「唾を飲むと喉が痛い」ときの対処法・考えられる病気はご存知ですか?
唾を飲むと喉が痛い症状で、身体はどんなサインを発している?Medical DOC監修医が主な原因や考えられる病気・何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
磯野 志真(医師)
「唾を飲むと喉が痛い」症状で考えられる病気と対処法
唾をのむと喉が痛いという症状は、誰しも一度経験したことがあるかと思います。原因は風邪などの一般的なものから、扁桃周囲膿瘍やのどの異物などの処置が必要な疾患、悪性腫瘍などまで多岐にわたります。本記事で一緒に学んでいきましょう。
熱があって唾を飲むと喉が痛い症状で考えられる原因と対処法
熱を伴ったのどの痛みの場合、ウイルスや細菌の感染が原因で発症する「急性咽頭炎」「急性扁桃炎」「扁桃周囲膿瘍」「急性喉頭炎」「急性喉頭蓋炎」などが考えられます。
痛みが軽い場合は解熱鎮痛剤をのむことで改善することもありますが、痛みが強く「食事がとれない」「口が開かない」「息がうまくできない」場合は、処置や入院での治療が必要な場合もあるので、速やかに耳鼻科を受診しましょう。
熱はないが唾を飲むと喉が痛い症状で考えられる原因と対処法
熱を伴わない、のどの痛みの場合、慢性炎症である「慢性咽頭炎」「慢性喉頭炎」、のどに異物がつまったり刺さったりする「咽喉頭異物」、耳鼻科領域の悪性腫瘍が考えられます。いずれも、耳鼻科での内視鏡下での診断が重要になってくるので、速やかに耳鼻科を受診しましょう。
すぐに病院へ行くべき「唾を飲むと喉が痛い」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
のどの痛みが強く食事がとれない、口を開けられない、息苦しい場合は、耳鼻咽喉科へ
「唾を飲むと喉が痛い」症状に加え、「痛みが強く食事がとれない」「口が開けられない」場合は、「扁桃周囲膿瘍」、また「息苦しさがあり呼吸がしにくい」場合は「急性喉頭蓋炎」が考えられます。いずれの疾患も進行すると窒息の可能性が高くなり非常に危険な状態になるので、耳鼻科を一刻も早く受診し、適切な処置・入院での加療を受けましょう。
受診・予防の目安となる「唾を飲むと喉が痛い」ときのセルフチェック法
- ・唾を飲むと喉が痛い以外に熱が出て扁桃が赤く腫れ白い膿がついている場合
- ・唾を飲むと喉が痛い以外に痛みで食事がとれなかったり口が開きにかったりする場合
- ・唾を飲むと喉が痛い以外に声のかれ・咳・息のしづらさがある場合
- ・唾を飲むと喉が痛い以外に首のリンパ節が腫れている場合
「唾を飲むと喉が痛い」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「唾を飲むと喉が痛い」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
咽頭炎
のどの一部の「咽頭」でおきた炎症を咽頭炎といい、急性咽頭炎と慢性咽頭炎に大別されます。
急性咽頭炎は、ウイルスや細菌などの感染によってのどに急性炎症が起きたものをさし、発熱やのどの痛みがあります。症状が軽い場合は市販の総合感冒薬の使用もいいかもしれませんが、症状が強い場合や気になる場合は内科や耳鼻科を受診されることをお勧めします。解熱鎮痛薬やうがい薬、場合によっては抗生剤などを使用して治療します。
慢性咽頭炎は、ウイルスや細菌などの感染のほか、胃酸逆流(逆流性食道炎)、自己免疫疾患、性病などで咽頭の炎症が慢性化しているものをさし、のどの痛みや違和感、飲み込みにくさを感じます。原因により治療の方針や専門科が異なるので、まずは耳鼻科を受診しましょう。
急性扁桃炎
のどの奥の左右両側にある「扁桃」に、ウイルスや細菌などの感染をきたして急性炎症を起こしたものを急性扁桃炎といいます。高熱やのどの強い痛み、唾を飲み込むときの強い痛みを自覚することが多く、口を開けると、扁桃が赤く腫れ、白い膿がついていることがあります。早めに耳鼻科を受診しましょう。抗生剤や解熱鎮痛剤の内服薬で治療します。症状がひどく、食事がとれないときは水分や抗生剤の点滴を行うことがあり、数日入院が必要になる場合もあります。のどの痛みや唾を飲み込むときの痛みが強い場合、急性扁桃炎以外にも、「扁桃周囲膿瘍」、ウイルスが原因の「伝染性単核球症」といった病気であることもありますので、なるべく早めに耳鼻科を受診しましょう。
扁桃周囲膿瘍
