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「寝だめは悪」は時代遅れ!? “週末の寝だめ”で「心血管疾患」リスク低下 最新研究で判明

 公開日:2024/10/17

2024年8月30日~9月2日におこなわれた欧州心臓病学会議2024で「週末に最も多く睡眠時間を確保したグループは、最も睡眠時間が短かったグループと比べて、心血管疾患を発症するリスクが19%低くなった」という研究が報告されました。この内容について中路医師に伺いました。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

欧州心臓病学会議2024で発表された内容とは?

欧州心臓病学会議2024で発表された内容を教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

今回紹介する研究報告は、欧州心臓病学会議2024で発表されたものです。ただし、査読を受けて学術誌に掲載される前の情報になります。

研究グループは、UKバイオバンクに登録されている約9万1000人のデータを用いて、週末の睡眠と心疾患の関係を調べました。週末にどれだけ余分な睡眠時間を取っているかで対象者をグループ分けしました。さらに、定期的な睡眠時間の調査を自己申告形式で調べると、約22%が一晩の睡眠時間が7時間未満という睡眠不足状態であることがわかりました。

研究グループが平均約14年間にわたって追跡調査した結果、週末に最も多く睡眠時間を確保したグループは、週末に最も睡眠時間が短かったグループと比べて、心疾患や脳卒中、心不全、心房細動などの心血管疾患を発症するリスクが19%低くなりました。さらに、「日常的に睡眠不足であるものの、週末に寝だめをしている」と答えた人は、睡眠不足をほとんど補わなかった人と比べて、心疾患のリスクが20%低いという結果が出たとのことです。

今回の結果について、研究グループは「十分な寝だめは、心疾患リスクの低下と関連している。平日、定期的な睡眠不足になっている人ほど顕著に関連性がみられた」と述べています。

日本人の睡眠時間の実情は?

今回の研究では睡眠時間が取り上げられていますが、日本人の睡眠時間の実情を教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

睡眠時間については、推奨する睡眠時間や生活習慣を世代ごとに示した「健康づくりのための睡眠ガイド2023」を厚生労働省が出しています。このガイドによると、成人に推奨する睡眠時間は6時間以上が目安、子どもについては小学生が9~12時間、中学生・高校生が8~10時間を目安にすることが推奨されています。一方、高齢者については、寝床にいる時間が8時間以上にならないことを目安に、必要な睡眠時間を確保すべきことが示されています。

日本人の睡眠時間を諸外国と比べてみると、各国の平均睡眠時間は8時間28分である一方、日本人の平均睡眠時間は7時間22分と、各国平均よりも1時間以上短かったことが経済協力開発機構(OECD)による調査で判明しています。また、調査対象33カ国の中で最も短いという結果も示されました。

研究グループが発表した内容への受け止めは?

欧州心臓病学会議2024で発表された内容への受け止めを教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

本研究発表は「寝だめ」と「心疾患リスク」との関連を調べた大変興味深い研究であると考えます。十分な睡眠時間を取るのが難しい人は、心疾患予防ために週末の寝だめが有効と考えられますが、「寝だめが直接どれほど心臓の健康に有益か」については不明です。いずれにしても、心疾患の予防のためには普段から十分な睡眠を取ることが重要です。また、適切な体重を維持し、タバコやアルコールを避けるなど、健康的な生活を心がけましょう。

まとめ

欧州心臓病学会議2024で、「週末に最も多く睡眠時間を確保したグループは、最も睡眠時間が短かったグループと比べて、心血管疾患を発症するリスクが19%低くなった」という研究が報告されました。良質な睡眠は健康にとって大きな意味を持つので、今回のような研究結果を知り、睡眠について改めて考えてみるのもいいかもしれませんね。なお、この情報は査読を経て学術誌に掲載される前の情報である点については留意が必要です。

この記事の監修医師