「太ももが痛い」原因はご存知ですか?医師が徹底解説!
太ももが痛い時、身体はどんなサインを発しているのでしょうか?Medical DOC監修医が考えられる病気や何科へ受診すべきか・対処法などを解説します。気になる症状は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
柏木 悠吾 医師
「太ももが痛い」症状で考えられる病気と対処法
全身の筋肉の中でも太ももの筋肉が一番大きいと言われています。日常で一番使う筋肉なので発達しているのです。使う機会が多く負担も多いため痛めてしまう頻度も高く、誰しも太ももの痛みを今まで感じたことがあると思います。筋肉のみならず、骨、神経、血管などが原因で疼痛を感じることがあり、病院を受診すべきポイントがあります。どのような時に受診を考えないといけないのか確認していきましょう。
太ももがズキズキ痛む・筋肉痛のような症状で考えられる原因と治し方
太ももの筋肉に力を入れると疼痛が生じる場合を指します。この場合、太ももの筋肉の損傷が考えられますが、疼痛箇所によって傷んでいる筋肉を推測できます。太ももの前側に疼痛があれば大腿四頭筋炎が考えられ、膝を伸ばすときに痛みがでやすいです。その他、太ももの裏側や膝裏であればハムストリング痛、外側であれば大腿筋膜張筋炎、内側であれば内転筋炎が考えられます。
慣れない運動や打撲などの外傷後に起こりやすく、MRIで損傷の程度が分かります。安静、冷却、圧迫固定、下肢挙上などの初期対応を行いましょう。症状の改善が見られない場合には、整形外科を受診して相談しましょう。
太ももがピリピリと痛む症状で考えられる原因と対処法
太ももや、おしりから太ももなどに電気が走るようなピリピリ感を感じる症状を指します。腰部の神経由来の症状である可能性があります。神経症状は、ピリピリ感や灼熱感、鈍痛や冷感など個人によりさまざまな症状を訴えられます。腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症などがあり腰部の神経の通り道が狭く圧迫されると神経痛が生じます。
腰椎レントゲンやMRIで神経の通り道が狭窄しているかを調べられます。ピリピリ感などの異常感覚のみなら良いですが、足の力の入りにくさやおしっこのしにくさを感じるならば早期の受診をお勧めします。神経症状に効く内服薬は市販ではありませんので、症状軽快のためには整形外科を受診し、処方をしてもらいましょう。
太ももの付け根が痛い症状で考えられる原因と対処法
太ももの上半分から付け根までに痛みを感じる場合、個人により考える疾患が変わってきます。高齢者で、太ももの上半分から付け根までに痛みがある場合は、転倒などの外傷後ならば大腿骨頚部骨折の可能性がありますし、外傷がなく動き出しの痛みなどであれば関節の変形である変形性股関節症の可能性があります。また、比較的若年の方(10代以降)ならば股関節の作りが浅いことが原因である臼蓋形成不全、お酒をよく飲まれる方、ステロイド薬使用歴のある方ならば骨の一部が壊死してしまう大腿骨頭壊死という疾患を考慮しなければなりません。
どの疾患も手術加療が適応となり疼痛軽快のために有効ですが、内服やリハビリテーションなど手術以外の選択肢もあります。進行度や症状により対処法が異なりますので、違和感を感じる場合には整形外科を受診して診断を受け治療法を相談しましょう。
太ももが痛み、発熱を伴う症状で考えられる原因と対処法
太ももの痛みと共に発熱がみられる場合を指します。この場合、考えられる原因にはリウマチ性多発筋痛症という疾患があります。
リウマチ性多発筋痛症は、原因は不明ですが、比較的急に、肩や太もも、腰などに強い筋肉痛を自覚し、動かすことさえ困難になる場合があります。その他、発熱や倦怠感など全身症状も認め、朝型に症状が強く出る傾向にあります。50歳以上の女性に多くみられます。
年齢と特徴的な症状と採血検査の結果を照し合わせて診断します。悪性腫瘍などの合併症も報告されているため、自力で治さずにリウマチ・膠原病内科を受診して検査を受けることが肝要です。また、ステロイド薬がよく効く病気ですが、ステロイド薬の自己判断での中止は再発リスクがありおすすめできません。
若年者で太ももが痛い症状で考えられる原因と対処法
10代から20代の比較的若年者で、太ももが痛む際に注意する疾患があります。悪性の骨腫瘍であり、若年者の太ももの骨には骨肉腫やユーイング肉腫などが報告されています。
痛みや腫れを伴いますが、成長痛やスポーツによる損傷と考えられ受診が遅れるケースがあります。治療は、症例により手術、放射線治療、抗がん剤などを組み合わせて行います。成長痛は短時間で治りますが、症状が続く際は腫瘍内科や整形外科を受診の上、画像検査をご検討ください。
すぐに病院へ行くべき「太ももが痛い」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。
応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
胸痛や腹痛を伴う太ももの痛みがある症状の場合は、循環器内科へ
前触れもなく胸痛や腹痛が生じ、太ももの痛みも一緒に起こることがあります。大動脈解離という疾患があります。
大動脈解離は大動脈という血管の内側の膜が裂けてしまう(解離する)病気です。突然に激しい痛みがあり、解離が進むにつれ痛みを感じる部位も広がって移動します。胸痛から腹痛、腰痛などへ移動する痛みが一般的です。血圧も下がり、意識が遠のくような症状も見られます。緊急性が高い病気であるため、疑わしい症状がある場合には、すぐに救急車を要請して循環器内科を受診しましょう。
「太ももが痛い」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「足が痛い」に関する症状が特徴の病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
