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「ユーイング肉腫」を疑う症状・発症する原因はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2024/01/09
「ユーイング肉腫」を疑う症状・発症する原因はご存知ですか?医師が監修!

ユーイング肉腫についてあまり聞き馴染みがない方も多いのではないでしょうか?
本記事ではユーイング肉腫について以下の点を中心にご紹介します。

・ユーイング肉腫の症状や原因
・ユーイング肉腫の検査方法
・ユーイング肉腫の治療方法

ユーイング肉腫について理解するためにもご参考いただけると幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

武井 智昭

監修医師
武井 智昭(高座渋谷つばさクリニック)

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【経歴】
平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。

日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属

ユーイング肉腫について

ユーイング肉腫について

ユーイング肉腫とは何ですか?

ユーイング肉腫は、小児や若年者の骨や軟部組織に発生する肉腫であり、非上皮組織に発生する悪性腫瘍を指します。
代表的な骨の悪性腫瘍である骨肉腫に次いで、小児に発生する骨腫瘍の中で2番目に多いものです。

発症年齢は10歳から20歳の間に集中しており、全体の70%は20歳までに発症します。
転移は全体の25%に起こり、肺や骨などに多く見られます。
肉腫が発生する場所は限局性である場合、四肢や骨盤、肋骨が多いことがわかっています。

骨肉腫に比べて幹の部分にあたる骨幹部に発生が多く、骨端線ではなく骨幹端部に発生しやすい特徴があります。

ユーイング肉腫の症状

ユーイング肉腫は、骨盤や大腿骨、下腿の骨、胸壁、上肢、脊椎などで発生し、筋肉などの軟部組織にも発症することがあります。
骨肉腫とは異なり、長管骨の幹の部分にあたる骨幹部に発症することが多いです。

症状としては、痛みは四肢の軽度の痛みから発展していき、間欠的な痛み・夜間に強くなる痛みが特徴です。
また、痛みがなく、硬結のみで発見されることもあります。
病状が進行すると発熱や易疲労感などの全身に症状が出る場合もあります。
そして脊椎に発生した場合は歩行障害が伴う場合もあります。

初期症状はどのようなものがありますか?

ユーイング肉腫の典型的な症状には、病変部位で時々発生する痛みや腫れがあります。
さらに、発熱も伴うことがあるため注意が必要です。
痛みが時折しか現れない場合や、骨盤など触診で腫れがわかりにくい部位に発生する場合は、診断が遅れることがあります。

発症する原因について教えてください。

遺伝子の異常がユーイング肉腫の発症と深く関わっていることが示唆されており、EWS遺伝子とFLI1遺伝子の関与が一般的な遺伝子異常として知られています。
人間の細胞は、1番から22番までの常染色体が2組(合計44本)と2本の性染色体を持ち、総数は46本です。
これらの遺伝子は、それぞれ22番目と11番目の常染色体に位置しています。

ユーイング肉腫の細胞において、11番染色体と22番染色体が転座(互いに交換する現象)を起こし、遺伝子の位置が変化します。

これにより、異常な遺伝子であるEWS-FLI1キメラ遺伝子が生成されることがわかっています。
このキメラ遺伝子は、ユーイング肉腫の異常細胞に特有で、正常な細胞では見られません。
キメラ遺伝子(EWS-FLI1など)が存在する場合、正常な細胞の増殖を制御する遺伝子が不適切に調整され、細胞が過剰に増えたり、成熟できなくなることが確認されています。
これにより、大量の異常細胞が生成されます。
EWS遺伝子と融合する遺伝子にはFLI1遺伝子以外のものもあり、それらによって作られるキメラ遺伝子の頻度はEWS-FLI1遺伝子よりも低いですが、異常細胞の増殖につながるという点では同じとされています。

ユーイング肉腫の検査や治療について

ユーイング肉腫の検査や治療について

どのような検査を行いますか?

ユーイング肉腫の疑いがある場合、血液検査と画像診断(X線、CT、MRI)を行って腫瘍の位置と大きさを特定します。
さらに、腫瘍細胞のタイプを調べるために生検が実施されます。
正確な診断が適切な治療の鍵であるため、経験豊富な医療機関を選ぶことが重要です。

画像診断において、X線検査では弓状の反応性骨形成(オニオンピール)という骨の異常が特徴的です。
肉腫の広がりを詳しく調べるために、CTやMRI検査が実施されます。
さらに、骨シンチグラフィ検査を用いて病巣部位を特定し、FDG(放射性ブドウ糖類似物質)を用いたPET検査でがん細胞の機能(活動性)を確認できます。

病理検査では、確定診断のために病巣から組織を部分的に採取し、詳細な検査が行われます。
採取された組織は、形態学的な観察や免疫組織化学的診断によって調べられ、MIC2遺伝子から生成されるCD99や最近の免疫組織マーカーとして有用性が注目されるNKX2.2の確認が行われます。
さらに、分子生物学的手法でEWS-FLI1やEWS-ERGを含むキメラ遺伝子の有無を調べ、診断が確定されます。

治療方法について教えてください。

ユーイング肉腫治療において、主要な3つの柱は薬物療法、外科手術、放射線治療です。

ユーイング肉腫では、限局例であっても、微小転移が存在すると考えられています。
診断時のX線写真に明確な遠隔転移が見られなくても、この点を念頭に置く必要があります。
治療戦略としては、まず化学療法による抗がん剤を用いた微小転移への薬物療法を行い、原発巣の腫瘤を縮小させます。
次に、手術および放射線治療を用いて腫瘍に対処します。

