5類移行で「脱コロナ」へ 行動制限がなくなった今、各業界・企業の対応は?
新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5月8日に2類相当から5類に移行し、行動制限に関する法的根拠がなくなりました。新型コロナウイルス対策が個人の判断に委ねられる現状について中路医師に伺いました。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
5類移行後の新型コロナウイルス対策とは?
新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5月8日に2類相当から5類に移行しましたが、移行後の新型コロナウイルス対策について教えてください。
中路先生
新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが、5月8日に2類相当から5類に移行しました。5類移行によって、行動制限に関する法的根拠がなくなり、感染対策は個人の判断が基本となりました。法的根拠が無くなった中での新型コロナウイルスへの対策の目安として、厚生労働省の専門家会合は「五つの基本」を提言しています。これは2023年3月に国立感染症研究所長の脇田隆字氏ら専門家有志によってまとめられました。提言では、5類への移行など見直しがおこなわれた後でも求められる感染症の対策についての見解を「新たな健康習慣」としてまとめた感染対策の五つの基本を示しました。
・五つの基本
①体調不安や症状があるときは自宅で療養するか医療機関を受診すること
②その場に応じたマスクの着用やせきエチケットの実施
③3密を避けることと換気
④手洗い
⑤適度な運動と食事
また、発熱などの症状がある場合には自宅療養や医療機関を受診することや、職場や学校などで休暇を取得しやすい環境整備についても言及されています。高齢者や持病のある人と会うときは体調管理をしっかりとおこなうことも求められました。さらに、5類に移行したことで政府は今後、新型コロナウイルスへの対応が可能な医療機関の段階的な拡大を目指すことになります。入院患者は約8300カ所の施設で最大約5万8000人を受け入れられるよう体制を整備し、外来診療に対応する施設数は約2万増やし、約6万4000カ所を目指すとのことです。
外食産業などの対応は?
新型コロナウイルスが5類に移行した中で、これまで対策を講じてきた外食産業などの対応はどう変わったのでしょうか?
中路先生
5類に移行後、小売りや外食の業界での対応は企業によって分かれています。例えば、コンビニ大手のセブンイレブン・ジャパン、ファミリーマート、ローソンの3社は、これまで従業員に推奨していたマスクの着用については個人の判断としました。また、店の入り口の消毒液やパーティションの設置についても店側の任意としています。
デパート企業の三越伊勢丹ホールディングスと大丸松坂屋百貨店は、従業員のマスク着用について個人の判断として、客が入店時におこなっていた機械による検温はやめることになりました。高島屋では、入店時の機械による検温はとりやめますが、従業員のマスクの着用は当面、継続するとのことです。
外食を巡っては、すき家などを展開するゼンショーホールディングスは、従業員のマスクの着用を任意にして、座席のパーティションをすべて撤去することを決めました。一方で、牛角などを展開する外食チェーンのコロワイドは、従業員のマスクの着用を続けるとのことです。
5類移行後に気をつけるべき点は?
新型コロナウイルスが感染症法上の5類に移行されましたが、私たちが生活する上でどのようなことに気をつければいいか、医師の観点からアドバイスをお願いします。
中路先生
新型コロナウイルスが5類に移行しても、感染状況が変わるわけではありません。現在も感染者数は微増傾向にあると言われており、またいつ大きな感染の波が来て重症者や死亡者が増加するか不明なため、同じ5類のインフルエンザと同じようには扱えません。過度に新型コロナウイルスを恐れる必要はなくなりましたが、重症化リスクのある人を守るためにも、個人が必要な感染対策をおこなっていくことが重要です。
まとめ
新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5月8日に2類相当から5類に移行し、行動制限に関する法的根拠がなくなったことが今回のニュースでわかりました。新型コロナウイルス対策が個人の判断に委ねられる中で、状況に応じた対応が求められることになります。