肝臓に優しい食事を管理栄養士が解説 おすすめの食材・食事の際の注意点は?
肝臓は、多少の障害があっても自覚症状が表れにくい臓器です。健康診断で肝機能の数値を指摘され、驚いた人もいるかもしれません。肝臓はお酒と関係することがよく知られていますが、食事との影響はあるのでしょうか。今回は、肝臓に優しい食事について、管理栄養士の成松由佳さんに教えてもらいました。
監修管理栄養士:
成松 由佳(管理栄養士)
目次 -INDEX-
肝臓に負担がかかる食事のポイント3つを解説 お酒の飲み過ぎ、糖質・脂質の過剰摂取は要注意?
編集部
肝臓に負担がかかる食事のポイントはありますか?
成松さん
肝臓に負担をかける食事の代表が、アルコール、糖質、脂質の過剰摂取です。これらは肝臓に中性脂肪を蓄積させ、肝機能の低下を引き起こします。
編集部
「アルコールは肝臓に良くない」というのは聞くのですが、なぜでしょう?
成松さん
アルコールの分解は、肝臓でおこなわれます。アルコールの摂取量が多いと、アルコールを分解するために必要な補酵素が肝臓で多く使われます。この補酵素は、糖質や脂質を分解し、エネルギーとして消費する働きにも関わっています。アルコールの分解量が増えると、糖質や脂質の消費が追いつかなくなり、代謝されなかった糖質や脂質が中性脂肪として肝臓にたまっていくのです。
編集部
糖質の摂り過ぎはなぜ良くないのでしょう?
成松さん
糖質を摂り過ぎてエネルギー過剰になった分は、中性脂肪として肝臓に蓄積し脂肪肝の状態を引き起こします。また、肝臓だけでなく、内臓脂肪としても蓄えられます。内臓脂肪が増えると、血糖値を下げるインスリンというホルモンの効き目が悪くなります。この状態は、脂肪肝に炎症が起きやすく、肝機能が低下しやすいのです。
編集部
脂質の影響についても教えてください。脂質の種類によって違いはありますか?
成松さん
脂質の摂り過ぎは肝臓に脂肪を蓄積させ、肝機能の低下を引き起こします。特に、肉やバターなどに含まれる脂質である飽和脂肪酸は、酸化ストレスを増加させることが知られています。酸化ストレスは、肝臓に炎症を引き起こす要因のひとつです。反対に魚などに含まれるn-3系脂肪酸は、肝臓に脂肪が溜まるのを抑制する働きがあるとされています。
肝機能改善に効果的な栄養素とは おすすめの食材を併せて紹介
編集部
肝臓を回復させるために摂りたい栄養素はありますか?
成松さん
肝臓の細胞を修復するのに必要なたんぱく質やビタミン、ミネラルを摂りたいところですね。特に、抗酸化作用があり、酸化ストレスを軽減するビタミンA、C、Eを十分に摂取しましょう。また、先ほど紹介したn-3系脂肪酸もおすすめです。さらに、タウリンが肝障害を改善する可能性も期待されています。
編集部
どんな食材からたんぱく質を摂取すると良いですか?
成松さん
魚介類を選ぶと良いでしょう。良質なたんぱく質だけでなく、n-3系脂肪酸も摂取できます。また、イカやタコにはタウリンも含まれています。飽和脂肪酸を減らすためにも、肉を減らし、魚介類を摂る回数を増やすと良いですね。
編集部
肉の中でも、飽和脂肪酸が少ないものはありますか?
成松さん
肉の中では、鶏肉がおすすめです。脂質が少なく、良質なたんぱく質を含まれています。だからといって牛肉や豚肉を食べてはいけないわけではありません。頻度を控えるのがおすすめですね。
編集部
ビタミン類を摂るには何を食べたら良いですか?
成松さん
野菜類の中でも、緑黄色野菜を選んで摂りましょう。ビタミンAはにんじんや春菊、ほうれん草、ビタミンCはパプリカやピーマン、ブロッコリーに多く含まれています。ビタミンEはかぼちゃやほうれん草などか摂れます。ビタミンCはキウイやいちご、柑橘類などの果物にも多く含まれています。果物の摂り過ぎは中性脂肪を増やすため、食べ過ぎにも注意が必要ですが、1日に小さい果物1個程度は食べられると良いですね。
「肝臓に優しい食事」とはどんなもの? 食事療法のポイントは?
編集部
肝臓が弱ってきた人の食事のポイントは何ですか?
成松さん
肝機能の数値が低下し、脂肪肝や脂肪肝炎が疑われる人は、アルコールや糖質、脂質の過剰摂取を控えることが大切です。適量飲酒を目指し、糖質・脂質の多い食事を減らしましょう。肥満がある場合は、これらの食事によってカロリーの摂り過ぎを改善し、減量することも必要です。
編集部
適量飲酒とは、どれくらいを目指せば良いでしょうか?
成松さん
※参考:厚生労働省「健康日本21 アルコール」
https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/b5.html
編集部
飲み過ぎを防ぐために良い方法があれば教えてください。
成松さん
1日に飲む量を減らすか、飲む頻度を減らすか、どちらか取り組みやすい方から始めてみましょう。飲み物がないと寂しい場合は、炭酸水やノンアルコールの飲み物に置き換えるのがおすすめです。また、おつまみの選び方も工夫してみましょう。豆腐や枝豆など、低カロリーでたんぱく質の摂れるものがおすすめです。脂っこい料理や味つけが濃いものは飲み過ぎてしまいやすいので、食べ過ぎに注意しましょう。
編集部
糖質・脂質の摂り過ぎを控えるには、どんな食事を摂ったら良いですか?
成松さん
ご飯と、肉類や魚介類などのたんぱく質源が入ったおかず、野菜・海藻・きのこなどのおかずが揃った定食スタイルの食事を目指しましょう。特に魚を選ぶとn-3系脂肪酸、緑黄色野菜を選ぶとビタミンA・C・Eなど、肝機能の改善に役立つ栄養素が摂取できます。また、脂質の多い料理や、炭水化物メインの料理は、1食に複数摂らないようにしましょう。例えば、ラーメンとチャーハン、親子丼とうどんなどの組み合わせは避けてください。スナック菓子やジュースなども摂り過ぎないように注意してみてくださいね。
編集部
食事の時間に注意はありますか?
成松さん
※参考:農林水産省「みんなの食育 夜遅く食事をとるときは」
https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/minna_navi/topics/topics2_03.html
編集部
糖質・脂質の量を減らしても満足する方法はありますか?
成松さん
噛みごたえのあるものを選び、よく噛んで食べるのがおすすめです。野菜や海藻の料理を増やし、食事の最初に食べると、よく噛むことで満腹感を得やすくなります。大きめに切ってスープやみそ汁、サラダにすると良いでしょう。穀物は精製された白米などより、玄米などの全粒穀物を選ぶとよく噛んで食べられます。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
成松さん
脂肪肝を放置すると、肝硬変や肝臓がんなどの病気につながる可能性があります。また、心臓病のリスクも高めることが知られています。健康診断で指摘されたら、食事で早いうちに対策しましょう。できることから取り入れてみてくださいね。
編集部まとめ
アルコール、糖質、脂質の過剰摂取は脂肪肝を引き起こし、肝臓病の原因になることが分かりました。これらの過剰摂取を避け、全粒穀物や魚介類、野菜を取り入れた定食スタイルの食事で改善を目指しましょう。