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新型コロナ飲み薬 「ゾコーバ」シェア6割に、子どもへの治験も開始

 公開日:2023/07/07
新型コロナ飲み薬 「ゾコーバ」がシェア6割に

医療従事者向けサイトを運営するエムスリーが全国の医療機関4100施設の処方データを分析したところ、新型コロナウイルスの飲み薬の処方全体に占める「ゾコーバ」の割合が6月19~25日の1週間平均で57.8%だったと明らかにしました。このニュースについて郷先生にお話を伺いました。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

新型コロナウイルス飲み薬のシェアについては?

塩野義製薬が開発した新型コロナウイルスの飲み薬「ゾコーバ」のシェアについてのニュースを教えてください。

郷 正憲医師郷先生

今回紹介するニュースは、医療従事者向けサイトを運営するエムスリーが独自のデータベースである「JAMDAS」から、全国のクリニックなど中小規模の医療機関約4100施設の処方データを分析した結果です。分析によると、新型コロナウイルス飲み薬の処方に関して、塩野義製薬の「ゾコーバ」が全体に占める割合は6月19~25日の1週間平均で57.8%、アメリカのメルク社の「ラゲブリオ」が35.8%、同じくアメリカのファイザー社の「パキロビッド」が6.4%となりました。

ゾコーバは現在承認されている3つの飲み薬の中では最後発となり、2022年11月に緊急承認されています。政府が購入した分を指定された医療機関や薬局に供給していた2023年2月上旬までのシェアは10%台にとどまっていましたが、一般流通が始まった2023年3月末から急速に伸び、2023年4月中旬には50%に達しています。年齢別にみてみると、18~39歳が約40%を占め、60歳以上が約50~60%のアメリカ製の2つの飲み薬とは対照的に、若年層に集中する傾向にありました。

ゾコーバはウイルスの増殖を抑制する薬です。軽症者や無症状者向けの飲み薬で感染初期に1日1回、5日間自宅などで服用することで重症化を防ぐ効果が期待されています。

「ゾコーバ」の小児への治験の動きとは?

今回取り上げているゾコーバについて、小児への治験が発表されています。この内容について教えてください。

郷 正憲医師郷先生

ゾコーバを開発した塩野義製薬は2023年6月29日に、6~11歳の小児を対象とする治験を開始したと発表しました。治験では国内120人の小児の新型コロナウイルス患者を対象に、1日1回、5日間投与した際の安全性を確認することになります。発表の段階では既に初回投与を終えているとのことです。

現在、12歳未満の小児に使用可能な抗ウイルス薬は点滴薬のみとなっているため、塩野義製薬は「新たな変異株の出現や今後の流行状況に合わせて、必要とされる治療薬やワクチンを迅速に提供できるよう研究開発を推進したい」としています。

「ゾコーバ」のシェアについて受け止めは?

新型コロナウイルスの飲み薬の処方全体に占めるゾコーバの割合が約6割という分析結果への受け止めを教えてください。

郷 正憲医師郷先生

ゾコーバは軽傷者、中等症者に対して使用が推奨されている薬剤です。しかし、現在のところ明らかに症状を改善させる作用や、重症化を予防する効果があるとは分かっていません。専門医の間では、「承認は性急であった」という意見が続出していました。ただ、臨床使用されるにつれて、後遺症の発症率を下げる効果があるのではないかというデータが揃ってきたため、軽症患者に対して使用される例が急増したという経緯があります。

ワクチンの普及によって軽傷者が増加した現在、「Long Covid」と呼ばれる後遺症をいかに予防するかという点に主眼が移行してきたため、ゾコーバの後遺症発症率低下効果がより注目されるようになっています。今後、データが蓄積するにつれて後遺症発症率低下効果が確実となれば、使用率がさらに上昇すると推察されます。

まとめ

エムスリーが全国の医療機関4100施設の処方データを分析したところ、新型コロナウイルスの飲み薬の処方全体に占める「ゾコーバ」の割合が6月19~25日の1週間平均で57.8%であったことが今回のニュースでわかりました。シェアが拡大しているゾコーバですが、妊婦には処方できず併用できない薬も多いため、同意書の取得が必要となります。医療現場では引き続き処方の注意が求められます。

この記事の監修医師