骨や骨髄への転移が確認された場合、大量化学療法を伴う造血幹細胞移植も行われることがありますが、無病生存率を向上させるエビデンスはまだ得られていません。
転移が骨や骨髄に限定されている場合でも、限局例で用いられている薬物療法を標準として行うことが推奨されています。

薬物療法では、利用可能な薬剤の中でユーイング肉腫ファミリー腫瘍(ESFT)に対して効果が高いものとして、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、イホスファミド、エトポシド、アクチノマイシンの6剤があります。
限局例に対しては、これらの薬剤を4~6剤組み合わせた多剤併用化学療法を実施します。

また手術後に長期間の療養を要する場合もあります。

ユーイング肉腫は治りますか?

ユーイング肉腫は、小児から若年成人までの年齢層において、骨や軟部組織に生じる肉腫で、小児の骨腫瘍の中で骨肉腫に次いで2番目に多く発生します(日本国内での年間発症数は類似疾患を含めて100人以下)。
発症の大半は、小児からAYA世代に集中しています。
集学的治療のおかげで、遠隔転移のないユーイング肉腫の治療成績は5年生存率が約70%に向上しましたが、遠隔転移があるユーイング肉腫の生存率は未だ20%以下と低いままです。

分子遺伝学的には、EWS-FLI1やEWS-ERGといった融合遺伝子が高頻度で見つかることから、これらの融合遺伝子が腫瘍の発生の主要原因であるとされていますが、発症メカニズムについてはほとんど明らかになっていません。
さらに、再発のメカニズムや早期診断の可能性に関しても、まだ十分な研究が行われていない状況です。

ユーイング肉腫のその後

ユーイング肉腫のその後

再発や転移の可能性はありますか?

領域リンパ節を越えて広がり、転移が確認される腫瘍、骨盤や肋骨など体幹部に発症する腫瘍、100mL以上の腫瘍容積、15歳以上の患者、診断から2年以内に再発するケースなど、これらは治療が困難な要因とされています。

ユーイング肉腫ファミリー腫瘍(ESFT)の予後は大幅に改善されていますが、再発した場合の予後は依然として悪いと言われています。
現時点では、再発後の治療方法は確立されていません。
そのため、複数の薬剤を併用した化学療法が実施されることがあります。

余命について教えてください。

米国の研究チームは、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチンと、イホスファミド、エトポシドを組み合わせ、3週間おきに交互に治療することで、5年無病生存率(治療開始から5年間再発がなく生き続けている比率)が69%に達したと結果を発表しました。

さらに、日本でもいくつかの小児がん研究グループが報告を行っています。
2004年に設立された日本ユーイング肉腫研究グループ(JESS:Japan Ewing Sarcoma Study Group)では、参加する施設が限定された臨床試験が行われており、これらの試験も米国での研究と同じような成果を示しています。

治療後、どのくらいの期間で仕事や日常生活に復帰できますか?

ユーイング肉腫の治療後、仕事や日常生活に復帰できる期間は、個人差があります。
治療の種類や進行度合いによっても異なります。

手術を受けた場合、通常は手術後1週間程度で病院から退院し、その後は回復に応じて復帰していくことが可能です。
化学療法を受けた場合、治療の回数や投与量によって異なりますが、治療中は体力が低下することが多く、通常は数か月から数週間の間に復帰することができます。
放射線治療を受けた場合も、治療の回数や線量によって異なりますが、通常は治療中に疲労感や身体的な制限が生じることがあります。
そのため、復帰に向けたリハビリテーションや調整が必要な場合があります。
復帰までの期間は、個人差がありますが、疲労感や身体的な制限が残る場合があるため、復帰前には医師の許可を得ることが重要です。
また、復帰後も定期的なフォローアップを受けて、健康管理を継続することが大切です。

治療後、どのようなフォローアップが必要ですか?

治療後は、定期的な医療チェックアップが必要です。
これには、検査や画像検査などが含まれます。
フォローアップの頻度は、治療の種類や進行度合いによって異なりますが、通常は1年に数回から数年に1回の間隔です。
一般的には以下のようなものがあります。

定期的な検査:
治療後、定期的にX線検査、CT検査、MRI検査、PET検査などの画像検査を行い、再発の早期発見や治療効果を評価します。
血液検査:
白血球数、赤血球数、血小板数、腎機能、肝機能などの検査を行い、副作用や治療後の身体的な変化を評価します。
身体検査:
患部の状態や身体的な変化を評価します。
心理的な支援:
患者や家族の心理的な問題に対しても、適切な支援を行います。

また、フォローアップ期間中には、定期的に医師や看護師と面談し、治療効果や身体的・心理的な問題などを共有することも重要です。
フォローアップ期間中に再発が見つかった場合は、迅速かつ適切な治療をすることが必要です。

編集部まとめ

ユーイング肉腫
ここまでユーイング肉腫についてお伝えしてきました。
ユーイング肉腫の要点をまとめると以下の通りです。

・小児や若年者の骨や軟部組織に発生する肉腫である
・ユーイング肉腫には発熱や痛み、腫脹、麻痺、骨折、歩行障害、排尿障害などの症状がある
・ユーイング肉腫の原因に遺伝子の異常が深く関わっている

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修医師

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