新型コロナ第9波「第8波より大規模の可能性」専門家会合が指摘
厚生労働省の専門家会合の有志は、第8波を超える規模の第9波が起きる可能性を文書で示しています。このニュースについて郷医師に伺いました。
監修医師:
郷 正憲(医師)
専門家会合で議論された内容とは?
4月19日に開催された厚生労働省の専門家会合は、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に変更される前の最後の定期開催となりました。今回議論された内容について教えてください。
郷先生
4月19日に開催された厚生労働省の専門家会合では、現在の新型コロナウイルスの感染状況について「感染が下げ止まった後は全国的に緩やかな増加傾向となっており、特に大都市部で20代や10代以下の感染者数増加がみられる」との見解を示しました。また、「これまでの傾向を踏まえると、他人との接触機会が多くなるゴールデンウィークが明けた後に感染が拡大した後にいったん減少して、再び夏に向けて感染拡大する可能性がある」とも指摘しています。
さらに専門家会合では、ワクチンや感染によってできた免疫が時間とともに下がっていく、免疫を回避する新たな変異ウイルスの割合が増えることなどについての注意喚起をしました。専門家会合は、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが「5類」に移行される中でも地域での流行状況に関心を持ち、自主的に感染を防ぐための行動を取って特に重症化リスクの高い高齢者に感染が及ばないようにする配慮が重要だとしています。
この専門家会合は2020年2月に設置されて以降、定期的に開かれてきましたが、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが5類に移行することに伴い、今後は感染状況に応じて不定期で開かれることになります。
第9波への言及は?
専門家会合では第9波への言及もされましたが、どのような内容が示されたのでしょうか?
郷先生
第9波への懸念は、厚生労働省の専門家会合の有志がまとめた文書で示されました。文書では「新型コロナウイルス対策の緩和が進む中で、感染者数が増加に転じる地域が増えてきていることから、今後第9波が起きる可能性は高い」としています。
そして、国内における感染によって獲得した免疫を持つ人は、2月から3月におこなわれた調査で32.1%と割合が低くなっていることなどから、第8波よりも大きな規模になる可能性が残されているとしています。仮にワクチンの接種率が上がらないまま大規模な感染拡大が起きると、死亡者数は高齢者を中心に海外と比べて多い状況で推移する可能性があるとも警告しています。
第9波の言及への受け止めは?
専門家会合の有志による文書で警告された第9波についての受け止めを教えてください。また、私たちが気を付けるべきポイントも教えてください。
郷先生
第8波が小康状態になってから、安定して感染者数は少数で落ち着いている状況がしばらく続いています。感染者数の全数把握を終了したので正確な数は分かりませんが、そのほかの指標である重症者数や下水中のウイルス量測定などの指標でも小康状態は続いており、ひとまず現在は安心していいのではないでしょうか。
一方で、アフターコロナとして経済活動が活発化して外国人旅行客も増えたことに加え、マスクの着用を個人の判断に求めるという指針から、マスクの着用率も低下しているようですから、感染が起こりやすい環境にある事は間違いないでしょう。実際、4月の中旬頃から新規感染者数は一時増加に転じました。しかし、これまでの波と違い、この増加によって第9波が始まるかと思われましたが、いったん上昇した後すぐに減少に転じ、今のところ継続的な上昇を見せそうな印象はなさそうです。これは症状があるのに検査をおこなっていない人の割合が増加したからであるとか、無症状感染者が増えたからではないかと言われていますが、正確な理由は分かっていません。ほかの指標も特に上昇を見せていませんので、実際に感染者数は増加していないと想定されます。
これはひとえに、ワクチン接種に加えて既に感染した人が増加して、免疫を持っている人がかなりの割合となったからと一般に考えられています。つまり、「集団免疫」が確立しつつあるからということです。そのため、第9波が到来したとしても第8波より大きな波にはならないのではないかという意見も多くあります。もちろん、変異株の出現などで状況は一変するかもしれませんので、注意は必要です。
また、もう1つ注意が必要なのが小児です。小児のワクチン接種率は低く、既感染率も低いですから、1人の感染がクラスターを発生させる可能性が非常に高いと言われています。小児が発熱した場合はすぐに検査をして、必要に応じて感染対策を強化する必要があると言えるでしょう。
まとめ
厚生労働省の専門家会合の有志は、文書で「第8波を超える規模の第9波の可能性がある」と示しました。5月には新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが「5類」に移行されますが、引き続き感染の警戒は必要そうです。