急性扁桃炎がなかなか改善せず、扁桃のまわりに膿がたまってしまう状態を「扁桃周囲膿瘍(へんとうしゅういのうよう)」といいます。のどの強い痛みや唾を飲み込むときの強い痛みがあり、痛みで食事がとれないことや口が開きにくくなることがあります。直ちに耳鼻科を受診しましょう。まずは腫れているところを切開して膿を出す処置を行い、入院下にて抗生剤やステロイドの点滴を連日行います。人によっては再発を繰り返す場合もあり、扁桃を手術で取る必要性が生じることもあります。
喉頭炎
のどの一部の「喉頭」でおきた炎症を喉頭炎といい、急性喉頭炎と慢性喉頭炎に大別されます。
急性喉頭炎は、主にウイルス感染が原因となり、声のかれ、咳、のどの痛み、発熱などの症状が生じます。治療は、症状に応じて吸入薬や鎮咳薬、解熱鎮痛剤などが使われます。
慢性喉頭炎は、長期にわたり炎症をおこしているもので、声の酷使、喫煙、逆流性食道炎、アレルギー、細菌やカビの感染などさまざまな原因が考えられます。声のかれ、咳などが主な症状で、治療としては原因の除去、吸入薬などが使用されます。
喉頭は空気の通り道であるため、炎症によって喉頭の腫れが強くなると呼吸が苦しくなることがあり、とくに「急性喉頭蓋炎」や「急性声門下喉頭炎」など急激に呼吸困難となる病気もあり注意が必要です。
急性喉頭蓋炎
空気の通り道にある「喉頭蓋(こうとうがい)」が急性炎症を起こしたものを急性喉頭蓋炎といいます。のどの痛みや発熱に加え、息がしづらい、のみこみにくいなどの症状が出てくることが多く、喉頭蓋が強く腫れて窒息の可能性が高くなるので、ただちに耳鼻咽喉科を受診しましょう。治療は、気管切開という呼吸の道を確保する処置を行い、入院下にて抗菌薬やステロイドの投与を連日行います。
咽喉頭異物
人ののどは「咽頭」と「喉頭」のふたつの器官があり、これらに魚の骨などの異物が誤って入り込んでしまうことを咽喉頭異物といいます。のどの痛みやせき込みを訴えることがあり、異物の大きさによっては窒息する危険性を伴います。小さなこどもでは魚の骨やおもちゃ、高齢者では大きな食物塊やお餅、薬包装(PTP)、義歯などが異物の原因となることが多いです。異物を確認して除去する処置を行う必要がありますので、早めに耳鼻科を受診しましょう。
咽頭や喉頭の悪性腫瘍
人ののどは「咽頭」と「喉頭」の2つの器官があります。鼻の奥から食道の入り口までを「咽頭」といい3つの部位にわかれ、各々で発症する癌を「上咽頭癌」「中咽頭癌」「下咽頭癌」といいます。また「喉頭」は空気の通り道である気管につながる部位であり、ここに発生する悪性腫瘍を「喉頭癌」といいます。のどは空気や食物が通過する場所なので、飲酒や喫煙が、咽頭や喉頭の癌の原因となることが非常に多いです。いずれも早期発見・早期治療が非常に大切であるため、すぐに耳鼻科を受診しましょう。
以下に各々の癌について記載します。
【上咽頭癌】
上咽頭癌の発生には喫煙・飲酒の他に、EBウイルスが関連しているといわれています。早期には鼻出血・鼻づまり・耳の閉塞感・難聴などの症状や、首のリンパ節への転移による首のしこりも出現します。癌がさらに大きくなると脳神経症状が起こります。手術困難な部位であるため放射線・抗がん剤による治療を行います。
【中咽頭癌】
中咽頭癌の発生には喫煙・飲酒の他に、ヒトパピローマウイルスが関連しているといわれています。早期にはのどの違和感やしみる感じがある場合もありますが、症状が軽いこともあり首のリンパ節への転移による首のしこりで初めて気づかれることもあります。癌がさらに進行すると、のどの痛みや飲み込みにくさ、息苦しさなどの症状が出現します。治療は手術・放射線・抗がん剤を組み合わせて行います。
【下咽頭癌】
下咽頭癌は喫煙・飲酒の他にも、長期間の鉄欠乏性貧血の女性に発生すると言われています。早期にはのどの違和感や痛みがある場合もありますが症状が軽いことが多く、首のリンパ節への転移によって初めて気づかれることもあります。癌がさらに進行すると声がれ、息苦しさ、嚥下困難などの症状が出現します。治療は手術・放射線・抗がん剤を組み合わせて行います。
【喉頭癌】
喉頭癌は、声帯に発生する「声門癌」と、声帯以外に発生する癌(「声門上部癌」「声門下部癌」)に分類されます。声門癌は初めから声がかれるため早期に発見されます。これに対し声門上癌・声門下癌では、声がれの症状が出にくく、癌が進行した状態で発見されることが多く、首のリンパ節の転移で初めて気づかれることがあります。手術・放射線による治療が主に行われますが、癌の進行度によって治療が選択されます。
「唾を飲むと喉が痛い」の正しい対処法は?
