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ADL(日常生活動作)低下を防ぐ2つのポイントとは 原因や対策を介護福祉士に聞く

 更新日:2023/04/28
ADL(日常生活動作)低下を防ぐ2つのポイントとは 原因や対策を介護福祉士に聞く

ADLとは、日常生活を送るために必要な生活動作を意味します。加齢や疾病により、高齢者の方はどうしてもADLが低下しがちですが、いくつかのポイントに気をつければ、現在のADLを維持・向上させることができるとのことです。今回は、ADLの概要やADL低下を予防する方法について、介護福祉士の千葉さんに聞いてみました。

千葉 拓未

監修介護福祉士
千葉 拓未(介護福祉士)

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1983年生まれ。札幌市在住。専門学校卒業後、社会福祉士資格を取得し高齢者介護の道へ。通所介護、特別養護老人ホーム、認知症対応型通所介護にて介護士として従事する。現在は、Webライターとして、介護問題を中心に執筆している。

ADL低下とは「日常生活に必要な動作がスムーズにできなくなること」

ADL低下とは「日常生活に必要な動作がスムーズにできなくなること」

編集部編集部

「ADLが低下する」とはどのような意味ですか?

千葉 拓未さん千葉さん

ADLとは、(Activities of Daily Living)の頭文字を取った略称で、移動や排泄といった日常生活に必要な動作を指します。このADLが何らかの理由でスムーズにできなくなることを「ADLが低下した状態」と呼びます。ADLには食事や更衣、洗面といった動作が含まれ、これらはBADL(基本的日常生活動作)です。一方、買い物、掃除、洗濯といったより高レベルな動作は、IADL(手段的日常生活動作)と呼ばれています。

編集部編集部

ADLが低下した場合の問題点を教えてください。

千葉 拓未さん千葉さん

体力や筋力といった身体機能が衰えることで、転倒やふらつきのリスクが高くなり、社会参加の機会も少なくなります。その結果、体や脳の働きが衰え、寝たきりへのリスクが高まるとされています。

編集部編集部

ほかにはどのような問題が起こりますか?

千葉 拓未さん千葉さん

本人と介護者の双方に、一定の負担がかかることが挙げられます。例えば、関節の痛みで入浴がスムーズにできない方の場合、洗身や洗髪に介護者の手が必要になるでしょう。心臓に疾患のある方が、見守りを頼むケースも考えられます。

編集部編集部

これまで1人でおこなっていたことでも、誰かの助けが必要になるかもしれないのですね。

千葉 拓未さん千葉さん

その通りです。しかし、人の助けを借りることに問題はありません。本人のADLが低下すると、本人や家族の日々の暮らしにも変化が生じます。その変化にどう対応するのかが問題です。

編集部編集部

そのままADLが低下するとどうなるのでしょうか?

千葉 拓未さん千葉さん

ADLが大きく低下すると、身の回り全般に介助が必要になる可能性があります。あくまで目安ですが、介護保険制度の要介護4、または要介護5の方があてはまるでしょう。しかし、毎日の生活スタイルや取り組みによって、ADLは維持・向上が可能です。

なぜADLが低下してしまうのか 原因と対策を介護福祉士が解説

なぜADLが低下してしまうのか 原因と対策を介護福祉士が解説

編集部編集部

なぜADLが低下してしまうのでしょうか?

千葉 拓未さん千葉さん

ADLの低下の背景には、身体機能や認知機能の低下があります。身体機能とは、筋力、体力、関節の可動域などです。認知機能は、物ごとを理解して判断する能力だと捉えてください。例えば、以前より歩くのが遅くなったり外出を嫌がったりする背景には、体力や筋力の低下があるのかもしれません。体は元気でも認知機能に低下があれば、ADLは低下する可能性があります。

編集部編集部

身体機能や認知機能が低下した結果、ADLが低下するのですね。では具体的な原因を教えてください。

千葉 拓未さん千葉さん

代表的な原因は5つあります。

脳血管障害
心臓・血管の疾患
神経変性疾患
精神疾患
関節疾患

上記の疾患は、身体機能や認知機能に影響を及ぼすため、症状が進行するにつれて、身体機能や認知機能が低下してしまうのです。

編集部編集部

原因が多いと見極めるのが大変そうです。ADLの低下は初期症状で気づけますか?

千葉 拓未さん千葉さん

普段から本人の様子をみている方なら、ADLの低下にも気づけるでしょう。例えば、掃除や洗濯といった毎日の動作について、いつもより時間がかかったり、不十分なことが増えたりすれば、ADL低下の兆しかもしれません。本人の様子が気になったら、さりげなく「最近洗濯に時間がかかっているみたいだけど、何か困っていることはない?」と質問してもよいでしょう。ADLの低下がきっかけで、隠れていた病気が見つかるケースもあります。

ADL低下を予防する2つのポイント「本人のできる機会を奪わないこと」「福祉用具や自助具を活用して本人のやる気を育てる」

ADL低下を予防する2つのポイント「本人のできる機会を奪わないこと」「福祉用具や自助具を活用して本人のやる気を育てる」

編集部編集部

ADL低下の予防は可能でしょうか?

千葉 拓未さん千葉さん

十分に可能です。ADLは日常生活動作と呼ばれるように、日常的な動作がそのままリハビリにつながります。例えば、洗濯機の複雑な操作ができなくても、洗濯物を干したり洗濯物を畳んだりできるなら、それがリハビリになるのです。ポイントは、「本人のできる機会を奪わないこと」です。

編集部編集部

しかし、病気や疾病によって痛みがある方にとっては大変な作業ではありませんか?

千葉 拓未さん千葉さん

おっしゃる通り、痛みや不快感があれば、どうしても積極的にはなれませんよね。おすすめの方法は、「福祉用具や自助具の活用」です。歩行補助具や掴みやすい箸など、本人の持っている力をうまく引き出してくれるアイテムが存在します。

編集部編集部

福祉用具や自助具はどこで入手できるのですか?

千葉 拓未さん千葉さん

福祉用具は、ホームセンターやドラッグストアなどで入手できますが、要介護認定を受けている方は、介護保険制度の利用を検討しましょう。介護保険制度では、本人の負担割合に応じた金額でレンタルや購入が可能なため、費用を抑えることができます。ぜひケアマネジャーさんや利用している介護サービスの担当者の方に尋ねてみてください。自助具も、ホームセンターなどの介護用品や医療用品を扱っている店舗で販売されています。最近は、インターネットでも簡単に入手できますよ。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

千葉 拓未さん千葉さん

まずは、本人の普段の様子を観察して、気になる点がないか確認してみましょう。そして、ADL低下を防止する際は、本人のやる気をうまく引き出して、運動やリハビリの効果をアップさせてください。

編集部まとめ

ADL低下を防ぐには「本人のできる機会を奪わないこと」「福祉用具や自助具を活用して本人のやる気を育てる」の2つが大切ということがわかりました。ADL低下の防止は、本人と家族のQOL(生活の質)の向上にもつながります。住み慣れた自宅や地域で生活していくためにも、できることから少しずつはじめていきましょう。

この記事の監修介護福祉士