新型コロナ 定点把握で感染者数を初公表「緩やかな増加傾向」厚生労働省
厚生労働省は、新型コロナウイルスの5類移行に伴って指定した、医療機関からの定点把握による全国の感染状況の数値を初めて発表しました。この内容について中路医師に伺いました。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
厚生労働省が発表した定点把握の内容とは?
厚生労働省が、新型コロナウイルスの5類移行後初めて発表した定点把握の内容について教えてください。
中路先生
これまでの新型コロナウイルスの流行状況の把握方法は、全ての感染者の報告を求める「全数把握」で実施してきました。しかし、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に移行したことに伴って、全国およそ5000の医療機関からの週1回の報告をもとにした「定点把握」へ変更しました。
2023年5月19日、定点把握方式による感染状況が初めて公表され、5月14日までの1週間に報告があった患者数は1万2922人だったことが明らかになりました。1医療機関あたりの平均患者数は2.63人でした。また、都道府県別では多い順に、沖縄県が6.07人、石川県が4.90人、北海道が4.36人、新潟県が4.30人、山梨県が4.22人となっており、40の都道府県で前週より増加した結果となっています。
2022年10月から5月7日までの週ごとの感染者数について定点把握で集計し直したところ、前週と比べて1.46倍の増加だったとのことです。集計によると、6週連続で前週より増加しており、厚生労働省は「4月以降、緩やかな増加傾向が続いている。大型連休の影響もあるので今後の推移を注視したい」との認識を示しています。また、厚生労働省は定点把握への移行に合わせて、新規入院者数という指標も新たに出しはじめました。5月14日までの1週間で新たに入院した人は全国で2330人となっており、前週と比べて55人の減少とほぼ横ばいであることから、厚生労働省は「入院を要する人が急増するような流行状況ではない」としています。
定点把握とは?
今回、厚生労働省が発表した定点把握について教えてください。
中路先生
これまでも季節性インフルエンザで定点把握は実施されてきました。患者数の増減の傾向と水準を把握するために、指定した医療機関の状況を継続的に監視していく方法で、全国約5000の医療機関からの週に1回あげられる報告を集計するものです。
厚生労働省は定点把握に切り替えるにあたり、流行状況の把握が可能かを検証するために、これまでおこなわれてきた全数把握の感染者数と、同じ期間中に定点把握で指定した医療機関から報告された患者数から推計したデータを比較しました。統計上の差のばらつきの幅が10%以内の差であれば許容される範囲としたところ、実際のばらつきの幅は2.5%だったことから全国でも都道府県でも許容される範囲となりました。比較対象とした期間について、定点把握をおこなう約5000の医療機関での1週間ごとの1医療機関あたりの患者数を集計し直して参考として公表し、前週と比較して傾向を分析できるようにしています。
すでに定点把握をおこなっている季節性インフルエンザでは、注意報や警報などの流行に関する基準を設けています。しかし、新型コロナウイルスについてはデータの蓄積がないため、当面は基準を作れないとされています。
定点把握の内容の受け止めは?
今回発表された定点把握では、1医療機関あたりの平均の患者数は2.63人で、厚生労働省は4月以降緩やかな増加傾向にあると指摘しています。この定点把握の内容について受け止めを教えてください。
中路先生
定点把握は今までの全数把握と全く意味合いが異なります。定点の数は1週間あたり何人が1つの病院を受診したかの数です。ある程度の症状がある患者さんが受診するわけで、症状が軽い人や無症状の人は受診せずカウントされません。したがって、数字そのものより、前と比べて増えているか減っているかの傾向を見るようにしましょう。
現在の新型コロナウイルスの傾向は、インフルエンザで言えば流行期にあたり、これから急に増えていく可能性があります。社会活動は再開しつつも、基本的な感染対策が引き続き必要です。
まとめ
厚生労働省は新型コロナウイルスの5類移行に伴って指定した、医療機関からの定点把握による全国の感染状況の数値を初めて発表したことが今回のニュースでわかりました。これまでの全数把握から形式は変わりましたが、流行の度合いなどについては引き続き注目が集まりそうです。