“職場ストレス”で心疾患リスク2倍に 中高年男性に忍び寄る「健康の落とし穴」とは

カナダにあるケベック大学の研究員らは、職場における心理社会的ストレス要因が、冠動脈疾患の発症リスクに与える影響を調査しました。仕事に伴う強いプレッシャーや報酬の不均衡などは、心臓への負担につながる恐れがあるとのことです。この内容について本多医師に伺いました。

監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)
研究グループが発表した内容とは?
ケベック大学の研究員らが発表した内容を教えてください。
カナダのケベック大学の研究員らによる研究では、カナダ・ケベック州のホワイトカラー労働者を対象とした前向きコホート研究において、職場における心理社会的ストレス要因が冠動脈性心疾患(CHD)の発症リスクに及ぼす影響が検討されました。心血管疾患の既往がない労働者6465名(平均年齢45.3歳)を対象に、18年間にわたり追跡調査をおこなっています。職業性ストレスおよび努力と報酬の不均衡(ERI)は、いずれも検証済みの質問票で測定され、冠動脈性心疾患の発症は行政データベースを用いたアルゴリズムによって確認されました。 研究の結果、男性3118名のうち571名が冠動脈性心疾患を発症し、職業性ストレスまたはERIへの曝露は、冠動脈性心疾患リスクの約49%増加と関連していました。さらに、これら2つの要因への複合的な曝露は、冠動脈性心疾患リスクを103%も上昇させる結果となりました。この関連は、早期発症例の除外や退職による打ち切りを考慮しても変わらなかったことから、安定した傾向が示されています。一方、女性3347名では265名が冠動脈性心疾患を発症しましたが、職業性ストレスやERIとの明確な関連は認められませんでした。 本研究は、職場における心理社会的ストレス要因が男性の冠動脈性心疾患リスク上昇と関連することを示しており、男性労働者に対する早期のストレス介入が冠動脈性心疾患予防に効果的である可能性が示唆されます。ただし、女性においては明確な関連がみられなかったため、性差を踏まえた追加研究の必要性が残されている点には留意が必要です。
心疾患リスクを予防する生活習慣とは?
心疾患リスクを予防する生活習慣や食品を教えてください。
心疾患のリスクを下げるためには、生活習慣の見直しが重要です。まず、塩分・糖質・脂肪の摂り過ぎを避け、魚や野菜を積極的に食べてバランスの取れた食事を心がけましょう。夜遅くに食事を摂らないことも重要です。また、禁煙も非常に重要で、動脈硬化の進行を抑え、血管の健康を守る効果があります。さらに、軽い運動を継続することは血流を良くし、肥満や高血圧を防ぎます。 今回の研究にあったストレスも高血圧や不規則な生活習慣の原因になるため、十分な睡眠や気分転換でうまく発散することが大切です。長く続けるために、まずはできることから始めて、心臓にやさしい生活を実践しましょう。
研究内容への受け止めは?
ケベック大学の研究員らが発表した内容への受け止めを教えてください。
今回の研究では、職場における心理社会的ストレス要因が男性の冠動脈性心疾患リスク上昇と関連することが報告されました。女性では関連しなかった点については今後の研究が望まれるところですが、一家の大黒柱としての責任感から男性の冠動脈性心疾患リスクの上昇と関係があったのかもしれないと感じました。職場における心理社会的ストレス要因を改善することは冠動脈性心疾患に対する一次予防につながり得るということは大きな情報であり、今後も注意していかなければなりません。
編集部まとめ
カナダの研究により、職場でのストレスや努力に見合わない報酬が、特に男性の冠動脈性心疾患のリスクを大きく高めることが明らかになりました。ストレスの影響は見過ごせず、食生活の改善、禁煙、運動、十分な睡眠など、日常の習慣を整えることが心疾患の予防につながります。






