超加工食品の摂り過ぎで「乾癬」が悪化 研究で示唆 超加工食品が体内の炎症を引き起こす
フランスのパリ・エスト・クレテイユ大学のLaetitia Pensoらの研究グループは、「超加工食品(※)の摂取は、体内の炎症を引き起こしやすくし、乾癬(かんせん)症状の悪化につながる可能性がある」との結果を発表しました。この内容について高藤医師に伺いました。
※複数の食材を工業的に配合して製造された、加工の程度が非常に高い食品(ゼリー、マーガリン、ポテトチップス、ソーセージ、ハム、菓子パン、アルコール飲料、清涼飲料など)
監修医師:
高藤 円香(医師)
研究グループが発表した内容とは?
フランスのパリ・エスト・クレテイユ大学のLaetitia Pensoらの研究グループが発表した研究内容について教えてください。
高藤先生
今回紹介する研究報告は、フランスのパリ・エスト・クレテイユ大学のLaetitia Pensoらの研究グループによるもので、その成果は医学雑誌「JAMA Dermatology」に掲載されています。
普段、みなさんが口にする食べ物には、体の中で炎症を引き起こしたり、逆に炎症を抑えたりする作用があります。今回の研究では「食べ物の中でも超加工食品を多く摂取すると体内で炎症を引き起こしやすくなり、乾癬の悪化につながる可能性がある」としています。
2021年11月29日~2022年6月6日の間に収集されたNutriNet-Santeコホートデータを用いて15歳以上の参加者を対象とし、自己申告による「乾癬を発症したことがない」「非活動性」「活動性」の3つのグループに分類して検証が実施されました。参加者1万8528人の年齢中央値は62歳で、74%が女性です。
研究の結果、超加工食品の摂取量は活動性乾癬と関連があり、摂取量が多い人は少ない人と比べて活動性乾癬のリスクが36%高く、超加工食品の摂取が乾癬活動に影響を与える可能性が示唆されました。ただし、この結果を皮膚科医が診断した乾癬の症例をもとに分析すると、統計的に有意な関連性が確認できなくなったとのことです。要するに、現時点では超加工食品の摂取が活動性乾癬に影響を与える可能性は示唆されているものの、確定的な結論を出すにはさらなる研究が必要という状況です。
研究テーマになった疾患とは?
今回の研究テーマになった乾癬について教えてください。
高藤先生
乾癬は、銀白色の粉状の鱗屑を伴って赤い発疹(紅斑)が全身に表れる病気です。患者の約90%が「尋常性乾癬」と呼ばれるタイプで、発疹は頭部、肘、膝、臀部など刺激を受けやすい部分にできやすく、形や大きさは様々です。
約半数の患者にかゆみがみられ、爪の変形や関節炎などの症状を伴うこともあります。発疹が全身に広がる重症例もありますが、通常は内臓への影響はありません。炎症は乾癬を悪化させる原因の1つになっています。
今回の研究内容への受け止めは?
フランスのパリ・エスト・クレテイユ大学のLaetitia Pensoらの研究グループが発表した内容への受け止めを教えてください。
高藤先生
超加工食品の摂取については、乾癬以外にも身体に悪影響を与えると考えます。今回の発表は、はっきりと数値で示すことができた点が素晴らしいと言えるでしょう。
まとめ
フランスのパリ・エスト・クレテイユ大学のLaetitia Pensoらの研究グループは、「超加工食品の摂取は、体内の炎症を引き起こしやすくし、乾癬(かんせん)症状の悪化につながる可能性がある」という研究結果を発表しました。しかし、皮膚科医による診断では統計的な有意性が確認されず、さらなる研究が必要とされています。また、超加工食品の大量摂取は生活習慣病をはじめとする健康リスクとも関連があるため、日頃から栄養バランスの取れた食生活を心がけることが大切です。