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妊娠中の「ビタミンD」不足で子どもがアレルギー疾患に発症しやすくなる 富山大研究グループ

 更新日:2023/11/30
妊婦のビタミンD摂取量が3歳時点の子どものアレルギー疾患と関連

富山大学は、「妊娠中に食事からビタミンDを摂取する量が、3歳時点の子どものアレルギー疾患と関連することを明らかにした」と発表しました。このニュースについて馬場医師に伺いました。

馬場 敦志

監修医師
馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)

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筑波大学医学群医学類卒業 。その後、北海道内の病院に勤務。 2021年、北海道札幌市に「宮の沢スマイルレディースクリニック」を開院。 日本産科婦人科学会専門医。日本内視鏡外科学会、日本産科婦人科内視鏡学会の各会員。

研究グループが明らかにした内容とは?

今回、富山大学の研究グループが明らかにした内容を教えてください。

馬場 敦志医師馬場先生

富山大学の研究グループは、妊娠中のビタミンD摂取量と3歳時点の子どものアレルギー疾患の関連性を調べました。研究成果は「International Archives of Allergy and Immunology」に掲載されています。

研究グループは7万3209組の母子を対象に、妊娠中のビタミンD摂取量を「食物摂取頻度調査票」を用いて評価し、5つのグループに分類して比較しました。その結果、妊娠中のビタミンD摂取量が多い母親の子どもでは、3歳時点でアレルギー性鼻炎の症状の発現が低いとのことでした。特に、ビタミンD摂取量が最も少ないグループと比較して、摂取量が2~4番目に多いグループで花粉症の発症率は低かったことが示されました。ただし、アレルギー性鼻結膜炎などのアレルギー症状では、ビタミンD摂取量による明確な差はみられませんでした。また、研究では妊娠中のビタミンDの平均摂取量が1日あたり4.7μgであることが判明し、これは調査時点の2015年版の日本人の食事摂取基準の妊婦向け推奨量7μgと比べて少ないことが明らかになりました。なお、ビタミンDの妊婦向け推奨量については、2020年版では8.5μgとなっています。

研究グループは「今後は子どもの食事内容など、さらに情報を集めるとともに、より高年齢でもアレルギー性鼻炎の予防が示唆される関連が認められるのか調べていく必要がある」と述べています。今回の研究は、妊娠中のビタミンD摂取が子どものアレルギー疾患に及ぼす影響を示唆するものですが、データの収集方法に限界があり、子どもが生まれた後のビタミンD摂取や日光曝露の影響が考慮されていない点に注意が必要です。

ビタミンDとは?

今回の研究対象となったビタミンDについて教えてください。

馬場 敦志医師馬場先生

ビタミンDはカルシウムとリンの代謝に重要な役割を果たす脂溶性ビタミンで、日光によって皮膚で生成されるほか、食品からも摂取できます。ビタミンDは骨の健康を維持するために不可欠で、カルシウムの吸収を促進して骨の成長と再構築に関与します。また、免疫系の正常な機能にも関わり、慢性疾患の予防に寄与することが示唆されています。

ビタミンDの欠乏は、骨の脆弱化を引き起こす可能性があり、特に子どもでは「くる病(骨軟化症)」のリスクを高めます。この状態は、骨が正常に骨化せず、柔らかくなり変形しやすくなるものです。成人の場合、ビタミンD不足は「骨粗しょう症」のリスクを増加させ、骨折の危険性を高めます。さらに、ビタミンD不足は筋力の低下や免疫機能の低下を招く可能性もあり、一部の研究では心血管疾患、糖尿病、特定のがんのリスク増加との関連も指摘されています。

ビタミンDについては、東京慈恵会医科大学が2019年4月から2020年3月までの期間に東京都内で健康診断を受けた約5518人の成人男女を対象に調査した結果、「全体の98%がビタミンD不足に該当していることが判明している」という研究も明らかになっています。

今回の発表内容への受け止めは?

富山大学の研究グループによる発表内容への受け止めを教えてください。

馬場 敦志医師馬場先生

妊娠中の食事・栄養と子どもへの影響は様々な研究があります。有名なものだと葉酸があり、妊娠の1カ月以上前から妊娠3カ月まで、葉酸を1日0.4mg摂取することで、子どもの神経管閉鎖障害発症リスクを低くすることが知られています。葉酸を意識して摂取している女性は多いでしょう。

そして、妊娠中における不足しがちな栄養素として、今回の研究で紹介されたビタミンDも重要です。子どもへのアレルギー疾患への影響だけでなく、ビタミンD不足によって「妊娠高血圧腎症」「切迫早産」「妊娠糖尿病」などの妊娠合併症との関連なども報告されています。

ビタミンDは妊娠中に限らず不足しがちな栄養素です。さんま・いわし・かれいなどの魚類、しいたけ・きくらげなどのきのこ類に多く含まれているので、積極的に摂取することを心がけましょう。どうしても食事で摂取できない場合には、サプリメントを利用するのもおすすめです。

まとめ

富山大学の研究グループは、「妊娠中の食事からのビタミンD摂取量が、3歳時点の子どものアレルギー疾患と関連することを明らかにした」と発表しました。こうした研究結果を献立作りに役立てるのもいいかもしれませんね。

この記事の監修医師