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妊娠中の過度な体重増加に要注意! 心血管系・糖尿病関連の死亡リスクに影響

 更新日:2023/12/05
妊婦の過度の体重増加 50年後の死亡リスクにも影響

アメリカのペンシルベニア大学らの研究グループは、「妊娠中に過度な体重増加があった妊婦は、そうでない妊婦と比べて、50年後の全死因死亡のリスクが有意に上昇した」と発表しました。このニュースについて馬場医師に伺いました。


馬場 敦志

監修医師
馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)

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筑波大学医学群医学類卒業 。その後、北海道内の病院に勤務。 2021年、北海道札幌市に「宮の沢スマイルレディースクリニック」を開院。 日本産科婦人科学会専門医。日本内視鏡外科学会、日本産科婦人科内視鏡学会の各会員。

研究グループが明らかにした内容とは?

今回、アメリカのペンシルベニア大学らの研究グループが明らかにした内容について教えてください。

馬場 敦志医師馬場先生

アメリカのペンシルベニア大学らの研究グループは、妊娠中の体重増加が2009年の全米医学アカデミーの勧告の推奨値を上回った妊婦と、推奨値の範囲内であった妊婦と比較しました。研究成果は医学雑誌「The Lancet 」に掲載されています。

データ解析の対象となったのは4万6042人で、追跡期間中央値は52年、追跡期間中に死亡した人は1万7901人でした。妊娠前に低体重であった女性は、2009年の全米医学アカデミーの勧告より過度の体重増加で心血管死のリスク上昇と関連しましたが、全死因死亡や糖尿病関連死とは関連がみられませんでした。妊娠前体重が標準であった女性で、2009年の全米医学アカデミーの勧告より過度に体重増加した方は、全死因死亡、心血管死のリスクが上昇しました。なお、糖尿病関連死には影響がありませんでした。妊娠前に過体重だった女性では、2009年の全米医学アカデミーの勧告を超える体重増加で、全死因死亡、糖尿病関連死のリスクが上昇しましたが、心血管死には影響しないという結果が出ました。一方で、妊娠中の体重の変化が2009年の全米医学アカデミー勧告より低かった場合では、妊娠前の体重が標準の女性で糖尿病関連死のリスクが低下していました。

研究グループは、今回明らかにした内容について「本研究の新たな知見は、2009年の全米医学アカデミー勧告の推奨値の範囲内で健康的な妊娠期間中の体重増加を達成することの重要性を支持するものである。妊娠期間を超えて心血管疾患や糖尿病関連死亡率を含む長期的な健康状態にまで及ぶ可能性がある」と論文で言及しています。

今回の発表内容への受け止めは?

アメリカのペンシルベニア大学らの研究グループによる発表内容への受け止めを教えてください。

馬場 敦志医師馬場先生

本研究は、追跡期間が50年以上と長期におよぶ大変労力のかかる研究であり、非常に貴重であると考えます。妊娠中の体重管理は、妊娠期間を超えて、心血管系および糖尿病関連の死亡率を含む将来的な健康への影響を与え得る可能性を示唆します。

妊娠期間中、全米医学アカデミー勧告の範囲内で健康的な体重増加を達成することの重要性を支持する研究結果です。将来的な健康リスクの高い妊婦が、妊娠中の体重増加の管理が不良になるものなのか、それとも妊娠中の体重増加の管理が不良であると、将来的な健康リスクが高まるのか興味深いです。また、妊娠中の体重増加の管理をおこなうことで、妊娠期間だけでなく将来的な健康リスク低下させることができるのかにも興味があり、さらなる研究結果を期待します。

妊娠中の過度な体重増加で気をつけるべきことは?

今回紹介した研究では、妊娠中の過度な体重増加が50年後の全死因死亡のリスクにも関連があることが示唆されましたが、そもそも妊娠中の過度な体重増加があった場合に妊婦が気をつけるべきことを教えてください。

馬場 敦志医師馬場先生

妊娠中の過度な体重増加によって、妊娠糖尿病・巨大児・肩甲難産、妊娠高血圧症候群、死産・胎児機能不全・子どもの神経管閉鎖障害などのリスクが高まります。妊娠糖尿病に伴って、巨大児・肩甲難産につながり、経腟分娩が困難となり、「帝王切開手術」につながります。また、妊娠高血圧症候群(以前は妊娠中毒症)に関して言うと、胎児機能不全や子癇(しかん)と呼ばれるけいれん発作を引き起こし、母子ともに致死的な状況となる恐れがあります。さらに、産道が狭くなる、微弱陣痛などからも分娩時間が遷延するリスクが増えます。特に妊娠中は、食事や運動・睡眠などの生活習慣を見直し、体重増加の管理に気をつけるようにしましょう。

まとめ

アメリカのペンシルベニア大学らの研究グループは、「妊娠中に過度な体重増加があった妊婦はそうでない妊婦と比べて、50年後の全死因死亡のリスクが有意に上昇した」と発表しました。妊婦の体重増加についての新たな知見は、大きな注目を集めそうです。

原著論文はこちら
https://pmc.carenet.com/?pmid=37866371&keiro=journal

この記事の監修医師