定専門医
日本耳鼻咽喉科学会認定指導医
日本睡眠学会認定睡眠専門医
日本めまい平衡医学会認定めまい相談医
難病指定医
身体障害者福祉法第15条指定医

サルコイドーシスの症状と原因

診察する医師

サルコイドーシスはどのような病気ですか?

サルコイドーシスは、全身のさまざまな臓器に類上皮細胞肉芽腫(慢性的な炎症反応)が出現する原因不明の全身性炎症性疾患です。
発症は男性より女性に多いことがわかっています。年齢でみると女性では以前は25〜39歳・50〜60歳代の2峰性でしたが、近年は20~39歳のみの1峰生への変化がみられ、男性は20〜34歳に多い特徴があります。発症頻度は肺門縦隔リンパ節・肺・眼・皮膚が特に高く、神経・筋肉・心臓・腎臓・骨など多臓器に病変をつくるのです。
発症時の症状が多彩であるため診断が難しく、経過が長期になる症例が増加傾向になっています。特に肺・心臓・神経・腎臓など、重症化した場合に予後に影響を及ぼすような臓器・組織では、適切な治療と十分な全身管理が必要です。

症状を教えてください。

発見時のサルコイドーシスの1/3は無症状という報告があります。しかし症状が現れる場合は、発症した臓器によってその症状も異なります。眼ではぶどう膜炎を起こし、視力低下・霧視(目が霞んだように見えること)・飛蚊(虫が飛んでいるように小さな点が見えること)・羞明(まぶしく見えること)などの症状が出る場合が多いです。肺・胸部リンパ節では通常は症状がみられませんが、進行すると呼吸困難などの呼吸器症状が現れます。皮膚では、痛み・痒みを伴わない紅斑(ピンク〜赤色の斑状・点状の発疹)が全身のどの部位にもみられる場合が多いです。心臓に発症すると不整脈が出るようになり、重症化すると心停止を起こしてしまうこともあり注意が必要です。また、筋肉では腫瘤、神経では神経麻痺などもあります。これらは臓器に関係する症状です。
その他に臓器とは関連のない症状もあります。例えば、発熱・全身倦怠感・耳鳴・手足のしびれなどです。このようにサルコイドーシスは発症する臓器がさまざまで、症状も多様となります。気になる症状が現れた場合は、すぐに受診し適切な診断を受けることが重要です。

発症の原因を教えてください。

原因は不明とされていますが、何らかの原因で引き起こされる抗体の過敏性免疫反応と考えられています。これまで、感染原因としてアクネ菌、結核菌などが研究され、仮説も立てられてきました。しかし、いずれも確証はなく、未だに明らかになっていません。
また調査により、サルコイドーシスには家族発生が少なからずみられています。遺伝的な要因として、いくつかの疾患感受性遺伝子が関係しているとも考えられていますが、こちらも確かではありません。

サルコイドーシスは人にうつるのでしょうか?

サルコイドーシスは、人から人へとうつるような感染性の病気ではありません
発症する臓器は患者個々によって違うので、「このような人はこの臓器に病変が出る」という決まった形はないです。ご自身が罹患した場合でも、他人にうつしてしまうといった心配はありませんので、安心してください。

サルコイドーシスの診断基準と治療方法

レントゲンを確認する医師

サルコイドーシスの診断基準を教えてください。

本疾患は多臓器に起こり、症状・所見がさまざまであるため、全身を診察して総合的な判断を行う必要があります。診断は原則として「サルコイドーシスの診断基準(2015年)」に従って行い、組織診断群・臨床診断群の2つの基準に沿って診断します。組織学的に肉芽腫を明らかにして、2臓器以上の多臓器に病変が確認されることが重要です。肉芽腫が明らかとなれば組織診断群として診断されます。肉芽腫が明らかでない場合は、臨床診断群で診断します。
呼吸器・眼・心臓の3臓器のうち2臓器以上に強く疑わしい臨床所見が認められ、さらに両側肺門縦隔リンパ節腫脹・血中アンギオテンシン変換酵素(ACE)上昇・尿中カルシウムの高値・ツベルクリン反応など特徴的な検査所見の5項目中2項目以上が陽性である場合に診断されるケースが多いです。

どのような検査を行いますか?

