「食欲がない」原因はご存知ですか?医師が徹底解説!
食欲がない時、身体はどんなサインを発しているのでしょうか?Medical DOC監修医が考えられる病気や何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
久高 将太 医師
「食欲がない」症状で考えられる病気と対処法
「最近、食欲がない」というのは誰もが経験したことがある症状だと思います。食欲の有無には何が関連しているのでしょうか。食欲は胃腸や肝臓、日常生活や精神的ストレス、年齢によるものから、ありとあらゆる要因が絡み合っていることが多く、一概には言えません。今回は食欲がなくなる原因として多くみられる病気やその対処法について解説させていただきたいと思います。
食欲がない症状で考えられる原因と治し方
食欲がない状態とは食事を取りたいという意欲が生じない状態のことを指しますが、自覚症状には個人差があるので明確な定義はありません。1回に食べる量にもよりますが、1日1-2食しか食べれない、もしくはそれより食べていなくても食欲が生じない場合は食欲がない状態と考えてよいでしょう。
食欲がない状態をすぐに改善させる方法は、その原因を取り除くことです。治療ができる病気があれば治療し、精神的ストレスが原因であれば休養をとる必要があります。
食欲がなくなる代表的な原因に以下のようなものがあります。
- 消化器疾患:胃・十二指腸炎、肝炎、膵炎、肝硬変など
- 内分泌疾患:甲状腺機能低下症、副腎皮質機能低下症など
- 悪性腫瘍:胃癌、大腸癌、白血病など
- 精神疾患:うつ病、摂食障害(神経性食思不振症)、自律神経失調症
- 薬剤性:お薬の副作用
- その他:感染症全般、妊娠によるつわり、加齢、生活習慣
食欲低下が一時的なものであればストレスや疲労が原因である可能性がありますが、体重が減り続ける、もしくは何食も食べなくても平気というような状態が続く場合は、背景に何かしらの病気が疑われますので、全身を詳しく調べる必要があります。内科や総合診療科がある総合病院、もしくは近くの内科のクリニックを受診するようにしましょう。
お腹は空くが食欲がない症状で考えられる原因と治し方
空腹感はあるものの、食べられる量が少ない時は、無理に食べない方がよいでしょう。考えられる原因として、食道や胃、十二指腸などに炎症や悪性腫瘍などがある可能性があります。例えば慢性胃炎や胃潰瘍がある場合は食後に胃が痛くなる症状がみられやすく、食事が進まない可能性があります。一方で十二指腸潰瘍がある場合は、空腹時にお腹が痛むことで、お腹が減っても食事が進まないことがあります。他にも食道に悪性腫瘍(食道がん)があり、食べ物が物理的にうまく通らないということも考えられます。
食道・胃・十二指腸に関しては胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)をすることで何か異常がないか調べることができます。消化器内科がある病院を受診するか、定期的に人間ドックで胃カメラをしてもらうとよいでしょう。
食欲がなく吐き気がする症状で考えられる原因と治し方
吐き気がある場合は当然ながら食欲はなくなってしまうはずです。吐き気といっても慢性的に吐き気がある場合と、急に吐き気が起こる場合があります。慢性的な吐き気の原因となる代表的な状態は腸閉塞や感染性胃腸炎、便秘、妊娠中のつわり、お薬の副作用など様々です。このような場合は無理に食べるのではなく、水分を少しずつとるようにして様子をみることが重要です。慢性的な吐き気の場合は急を要する必要がない場合もあるので、焦らずに近くの内科を受診するようにしましょう。一方で急な吐き気がある場合は注意が必要です。原因としては心筋梗塞や急性膵炎、電解質の異常(高カルシウム血症)、腎不全、髄膜炎など、適切に治療をしないと命に関わるような病気が多く挙げられます。そのため、突然吐き気がみられ、何回も吐いてしまうような状態の時は、救急科を受診するか、総合病院の内科を受診するようにしましょう。
ストレスで食欲がない症状で考えられる原因と治し方
普段は食欲がある人で、疲労や精神的ストレスが続いたときに食欲がない場合は、体の疲れに加えて精神的なストレスで食欲が落ちている可能性が高いです。その場合は胃腸にもストレスがかかり、みぞおちがキリキリ痛む症状を伴っていることがあります。思い当たるイベントが続いた後に食欲がない時の原因は主にストレスです。ただ、慢性的に続く場合は機能性ディスペプシア(胃腸に明らかな原因がないにも関わらず胃腸の調子が悪い状態)や摂食障害(神経性食思不振症)、甲状腺機能低下症などが原因である可能性があります。実に多種多様な原因がありえますが、まずはしっかり休養をとることでストレスを緩和することを試みてください。改善がないようなら他の病気を疑い、クリニックや総合病院の内科などで原因を調べてもらうようにしましょう。
