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「うつ病」が及ぼす心臓への悪影響… 診断されると「心不全」リスク上昇 最新研究で判明

 公開日:2025/06/11

アメリカ・ヴァンダービルト大学医療センターの研究員らは、うつ病とうつ病の診断後における心不全リスクの関連性についての研究結果を発表しました。研究の結果、うつ病の診断を受けた退役軍人は、そうでない人と比べて心不全を発症するリスクが14%高いと示されました。この内容について中路医師に伺いました。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

研究グループが発表した内容とは?

ヴァンダービルト大学医療センターの研究員らが発表した内容を教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

2025年5月8日、ヴァンダービルト大学医療センターの研究員らが医療専門誌「JAMA Network Open」にて、うつ病とうつ病診断後の心不全リスクに関する研究結果を発表しました。この研究は、アメリカ合衆国退役軍人省(VA)のコホートデータを用いておこなわれ、対象となったのは1945~1965年に生まれ、2000~2015年の間にVA医療システムを利用した退役軍人284万人以上です。研究の目的は、退役軍人におけるうつ病の有無が、将来的な心不全の発症にどう影響するかを明らかにすることでした。

解析の結果、うつ病を抱える退役軍人は、そうでない人と比べて心不全を発症するリスクが14%高いことが判明しました。このリスク上昇は、年齢や性別、既存の心血管リスクなどの要因を調整した後でも認められています。さらに、ほかに併存疾患がない比較的健康な退役軍人においては、うつ病による心不全リスクの増加率がさらに高くなる傾向がみられました。

研究テーマになった心不全とは?

今回の研究テーマに関連する心不全について教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

心不全とは、心臓の働きが低下し、全身に十分な血液を送り出せなくなることで、息切れやむくみなどの症状が現れる病気です。原因としては、心筋梗塞や狭心症といった冠動脈の病気、高血圧、弁膜症、心筋症、不整脈、先天性の心疾患などが挙げられます。心不全になると、坂道や階段で息切れしやすくなったり、疲れやすくなったりします。また、尿の量が減り、足のむくみや体重増加が見られることもあります。さらに進行すると、呼吸が苦しくなって横になれないといった症状が出ることもあります。

息切れやむくみは心不全の初期症状として多くみられるため、これらの症状が出たら早めに専門の医療機関を受診しましょう。

研究内容への受け止めは?

ヴァンダービルト大学医療センターの研究員らが発表した内容への受け止めを教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

この研究は、うつ病が心不全の独立したリスク因子であることを示しており、従来の血圧などの管理に加え、うつ病の早期発見と治療の重要性を示唆しています。

うつ病は生活習慣、自律神経、ホルモンバランス、血管機能、炎症など、多方面から心臓に悪影響を及ぼします。現在、米国心臓病学会のガイドラインでも、心不全患者に対するうつ病評価の推奨がなされています。今後、うつ病の治療が心不全の発症リスクにどのような影響を与えるかについての研究も必要であると考えます。

編集部まとめ

うつ病を抱える退役軍人は、そうでない人と比べて心不全のリスクが約14%高いことが明らかになりました。ストレスや気分の落ち込みを軽く考えず、早めに専門家に相談することが、将来の身体の病気を防ぐことにもつながります。心のケアを日々の生活に取り入れていきましょう。

この記事の監修医師