超加工食品は「うつ病」リスクを高める “身近な食べ物”が及ぼすメンタルへの悪影響とは

オーストラリアのディーキン大学の研究者らは、栄養学の観点から超加工食品の摂取とメンタルヘルスとの関連を分析しました。その結果、超加工食品の摂取がうつ病や不安症状のリスクが高まることを示しました。この内容について吉川医師に伺いました。

監修医師:
吉川 博昭(医師)
研究グループが発表した内容とは?
オーストラリアのディーキン大学の研究者らが発表した内容を教えてください。

今回紹介する研究報告は、オーストラリアのディーキン大学の研究員らによるもので、その研究報告は医学雑誌「Nutrients」に掲載されています。
この研究は、超加工食品の摂取とメンタルヘルスの関係について調査した系統的レビューとメタ分析です。38万5541人を対象とした17件の観察研究を統合し、超加工食品の摂取がうつ病や不安症状のリスク増加につながることを明らかにしました。観察研究が実施された国は、ブラジル、アメリカ、イタリア、イギリス、スペイン、フランス、ベルギーの7カ国です。特に、超加工食品を多く摂取する人は、うつ病のオッズ比が1.44、不安症状のオッズ比が1.4と有意に高いことが示されました。さらに、前向き研究のメタ分析では、超加工食品の摂取量が多いと、その後のうつ病リスクの上昇が確認され、ハザード比は1.22となりました。
本研究では、超加工食品の成分がメンタルヘルスに及ぼす影響についても言及されています。超加工食品には、砂糖や飽和脂肪酸、人工甘味料、食品添加物などが多く含まれており、これらが炎症や腸内細菌叢の変化を引き起こし、精神疾患の発症リスクを高める可能性があると考えられています。
その一方で、本研究の懸念事項は、対象となった研究の大部分が横断研究であるため、因果関係を直接証明することができない点です。また、食事摂取の評価方法が統一されておらず、国や地域による違いも考慮する必要があります。今後は、より厳密な研究を通じて、超加工食品の摂取が精神健康に及ぼす影響をより詳細に解明することが求められるでしょう。
超加工食品とは?
今回の研究テーマに関連する超加工食品について教えてください。超加工食品には、どのような食材が含まれるのでしょうか?

オーストラリアのディーキン大学の研究者らの論文によると、超加工食品はNOVA分類で定義される高度に加工された食品のことを指しています。食品や食品基質から抽出、誘導、または合成された化合物で構成され、保存料や着色料、味覚増強剤などの人工食品添加物を含むとされています。また、低価格で便利、常温保存が可能で、美味しさが強調される点が超加工食品の特徴です。
具体的には、カップ麺や菓子パン、サラミ、ソーセージ、ポテトチップス、ビスケット、マーガリン、ショートニングなどが超加工食品に含まれます。近年、超加工食品の消費量が世界的に増加しており、2021年の研究では「28カ国において1日の総エネルギー摂取量の17〜56%を超加工食品が占める」と報告されています。こうした食品の過剰摂取は、肥満や糖尿病、心血管疾患、さらには精神的な健康にも影響を及ぼす可能性が示唆されているため、注意が必要です。日々の食事に気を配り、できる限り未加工または最小限の加工食品を選ぶことで、健康を維持していきましょう。
超加工食品に関する研究内容への受け止めは?
オーストラリアのディーキン大学の研究者らが発表した内容への受け止めを教えてください。

「超加工食品の摂取がうつ病や不安症状と関連する」という本研究の結果は、近年の栄養精神医学の流れとも一致します。加工食品に多く含まれる糖質や添加物、飽和脂肪酸などが炎症や腸内細菌に影響を及ぼし、メンタル面に悪影響を与える可能性は十分に考えられます。日常的な食生活を見直し、できるだけ自然に近い食品を選ぶことが心身の健康につながるでしょう。
編集部まとめ
今回紹介した論文では、超加工食品がメンタルヘルスに悪影響を及ぼす可能性が指摘されていました。健康を守るためには、バランスのとれた食事を心がけることが大切です。食生活の改善は、身体だけでなく心の健康にも良い影響をもたらします。日々の食事を見直し、健康的な選択を積み重ねていきましょう。