すぐに病院へ行くべき「食欲がない」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
胸の痛み、冷や汗、左肩や首の痛み、頭痛、下痢などを伴う場合は、救急科へ
吐き気や食欲低下だけではなく、他の症状を伴う時は重大な病気が隠れている場合があるので注意が必要です。代表的な病気をいくつか挙げると急性心筋梗塞や脳出血、腸閉塞などです。心筋梗塞は心臓の血管が詰まってしまい、心臓の働きが一気に悪くなってしまう病気です。吐き気だけではなく胸の痛み、冷や汗、左肩や首の痛みなどを伴うことがあります。脳出血は脳の血管が破れて出血が起こってしまう病気です。この場合は吐き気だけではなく、激しい頭痛や意識障害がみられることがあります。腸閉塞は腸のどこかが色々な原因で詰まってしまい、食べ物や便が通らなくなる病気です。吐き気だけがみられる場合がありますが、数日続く便秘やお腹の張り、ふくらみが伴うこともあります。吐き気に下痢を伴う場合は胃腸炎の可能性があります。下痢の量や回数が多いと脱水を起こしてしまうことがあり、まれに重症化してしまうことがあります。このように吐き気に加えて他の症状を伴う場合、緊急を要する病気の可能性がありますので、救急科がある病院を受診するようにしましょう。
受診・予防の目安となる「食欲がない」のセルフチェック法
- ・食欲がない以外に吐き気がある場合
- ・食欲がない以外にお腹の痛みがある場合
- ・食欲がない以外に急激な体重減少がある場合
「食欲がない」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「食欲がない」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
胃がん
胃がんとは、胃の粘膜にできる悪性腫瘍のことです。胃がんの原因の多くがピロリ菌(ヘリコバクターピロリ)の感染であると言われています。他にも喫煙や塩分の多い食事も影響しているとされています。
一般的に胃がんではないか調べるためには胃カメラを行いますが、胃カメラではピロリ菌に感染していないかもみることができます。ピロリ菌に感染していることが分かった場合は、何よりもピロリ菌の除菌が優先されます。
胃がんは進行してこない限り自覚症状はみられないことが多いです。そのため、食欲低下などの自覚症状が現れる前に、人間ドックや健康診断を受け、定期的に胃カメラで検査をすることが必要です。
健康診断や人間ドック以外にも、消化器内科を専門とするクリニックや医院でも胃カメラを受けることができることが多いため、ご自身で胃カメラを希望される場合はこれらの病院を受診することをお勧めします。
神経性やせ症(拒食症)
神経性食思不振症とは、拒食症とも言われていますが、食べることや太ることが異常に怖くなることで食事がとれなくなってしまう病気です。周りの人からみると痩せているにも関わらず、自分は太っていると感じてしまい、過剰なカロリー制限や激しい運動を行ってしまうことが多くあります。食事にほとんど手を付けられないタイプと、過食をした後の嘔吐を繰り返すタイプがあります。原因としては精神的なストレスや家庭環境、トラウマになるような出来事など様々です。
食事を極端に制限し、瘦せすぎることで、全身の衰弱や低栄養のため若くして命に関わる合併症が起こりかねません。基本的には精神科や心療内科を受診して治療を行ってもらうことが必要になります。思い当たる症状がある場合は自分で何とかしようとせずに精神科や心療内科を受診することをお勧めします。
逆流性食道炎
逆流性食道炎とは、胃液や食べ物が食道に逆流してしまうことで胸焼けや食欲低下、呑酸(どんさん:胃酸が喉や口の中まで上がってくることで酸っぱい感じや苦みを感じる症状)などの不快な症状がみられる病気です。症状が出やすいのは食後や、仰向けになる夜間などです。
逆流性食道炎を予防するためには食事の直後に横にならないようにすることや、アルコールや脂っこいものを多く食べないようにすること、食べすぎを防ぐことなどが重要です。
逆流性食道炎かもしれないと疑った時は人間ドックや健康診断、または消化器内科がある医療機関で胃カメラをしてもらうと診断することができます。
もし診断を受けた場合は胃酸を抑えるお薬を処方してもらうことで症状がやわらぐ可能性があります。
「食欲がない」ときの正しい対処法は?