肉離れ
肉離れとは、太ももの裏側の筋肉であるハムストリング(大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋の総称)が、部分断裂もしくは完全断裂した状態をいいます。主にスポーツやトレーニング中の筋負荷で受傷する場合と、打撲などの外傷により受傷する場合があります。筋肉の柔軟性が乏しい場合や筋量が低下しているときに起こりやすくなります。主な診療科は整形外科です。損傷具合で治療方法が変わってきますが、損傷の程度はMRIにて判断することができます。安静、冷却、圧迫固定、下肢挙上などの初期対応を行いましょう。
腰部脊柱管狭窄症
腰部脊柱管狭窄症は、加齢や重労働などの負担、腰の骨の骨折などが原因で、腰の神経の通り道が狭くなることを言います。主な診療科は整形外科です。長距離歩くと太ももの痛みや重だるさを感じ、休憩をしたり立ち止まったりすると軽快するという、間欠性跛行が特徴的な症状です。症状や狭窄の程度によっては手術加療をお勧めすることもありますが、体幹筋(腹筋、背筋)の低下や、体重増加が増悪の要因となることがあり、日ごろからの適度な運動が推奨されます。
閉塞性動脈硬化症
閉塞性動脈硬化症は、下肢の血管が動脈硬化により細く狭くなってしまい、充分な下肢への血液供給ができなくなる状態を指します。この病気も、長距離歩くと太ももの痛みや重だるさを感じ、休憩をしたり立ち止まったりすると軽快するという、間欠性跛行を認めます。下肢に、鈍痛や冷感を感じる方がいます。通常は片方の膝下に症状を有することが多いですが、太ももから足全体に症状を訴える方もいます。主な診療科は循環器内科です。糖尿病、高脂血症、高血圧などの生活習慣病に加え、喫煙などがリスクの原因となることが多いと言われており、生活習慣の改善で予防できます。
蜂窩織炎
蜂窩織炎とは、皮膚の切れ目や傷などから菌が侵入し、皮膚や皮下の軟部組織に炎症を起こす疾患です。太ももの痛みがあり、同じ場所に赤みを伴う場合は、蜂窩織炎になっている可能性があります。炎症の程度や範囲が広いと発熱をする場合もあります。
皮膚の傷などが原因で太もものどこかに赤みを伴う腫れ(むくみ)と熱感、疼痛などの症状が現れることがあります。また、会陰部などから炎症が太ももまで波及する場合もあります。抗生剤による加療が必要となり早目に皮膚科を受診することをお勧めします。
「太ももが痛い」ときの正しい対処法・市販薬は?
太ももに痛みがあり筋肉が原因であれば、市販の鎮痛剤を使用しても構いません。一般的には筋肉痛の場合は、動かしたときに痛く、安静にしている時には痛みは落ち着いているものです。ですので、安静にしている時も持続する痛みがある場合は市販薬に頼らず病院受診をお勧めします。主な市販薬は、ロキソニンSやラックル、タイレノールAなどの内服薬です。湿布や塗布剤での消炎鎮痛剤でも構いません。日光に当たると湿布かぶれを生じやすいのでお気をつけください。神経痛に関しての市販薬はありませんので、しびれがある場合は受診をご検討ください。
「太ももが痛い」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「太ももが痛い」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
太ももの裏を伸ばすと痛いのは何科の病院に行くべきですか?
柏木 悠吾 医師
太ももの裏側の筋肉であるハムストリング(大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋の総称)が原因かもしれませんので、整形外科受診が適しているでしょう。
太腿に筋肉痛のような痛みがあり原因が不明な場合どうすべきですか?
柏木 悠吾 医師
大腿部痛の痛みで病院を受診しても画像など所見がなく、鎮痛剤では軽快しないケースもよく見ます。原因不明であればリウマチ性多発筋痛症などの可能性もでてきますので、特徴に当てはまればリウマチ膠原病内科受診をご検討下さい。原因が不明の場合、総合診療科で診断をつけ、適した科に割り振りをしてもらうのも良いと思います。。
太ももの外側が片足だけ急に痛むのは打撲によるものでしょうか?
柏木 悠吾 医師
打撲後に同部位が痛い場合には打撲の可能性は高いのですが、そのような受傷起点がなければ、打撲以外のさまざまな疾患が考えられます。
太ももが痛いのは運動不足が原因でしょうか?
柏木 悠吾 医師
運動不足により筋肉痛が起きやすくなりますが、注意しなければいけない疾患が隠れていることがあります。長引く場合は一度受診をご検討ください。
まとめ
太ももが痛い場合、考えられる疾患はさまざまです。筋肉痛と自己判断し経過をみてはいけない病態も隠れています。運動時の痛みではなく安静時の痛みで持続する、発熱を伴う、胸痛・腹痛などを伴う場合は要注意です。受診の上、精密検査を検討しましょう。
「首が痛い」で考えられる病気と特徴
「太ももが痛い」から医師が考えられる病気は17個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
膠原病科の病気
- リウマチ性多発筋痛症
皮膚科の病気
ほとんどは筋肉や骨の病気が原因になりますが、似たような症状でも緊急を要する血管の病気も候補に挙げることがあります。
「首が痛い」と関連のある症状
「太ももが痛い」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
「太ももが痛い」の他に、これらの症状がある際は、「大腿四頭筋炎」「蜂窩織炎」「大腿骨頭壊死」「骨肉腫」「閉塞性動脈硬化症」などの疾患の可能性が考えられます。症状がなかなか治らない場合は早めの医療機関への受診を検討しましょう。