まずは、魚の骨などの異物を飲み込んでいないか確認してみましょう。子供や認知症のある高齢者などは知らず知らずのうちに異物を飲み込んでしまっている可能性もあります。周囲を見渡して、おもちゃや義歯、薬包装がなくなっていないか確認しましょう。
異物を飲み込んでいなければ、明らかに風邪のような症状である場合、のどの痛みを和らげるために市販の解熱鎮痛剤を飲んでみてもいいかもしれません。十分に体を休め、水分補給やうがい、マスクや加湿器でのどの加湿をしてみましょう。
早く治したい場合や応急処置をしても症状が収まらない場合、異物を飲み込んでいるかわからない場合は、早めに耳鼻科を受診しましょう。
「唾を飲むと喉が痛い」症状についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「唾を飲むと喉が痛い」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
唾を飲むとのどが痛いときは何科の病院を受診すべきですか?
磯野 志真 医師
まずは耳鼻科を受診しましょう。外来にて、のどの奥を内視鏡のカメラですぐに診ることができますので、診断にいたる場合が多いです。
喉の片側が痛くツバを飲み込むのも辛いです。咽頭炎なのでしょうか?
磯野 志真 医師
もちろん咽頭炎の可能性もありますが、「のどの片側がいたい」や「痛くて唾を飲み込めない」場合は、急性扁桃炎や扁桃周囲膿瘍などを発症している可能性があります。とくに扁桃周囲膿瘍は緊急処置や入院が必要な疾患なので、速やかに耳鼻科を受診しましょう。
唾を飲むと喉が痛くて寝れないときの対処法を教えてください。
磯野 志真 医師
まずは自宅で「カロナール」などの痛み止めを飲んでみてください。ある程度の痛みの改善ができる可能性があります。痛み止めを飲んでも改善しない場合、耳鼻科を受診しましょう。
唾を飲むと喉が痛いときにのど飴を舐めてもいいですか?
磯野 志真 医師
乾燥が原因でのどの痛みを感じる場合もあるので、のど飴をなめてもいいかもしれません。
明らかにのどの痛みが強い場合や、唾が飲み込みにくい場合、苦しさを感じる場合は、のど飴より先に、まずは耳鼻科を受診しましょう。
まとめ 唾を飲むと喉が痛いときはまずはうがいや痛み止めを試しましょう
唾をのむと喉が痛いという症状の原因は、風邪など一般的ものから、扁桃周囲膿瘍などの緊急処置が必要な疾患や、早期発見・早期治療が肝心になる悪性腫瘍など、さまざまな疾患があることが本記事で学べたかと思います。症状が気になる場合や早めに治したい場合は、耳鼻科を受診しましょう。
「唾を飲むと喉が痛い」症状で考えられる病気
「唾を飲むと喉が痛い」から医師が考えられる病気は13個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
耳鼻科の病気
- 咽頭炎(急性/慢性)
- 喉頭炎(急性/慢性)
- 急性扁桃炎
- 扁桃周囲膿瘍
- 急性喉頭蓋炎
- 咽喉頭異物
- 咽喉頭腫瘍(上/中/下咽頭癌、喉頭癌)
消化器科の病気
- 逆流性食道炎
- 食道カンジダ症
- 食道癌
唾を飲むと喉が痛い場合、主に耳鼻科ののどの疾患が原因であることが多いです。至急に処置が必要な疾患や悪性腫瘍なども隠れていることがあるので、まずは早めの耳鼻科の受診をおすすめします。
「唾を飲むと喉が痛い」に似ている症状・関連する症状
「唾を飲むと喉が痛い」と関連している、似ている症状は11個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
唾を飲むと喉が痛い場合、上記のような随伴症状で診断にたどり着くことが少なくないです。特に「唾液や飲食物がうまく呑み込めない」「口が開かない」「苦しい、呼吸がしにくい」場合は緊急性が高い場合があるので、速やかに耳鼻科へ受診しましょう。