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新型コロナ治療薬「レムデシビル」による副作用の仕組み解明 東北大・九州大

 公開日:2023/05/26
「レムデシビル」による心機能への副作用の仕組み解明

東北大学や九州大学らの研究グループは、新型コロナウイルスの治療薬「レムデシビル」による心機能への副作用の仕組みを解明したと発表しました。この内容について郷医師に伺いました。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

研究グループが発表した内容とは?

今回、東北大学と九州大学の研究グループが発表した研究内容について教えてください。

郷 正憲医師郷先生

今回紹介する研究は東北大学や九州大学などの研究グループが発表した内容で、国際科学誌「Communications Biology」に掲載されています。研究グループは、新型コロナウイルスの治療薬「レムデシビル」による心機能への副作用が、どのような仕組みで起きるのか、明らかにすることを目的に研究を実施しました。

レムデシビルが心筋細胞の表面に多数ある受容体と結び付くことによって副作用を引き起こすと予測し、約350種の受容体と反応させて影響を調べました。その結果、心血管の収縮などの作用を持つ「ウロテンシンII受容体」と結び付いて、活性化させることが分かりました。マウスを使った実験やヒトのiPS(人工多能性幹細胞)由来の心筋細胞を使った実験でも、心機能への影響が出ました。また、受容体の反応を抑える薬剤の投与で、副作用が低減することもわかったとのことです。

研究グループは「ウロテンシンII受容体遺伝子の遺伝子変異がレムデシビル治療中の心血管イベントの潜在的なリスクファクターとなり得ることを明らかにし、将来的にこのようなイベントを予防する治療機会への道を開くことができました」と、今回の研究結果の意義を述べています。

レムデシビルとは?

レムデシビルについて教えてください。

郷 正憲医師郷先生

本来、レムデシビルはエボラ出血熱向けに開発された抗ウイルス薬です。海外で実施された臨床試験で「重症化リスクを持つ軽症や中等症の新型コロナウイルスの患者にレムデシビルを投与したところ、偽薬を投与したグループに対して入院・死亡リスクを9割近く低下させた」というデータが出たことから、日本では2020年5月に新型コロナウイルスの治療薬として使えるよう特例承認されています。

発表内容への受け止めは?

東北大学や九州大学らの研究グループが発表した今回の研究結果についての受け止めや、今後の応用への期待感を教えてください。

郷 正憲医師郷先生

新型コロナウイルスに感染して重症化の可能性がある人などにレムデシビルが投与されていますが、心機能に対する副作用があるため、もともと心機能が悪い人への投与は慎重な対応が必要な場合がありました。もともと心機能が悪い人は新型コロナウイルスによる症状が重篤化しやすいため、レムデシビルを使用したい一方、レムデシビルによってさらに心機能が低下してしまい致死的になる可能性があるのが理由です。

今回の研究は、レムデシビルを投与するとどのような機序で心機能が低下するのかということを明らかにしました。この結果が直接臨床にすぐに役立つわけではありませんが、研究を進めることによってどのような条件で心機能が低下しやすいのか、またそれを検査する方法はないのかといった研究につながっていくと思われます。

薬の投与前に検査をおこない、心機能の低下をきたす可能性が低いと判断された場合にはレムデシビルの投与をおこない、心機能の低下をきたす可能性が高い場合にはほかの治療薬を使用するという方法が理想的であると考えられます。今後の研究のさらなる進歩に期待です。

まとめ

東北大学や九州大学らの研究グループは、新型コロナウイルスの治療薬「レムデシビル」による心機能への副作用の仕組みを解明したと発表したことが今回のニュースでわかりました。副作用の仕組みが明らかになることで、より安全に治療がおこなわれることが期待されます。

この記事の監修医師