検査は、血液検査・尿検査・生理検査・画像検査・気管支鏡検査などです。
血液検査では、一般血液・肝機能・腎機能に加え、活動性の指標として重要な血中アンギオテンシン交換酵素(ACE)・リゾチームなどの酵素値上昇の有無、尿検査では尿中カルシウム高値の有無を確認します。生理検査は肺機能検査・心エコー・心電図などです。画像検査には、胸部レントゲン・ガリウムシンチグラムがあり、これらで病変拡大の有無・活動性がわかります。
また、肺サルコイドーシスが疑われる際には気管支鏡で肺胞を洗い、洗浄液中の成分を調べて診断に役立てます。

治療方法を教えてください。

原因不明の疾患であるため、現状では根治療法はありません。症状が軽く自然治癒が期待される場合には、経過観察として治療を行わないケースもあります。しかし症状の進行・検査値の大きな異常が認められ、日常生活に支障をきたしていたり、将来的に生命に危険が及んだりする場合には治療が行われます。
治療は主に投薬で、サルコイドーシスの病態に基づいて最も選ばれるのがステロイドです。しかし、再発・難治する場合も多く、二次治療薬としてメトトレキセート・アザチオプリンなどの免疫抑制剤も使用するのが一般的です。

サルコイドーシスは治りますか?

サルコイドーシスは自然治癒する症例もあれば、治療を行っていても悪化する症例もあり、経過が大変幅広いのが特徴です。経過は、2年以内に軽快する短期改善型・2〜5年の経過をたどる遷延型・5年以上の経過となる慢性型・難治型にわけられます。
無症状の患者の70〜80%は自然に改善する場合が多いのですが、多臓器に病変がある症例の場合は慢性型になることも少なくありません。さらに肺線維進行例・心臓病変合併例などでは、難治化して予後が悪くなる場合もあります。
しかしながら、死亡例は少ない病気です。全体的な死亡率は低いですが、心臓サルコイドーシスは5年での死亡率が25%あるという報告もあり注意が必要です。

サルコイドーシスの余命と日常生活での注意点

問診を受ける女性

サルコイドーシスと診断された場合の余命を教えてください。

先述しましたが、サルコイドーシスのほとんどが自然治癒または慢性化であり、死亡例が少ないことがわかっています。
全身のさまざまな臓器に病変が出て、症状も多様なので、診断されたとしても経過もそれぞれ違います。つまり、個々で経過が異なるので他の患者の経過・余命が自身に当てはまるのはまれです。予後・余命などが気になる場合には、主治医に確認するとよいでしょう。

サルコイドーシスは遺伝するのでしょうか?

同じ家族内で発症した症例は、ごく少数ですが報告されています。しかし、ほとんどの症例は血縁内に同じサルコイドーシスが発症した方はいないことがわかっています。
サルコイドーシスは原因不明の疾患で、人によって病変のある臓器・症状もさまざまです。家族内で発症したとしても、両者の関連性を証明できる根拠に乏しく、明確ではありません。家族内での発症はあるものの、遺伝性をはっきりと示すような根拠はないのが現状です。従って、一般的には遺伝性ではないと考えられています。

日常生活での注意点はありますか?

サルコイドーシスと診断された場合は、日常生活において注意すべき点があります。多臓器に炎症反応がある病気なので、激しい運動・重労働・過労は避けましょう。
また、ビタミンDが病状を悪化させる報告があるため、魚類・全卵(生)・キノコ類などビタミンDを多く含む食品を避けた方がよいでしょう。日光はビタミンDの生成を促しますので、日光浴もなるべく避けてください。
そして、サルコイドーシスに罹患している女性患者は、出産後に病状が悪化するケースもありますので注意が必要です。治療中でステロイド・免疫抑制剤を使用している際には、妊娠してよいか主治医に相談することをおすすめします。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

サルコイドーシスは、肉芽腫を形成する病気ですが、できた腫瘤は悪性のものではありません。多臓器に病変を起こしますが、経過はよく自然治癒するケースも多いのが特徴です。しかし、一部では難治化してしまうケースもあり、的確な診断と適切な治療が必要です。
多臓器に病変があると、その臓器ごとにさまざまな症状が出ます。早期診断が今度の経過に影響しますので、気になる症状がある場合には早めに受診をして診断を受けるようにしてください。

編集部まとめ

案内する看護師
原因不明の多臓器疾患であるサルコイドーシスについてご紹介しました。

「原因不明」「多臓器」と聞くと、悪性の病気を想像してしまう方もいるかもしれません。

しかし、この記事を最後まで読んでいただいて、自然治癒する症例の多い怖くない病気であることがおわかりいただけたと思います。

原因不明で1人1人発症パターンも異なるので予防などは難しいですが、気になる症状がある場合には早めに受診して、専門医の診断を受けましょう。

この記事の監修医師