アルコール以外の「脂肪肝」の原因はご存じですか? 症状・進行したときのリスクも医師が解説!

「脂肪肝」は、肝臓に過剰な脂肪が蓄積された状態のことです。しかし、単に「脂肪がついた状態」ではなく、多くの病気のリスクとなり得るのだそうです。今回は、脂肪肝の原因やリスク、予防法などについて、「まつい内科医院」の松井太吾先生に解説していただきました。

監修医師:
松井 太吾(まつい内科医院)
脂肪肝の原因

編集部
まず、脂肪肝について教えてください。
松井先生
肝臓の細胞に、過剰な中性脂肪が蓄積してしまった状態を脂肪肝と言います。脂肪肝は大きく分けて「アルコール性脂肪肝」と「非アルコール性脂肪肝(NAFLD)」の2つに分類されます。また、最近では「代謝異常関連脂肪肝(MAFLD)」という新たな概念も生まれています。代謝異常関連脂肪肝は、脂肪肝に「肥満」、「2型糖尿病」、もしくは「2種類以上の代謝異常」のいずれかが併存している場合に診断されます。
編集部
アルコール以外の原因でも起こるのですね。
松井先生
そうですね。「脂肪肝=アルコール」 というイメージを持っている人は多いと思いますが、アルコールのほかにも、脂質異常症や運動不足、糖尿病や肥満なども脂肪肝のリスクを高めるとされています。
編集部
それぞれについて、もう少し詳しく教えてください。
松井先生
まず、アルコール性脂肪肝は、文字通りアルコールの過剰摂取が原因で発生する脂肪肝です。摂取したアルコールが肝臓で代謝されるときに生成される物質が、肝細胞に脂肪を蓄積させると言われています。
編集部
非アルコール性脂肪肝についてはいかがでしょうか?
松井先生
アルコールの摂取がほとんどないにもかかわらず、脂肪が肝臓に蓄積された状態です。脂質異常症や糖尿病などの生活習慣病と深い関連があります。特に肥満の人に多くみられるのですが、日本人に限っては痩せていても肝臓に脂肪がつきやすく、非アルコール性脂肪肝になってしまう人も比較的多いと言われています。
脂肪肝の症状や進行したときのリスク

編集部
脂肪肝になると、どのような症状が出ますか?
松井先生
基本的に、初期の段階では症状がほとんどありません。進行すると、倦怠感や肝臓の腫れ、右肋骨下の痛みなどが出てきますが、症状を自覚した時点で、かなり進んでいると考えられます。
編集部
脂肪肝が進行するとどうなるのですか?
松井先生
アルコール性・非アルコール性どちらの場合も、進行すると「肝炎」「肝硬変」「肝がん」を発症するリスクが高くなります。また、先ほど「脂質異常症や糖尿病が脂肪肝の原因になる」とお伝えしましたが、これらは相互に影響し合っています。そのため、脂肪肝があると糖尿病を発症するリスクも高まります。
編集部
様々な病気のリスクが高まるのですね。
松井先生
そのとおりです。ほかにも、「大腸がん」や「乳がん」などの悪性腫瘍の発症率も高くなるという報告もあります。加えて、糖尿病や動脈硬化による腎臓病や心血管疾患、末梢神経障害などのリスクも高まります。
編集部
「肝臓に脂肪がついただけ状態」ではないのですね。
松井先生
脂肪肝は単なる「状態」ではなく、様々な病気のリスク要因の1つです。ただし、脂肪肝からここまで悪化してしまうのはごく少数です。早期に発見して適切な対応をすれば、病気になるリスクを下げることができます。
脂肪肝の予防法・治療法

編集部
脂肪肝にならないためには、どうしたらいいのでしょうか?
松井先生
肥満の人はダイエット、2型糖尿病の人はダイエットに加えて血糖コントロールを意識しましょう。しかし、どれだけ意識しても脂肪肝になりやすい人はいるので、完全に予防する事は難しいとも言えます。やはり、早期発見・早期治療が重要です。
編集部
脂肪肝に気づくためにはどうすればいいですか?
松井先生
症状が出てからでは遅いので、定期的に検査を受けましょう。特に会社の健康診断などで「高血圧や糖尿を指摘された」「肝機能などの数値で引っかかった」といった場合は、できるだけ早めに検査を受けましょう。
編集部
脂肪肝と診断されたら、どのような治療をするのですか?
松井先生
基本的には、予防策と同様にダイエットや血糖コントロールをおこないます。また、食事療法や運動療法、ビタミンEなどの薬物療法も取り入れることもあります。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
松井先生
脂肪肝は、放置しておくと様々な病気を発症するリスクがありますが、早期に発見して適切に治療すれば最悪の事態は回避できます。職場の健康診断などで肝障害や脂肪肝を指摘された場合などは、早めに医療機関に相談することをおすすめします。
編集部まとめ
脂肪肝は自覚症状が乏しく、気づかないうちに進行してしまうことが多いとのことでした。しかし、早期に発見して、対策することで病気の進行リスクを避けることができます。もし少しでも気になることがあれば、早めに医療機関に相談してみましょう。
医院情報
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診療科目 | 内科、消化器内科、肝臓内科、内視鏡内科 |