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移乗介助の正しい手順と注意点とは 介助者に負担の少ない方法を介護福祉士が解説

 更新日:2023/03/08
移乗介助のポイントは? 介助者に負担の少ない方法を介護福祉士が解説

介護の現場では、要介助者をベッドから車椅子へ移乗することはよくあります。要介助者の身体的状況に合わせて、安全に移乗するにはどのようにしたらいいのでしょうか。今回は、要介助者・介助者ともに負担の少ない移乗介助の方法について、現役の大学教員であり、介護福祉士の資格を有する林さんに解説していただきました。

林 修造

監修介護福祉士
林 修造(介護福祉士)

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現役の大学教員として社会福祉士・介護福祉士の養成教育に携わる。福祉人材の教育は約20年のキャリアがあり、医療・介護・福祉だけでなく、年金や健康保険などの社会保障にも精通している。大学で教鞭を取る傍ら、福祉系専門学校の非常勤講師を務め、福祉系の国家試験応援ブログで情報を発信するなど、多方面で活躍中。

“移乗介助”とは何をすることなのか “移動介助”とどう違うの?

“移乗介助”とは何をすることなのか “移動介助”とどう違うの?

編集部編集部

はじめに、移乗介助とは何をすることを指しているのか教えてください。

林 修造さん林さん

要介助者がベッドから車椅子へ安全に乗り移ることができるようにサポートすることです。介護の現場では、要介助者を移乗させることが頻繁にあるため、介助者は要介助者の安全・体調に配慮しながら、彼らの状態に合わせた移乗介助をすることが大切です。

編集部編集部

移乗介助と移動介助はどう違うのですか?

林 修造さん林さん

移乗介助とは要介助者がベッドから車椅子へ、または車椅子から便座などへ乗り移る際に、介助者が介助することを指します。一方の移動介助は、要介助者が居室から共用スペースへ移動したり、浴室からリビングへ移動したりする際に、介助者が必要な介助をおこなうことを指します。

編集部編集部

移乗介助に伴う危険・注意点はどのようなものがありますか?

林 修造さん林さん

前述のとおり、移乗介助は介護現場でよくおこなわれる介助の一つです。乗り移る時に、要介助者が転倒してしまったり、うまく乗り移ることができずに手足を負傷したりするリスクがあります。また、移乗介助をおこなう介助者には身体的負担があります。介助の際には、どうしても前に屈んで介助する必要があるため、腰痛の原因となる恐れがあるので注意が必要です。

移乗介助の手順を解説 シチュエーション毎に気をつけることは?

移乗介助の手順を解説 シチュエーション毎に気をつけることは?

編集部編集部

ベッドから車椅子へ移乗介助をする前に、どのような点をチェックすべきですか?

林 修造さん林さん

最初に、要介助者の健康状態・体調を確認しましょう。その後、移乗に際してベッドが適切な高さになっているかチェックするようにしてください。疎かになりがちなのが、「車椅子の点検」です。座面が広がっているか、ブレーキの効きはどうか、フットレストが上がった状態になっているかチェックしたうえで、適切な角度(約30℃)でベッドに沿うように置きましょう。

編集部編集部

ベッドから車椅子へ移乗する場合、どのような手順を踏みますか?

林 修造さん林さん

要介助者の状態によって手順は若干異なりますが、基本的には次の手順を踏みます。
1. 要介助者をベッドサイドに浅く座らせる
2. 要介助者の両腕を介助者の肩に回す
3. 介助者は足を広げて重心を低くする
4. 介助者の両腕を要介助者の背中・腰あたりに回す
5. 両者の息を合わせて移乗する

編集部編集部

移乗介助が終わったあと、どのような点をチェックすべきですか?

林 修造さん林さん

まず、要介助者の健康状態や体調を確認しましょう。本人の意思能力が明確な場合は、口頭で「ケガはないですか」「痛いところはありませんか」と聞いて、ケガや負傷が無いか確認します。そして、車椅子の機能に不具合はないか確認します。移乗後に車椅子で移動する前にベッド上を確認し、忘れ物がないか確認すると良いでしょう。

介助者の負担を少なくするポイントは? 介護福祉士が解説

介助者の負担を少なくするポイントは? 介護福祉士が解説

編集部編集部

移乗介助をおこなうと、腰が痛くなる人が多いと聞きます。介助者の腰の負担を軽減するには、どうしたらいいですか?

林 修造さん林さん

移乗は腰の負担が大きい介助の一つです。腰痛は、自分の腰よりも低い位置で作業を続けることが原因で生じます。よって、移乗介助の時間をできるだけ短くするための工夫が必要です。ベッドの高さを適正にするとともに、車椅子を適切な角度に置くなどの事前チェックを忘れないようにしましょう。長時間、前かがみの姿勢を続けないことが重要です。

編集部編集部

介助者の負担を軽減するためには、どのような介助が必要でしょうか?

林 修造さん林さん

要介助者のできる部分は、自身でやってもらう「自立支援」の介助が重要です。そのためにはコミュニケーションを取って、今からおこなう介助の目的と方法、「この部分はやって下さい」ということを伝え、了解を得るようにしましょう。互いに共通のイメージを持ったうえで移乗すると、負担は少なく済みます。また、要介助者が自ら行動したくなるようなコミュニケーションの工夫や、環境整備が重要です。

編集部編集部

その他、移乗介助の負担を軽減する方法はありますか?

林 修造さん林さん

福祉用具の活用が効果的です。移乗介助の際に利用したい福祉用具には、移動用リフトスライディングボードがあります。移動用リフトは少し時間や手間はかかるものの、機械の力を利用して、要介助者を安全に移乗させることができます。要介助者によっては、リフトの利用を怖がる方がおられるので、介助者は適宜声かけをしながら進めましょう。要介助者・介助者いずれも負担が少なく済み、安全に移乗することが可能です。

編集部編集部

続いて、スライディングボードの使い方について教えてください。

林 修造さん林さん

スライディングボードは移乗の際に、要介助者の臀部(お尻)の下に敷き、要介助者の身体をスライドさせるようにして使います。こちらの福祉用具も、要介助者・介助者ともに負担が少なくて済みます。最近では福祉用具の研究・開発が進んでおり、移乗を安全に負担なくできるようなアイテムがいくつかあります。興味がある人は、福祉用具を開発する会社のホームページを確認して下さい。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

林 修造さん林さん

移乗介助には様々な危険が伴ううえ、介助者の身体的負担も大きい作業です。この記事で紹介した福祉用具を便利に使うことで、安全に配慮したうえでの移乗をおこなうとともに、要介助者・介助者ともに負担の少ない介助を心がけてください。

編集部まとめ

要介助者の身体状況に合わせて安全に移乗介助をする方法が分かりました。林さんが説明してくれた手順や注意点を踏まえずに介助すると、要介助者が転倒してしまったり、手足を負傷させたりする危険性があると知ることができました。また、介助者の腰の負担を軽減するため、ベッドの高さや車椅子の角度に工夫を加えることが大切だと、改めて分かりました。移動用リフトやスライディングボードなどの福祉用具を活用することで、要介助者・介助者ともに負担の少ない移乗介助ができたらいいですね。

この記事の監修介護福祉士