食欲がない時は胃腸に負担がかかっていることが多いです。そのため脂っぽいものや肉類が多いレシピは避け、お粥やうどんなど消化のよい食べ物を選んで食べるようにしましょう。
食生活においてアルコールを多量に摂取する習慣や、喫煙習慣がある場合は食欲がなくなる原因のひとつになります。できることならお酒はほどほどに、喫煙はやめた方がよいでしょう。
ストレスや食べ過ぎなど思い当たるイベントがあった場合は市販薬や処方された胃薬を飲んでもよいでしょう。ただ、思い当たることがないのに食欲がない、もしくは数日経っても改善しない場合は医療機関を受診した方がよいでしょう。
市販薬は多くの種類があるので一概には言えませんが、例を挙げると、「ガスター10」「セルベール」「ブスコパン」「キャベジン」などがあります。体に合うかどうかについてはなかなか自己判断が難しいですが、飲んでいても症状が改善しない、もしくは症状が悪化する場合はその市販薬をやめ、病院を受診した方がよいでしょう。
食欲がない症状をやわらげるためには、ストレスが原因であれば体全体を温めてあげた方がよいでしょう。冷たすぎる飲み物も胃腸を冷やすので、飲み物も温かいものを選んで飲むようにしましょう。質の高い睡眠をしっかり確保することもストレスを緩和し、リラックスするためにとても重要です。
食欲がない症状をあっという間によくする方法はなかなかないといってもよいでしょう。生活習慣を見直したり、市販薬を試してみても症状がなかなか改善しない場合は、何か重篤な病気が隠れている可能性もあるので、我慢せず内科のある医療機関を受診しましょう。
「食欲がない」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「食欲がない」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
食欲がない時の栄養補給はどうすればいいでしょうか。
久高 将太 医師
うどんやお粥など、胃腸に負担がかからない物を食べられる量だけ食べるようにしましょう。もし食事が難しいようなら市販のビタミン、ミネラル、糖などが含まれた栄養ゼリーやドリンクを少しずつ摂取し、栄養補給するようにしましょう。
お腹が空くのに食欲がない日が何日も続くのは病院に行くべきですか?
久高 将太 医師
はい、胃腸などになにかしら影響が出ている可能性があるので、医療機関を受診した方がよいと考えます。
食欲不振でお腹が痛いのは何科の病院で相談できますか?
久高 将太 医師
内科、もしくは消化器内科がある病院やクリニックを受診しましょう。
まとめ
「食欲がない」という症状は様々な原因で起こる可能性があります。現代はストレスが多い環境で生活しなくてはいけない場面があり、ストレスや心身の疲労が原因となることが多いと思います。生活習慣や食習慣の中で改善できる点は自分で改善し、市販薬を上手に使って症状を緩和させる手段を身に着けておくと心強いはずです。ただし、症状が長く続く場合は背景に重篤な病気が隠れていることもあるので、専門の病院でみてもらうようにしましょう。
「食欲がない」で考えられる病気と特徴
「食欲がない」から医師が考えられる病気は18個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
循環器内科の病気
腎臓内科の病気
このほかにも、病気と言わないまでも、妊娠によるつわり、加齢、薬の副作用など多くの原因が考えられます。
「食欲がない」と関連のある症状
「食欲がない」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
「食欲がない」症状の他に、これらの症状がある場合も「逆流性食道炎」「胃がん」「大腸がん」「心不全」「腎不全」「甲状腺機能低下症」「うつ病」などの疾患の可能性が考えられます。複数併発している場合は、なるべく早く医療機関への受診をおすすめします。