脂肪肝発症を抑制するカギは「腸活」にアリ!?
今年9月、腸内細菌由来の酢酸がインスリン抵抗性を改善し、「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」や「非アルコール性脂肪肝炎(NASH)」の発症を抑制するとの結果が発表されました。この発表について工藤医師に伺います。
監修医師:
工藤 孝文(医師)
日本内科学会・日本糖尿病学会・日本肥満学会・日本東洋医学会・日本抗加齢医学会・日本女性医学学会・日本高血圧学会、日本甲状腺学会・日本遠隔医療学会・小児慢性疾病指定医。
今回の発表の内容とは?
改めて、今回の発表の内容を教えてください。
工藤先生
今年9月にMicrobiomeに発表された研究結果です。プレバイオティクスであるイヌリンがNAFLDとNASHにどれほどの効果があるのかについて調べました。
その結果、イヌリン摂取群では対照群と比べて肝肥大の抑制、血液中の中性脂肪の改善などがみられ、NAFLDやNASHの発症抑制効果が確認されました。また、腸内フローラを解析した結果、イヌリン摂取群では、酢酸を生産する菌が増加していて、腸管内および門脈血中の酢酸濃度が顕著に上昇したとのことです。さらに、腸内で産生された酢酸が肝臓に取り込まれることで、病態を抑制していることも確認されました。
つまり、腸活をすることによって酢酸濃度が上がり、それがアルコールに由来しない脂肪肝の発生を抑制する可能性があるという発表になります。
NAFLDとNASHとは?
NAFLDとNASHについて教えてください。
工藤先生
NAFLDとは、お酒をあまり飲んでいないのに肝臓に脂肪がたまってしまう非アルコール性の脂肪肝のことを指します。その原因は、肥満や糖尿病、脂質異常症、高血圧といった生活習慣病のほかに、睡眠時無呼吸症候群などの疾患、手術後の中心静脈栄養や薬剤などがあります。この脂肪肝から徐々に進行する肝臓病のことをNASHといいます。
発表は今後どのように活用されることが期待できる?
今回発表された内容は、今後どのように活用されることが期待できるのでしょうか?
工藤先生
NAFLDは、メタボリックシンドロームと密接に関連していることから、食事療法や運動療法などの生活習慣を改善することが主な治療法とされています。一方、それ以外の薬物療法についてはビタミンEやオベチコール酸が有用とされていますが、確立された治療法はありません。
そのため、腸活がNAFLD・NASH改善に有用なことが更に明らかになれば、治療選択肢が限られ苦慮されているNAFLD・NASH患者さんにとっての福音となるでしょう。
まとめ
近年注目を集めている腸活ですが、今回の発表で脂肪肝にも効果があるという結果が出ました。様々な疾患領域で腸内細菌との関連を検証する研究が進められていることもあり、今後もさらなる腸活の効果が次々と明らかになるかもしれません。