肝臓の病気が疑われるのは「ALT30以上」!? 意外と身近な「肝炎」について専門医に聞いてみた
肝臓は、病気が進行するまで症状が表れにくく、「沈黙の臓器」として知られています。気づかずに放置すると、肝硬変や肝臓がんといった重篤な病気に発展する恐れもあります。本記事では、肝炎の種類や発症に気づくポイント、肝臓内科での検査や治療、肝炎のリスクや予防のための検査の重要性を、日本肝臓学会肝臓専門医の行徳先生に伺いました。
監修医師:
行徳 芳則(ぎょうとく内科・内視鏡クリニック)
NAFLDとNASHについて知る
編集部
肝臓の病気には、具体的にどのような病気がありますか?
行徳先生
「慢性肝炎」という状況、「肝硬変」というかなり進行した状況、さらに一過性に起こる「急性肝炎」という病気に大きく分けることができます。
編集部
肝臓の病気で最近は、「NAFLD(ナッフルディー)」や「NASH(ナッシュ)」という言葉も耳にします。
行徳先生
肝臓に脂肪がついている人を総称してNAFLDと呼びます。お酒を飲む量が少ない、あるいは全く飲まないような人につく診断名です。
編集部
NASHとは、どのような病気ですか?
行徳先生
肝臓の線維化が進んでいたり、炎症がひどかったりする人に関しては、NASHと表現されます。しかし最近は、お酒を飲んでも飲まなくても出てくる肝臓の組織像が変わらないことや、病態としても大きく変化がないので、代謝(metabolic)に着目した「MAFLD」や「MASH」という言葉が新たに使われ始めています。
肝臓はなぜ「沈黙の臓器」なのか
編集部
肝臓は「沈黙の臓器」とも言われますが、肝炎の発症に気づくためのポイントはありますか?
行徳先生
重篤化した状況としては、肌が黄色くなる「黄疸(おうだん)」、全身のむくみ、腹水などが考えられます。しかし、早期に発見するためには、やはり超音波の検査や定期的な血液検査が必要です。
編集部
肝炎になっていることに気づかず放置すると危険な理由を教えてください。
行徳先生
病気が進行するまで症状が出てこないので、知らない間に慢性肝炎、あるいは肝硬変へ進んでくると発がんのリスクが高くなります。肝硬変や肝臓がんになってから、突然肝臓の病気に気づくというケースも珍しくありません。
編集部
肝炎を発症しやすい人の特徴はありますか?
行徳先生
慢性肝炎や肝硬変になりやすい原因としては、ウイルス性の肝炎としてB型肝炎やC型肝炎の方が挙げられます。また、自己免疫性肝炎や原発性胆汁性胆管炎と呼ばれる自己免疫疾患、さらに、先述したアルコール性の肝炎や非アルコール性のNASHのような状態にある方ですね。そのような方は、こまめなフォローが必要です。
肝臓内科でできることとは?
編集部
肝臓内科ではどのような検査が行われますか?
行徳先生
大きく分けると、「血液的な肝臓病の精査」と「超音波による肝臓の形態の印象の評価」という2点が大きいところだと思います。また、内視鏡やCT・MRIは、リスクを考慮し半年~1年おきには受けた方がいいですね。
編集部
肝臓内科で行われる治療について教えてください。
行徳先生
肝臓自体を直接治すというのは中々難しいので、基本的には肝機能が今以上悪くならないようにするというのが目標になってきます。原因にもよりますが、B型肝炎やC型肝炎であれば、ウイルスを退治するような薬を使用します。脂肪肝の方に関しては生活習慣の改善、あるいはそういった方は生活習慣病の合併が多いので、糖尿病や脂質異常症など、肝臓だけでなく全体を見る治療もしていきます。アルコール依存の方の場合は、精神科の先生との協力が必要な場合もありますし、自己免疫性肝炎の方に関しては免疫を抑えるようなステロイド薬による治療がメインになります。
編集部
どのような人に肝臓内科がおすすめでしょうか?
行徳先生
健康診断がきっかけとなる方が多いのですが、肝機能が前より悪くなったという場合は、様子を見ずにまずは一度相談いただきたいです。具体的な肝臓の数値として見るべきものはいくつかあるのですが、最近、日本肝臓学会からは「ALT」の数値が30を超えている人は、一度病院に行くことを推奨しています。
編集部まとめ
肝炎は、進行するまで症状が表れにくく、放置すると肝硬変や肝臓がんのリスクが高まります。早期発見のためには、専門的な知識のある医師による定期的な血液検査や超音波検査を受けることが重要とのことでした。健康診断で肝機能の数値が気になる方は、一度肝臓内科で相談し、原因に応じた治療や生活習慣の改善指導を受けましょう。
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