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睡眠不足で「高血圧」リスク上昇! ○時間未満の睡眠が健康に与える影響とは?

 公開日:2024/05/03

イランの研究グループは、「一晩の睡眠時間が7時間未満の人は、そうでない人と比べて高血圧になる可能性が7%高くなる」と明らかにしました。この内容について郷医師に伺いました。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

研究グループが発表した内容とは?

今回、イランの研究グループが発表した内容について教えてください。

郷 正憲医師郷先生

今回紹介する研究報告はイランの研究グループによるもので、ACC(米国心臓病学会)の年次総会で発表されました。

研究グループは、2000年1月~2023年5月までに実施された16の研究データをもとに解析をおこないました。対象となったのは高血圧の既往歴のない6カ国104万4035人で、追跡期間の中央値5年で高血圧発症率を評価し、睡眠時間との関連を調べました。その結果、睡眠時間が7時間未満だと高血圧の発症リスクが7%上昇し、報告された睡眠時間が5時間未満だと高血圧発症リスクが11%上昇することが明らかになりました。

今回の研究で原因についての調査はおこなわれていませんが、研究グループは「睡眠の乱れが原因の可能性がある」と述べています。例えば、過食飲酒夜勤特定の薬の使用不安うつ病睡眠時無呼吸症候群睡眠障害などの生活習慣や併存疾患が要因の可能性があるとのことです。

なお、今回の研究は睡眠時間は自己申告によるアンケートに基づいているため、追跡期間中の睡眠時間の変化は評価されておらず、短い睡眠時間の定義については研究間でばらつきがありました。そのため、研究グループは「睡眠時間と高血圧の関連を評価するためには、睡眠の質をより正確に評価する睡眠ポリグラフ検査などの方法を用いた研究をする必要がある」と述べています。

高血圧とは?

研究テーマとなっている高血圧について教えてください。

郷 正憲医師郷先生

血液が血管を通る際に、血管壁に与える圧力が正常より高い状態が慢性的に続くことを高血圧と言います。血管に対して常に負担がかかっている状態なので、血管壁が傷ついたり、血管の柔軟性がなくなり固くなったりして、「動脈硬化」を起こしやすくなってしまいます。

高血圧治療ガイドライン2019によると、日本人の4300万人が高血圧であり、その約4分の3の3100万人は診察室血圧で140/90mmHg未満という適正な血圧レベルにコントロールできていないとされています。高血圧の人のうち「高血圧と知っているが治療を受けていない人」が450万人、「高血圧に気付いていない人」が1400万人いるとのことです。高血圧を放置すると、脳卒中や心疾患、腎臓病の発症リスクが上がるという研究報告も出ているので要注意です。

研究グループが発表した内容への受け止めは?

今回、イランの研究グループが発表した内容についての受け止めを教えてください。

郷 正憲医師郷先生

睡眠不足が体調不良につながるということは、古来から研究が進められていましたが、健康被害につながるということはあまり明らかになっていませんでした。高血圧は様々な疾患の原因になることから、それらの疾患の発症率も睡眠不足によって上昇し得ることが今回の研究で示唆されます。また、ほかの健康被害についてもつながるのではないかという仮設の元、様々な検討がされている最中でもあります。睡眠不足は万病の元となる可能性が高いので、しっかりと睡眠を取ることが大事です。

まとめ

イランの研究グループは、一晩の睡眠時間が7時間未満の人は、そうでない人と比べて高血圧になる可能性が7%高くなることを明らかにしました。学会で発表された研究結果は「査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なもの」とみなされますが、睡眠不足による健康への影響は注目を集めそうです。

この記事の監修医師