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国内初の新型コロナウイルス飲み薬「モルヌピラビル」の一般流通が開始

 更新日:2024/03/08
新型コロナ飲み薬「モルヌピラビル」 一般流通開始

9月16日から、新型コロナウイルスの飲み薬「モルヌピラビル」の一般流通が開始しました。このニュースについて甲斐沼医師に伺いました。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

今回取り上げるニュースとは?

まず、今回取り上げるニュースの内容について教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼先生

新型コロナウイルスに対する経口治療薬である抗ウイルス薬モルヌピラビルについてのニュースです。モルヌピラビルはアメリカのメルク社とリッジバック・バイオセラピューティクス社と共同で開発した薬で、2021年12月24日に厚生労働省が特例承認しています。モルヌピラビルを製造するメルク社の子会社のMSD社は、9月16日からモルヌピラビルの一般流通を開始しました。元々は安定した供給が難しいため厚生労働省が保有した上で、必要な医療機関や薬局に分配されてきましたが、安定供給できる体制が整ったため通常の医薬品と同様に卸売販売業者を通じての購入が可能になったとのことです。

現在、厚生労働省が所有している分は、新型コロナウイルスの重症化リスク因子を持っていて、医師が必要と判断した患者に投与できることになっています。一方で新たに始まった一般流通品は、臨床試験における主な投与経験を踏まえて、新型コロナウイルスによる感染症の重症化リスク因子を持っているなど、投与が必要と考えられる患者に使用できることになります。また、医師の判断で重症化リスク因子のない患者でも高熱や呼吸器症状などの症状を呈し、重症化の恐れのある場合には投与可能となります。ただし、一般流通する薬品も従来から厚生労働省が所有している薬品と同じく、処方する際には担当医から有効性や安全性などの説明を受けることと、患者もしくは代諾者からの同意書を取得する必要があります。

モルヌピラビルとは?

今回取り上げるモルヌピラビルについて教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼先生

モルヌピラビルは、重症化リスクが高い軽症・中等症の新型コロナウイルス患者に対する国内初の経口薬です。投与対象は18歳以上の軽症・中等症の新型コロナウイルス患者のうち、高齢者や肥満などの重症化リスクを持っている患者であり、新型コロナウイルスが発症してから5日以内に服用を始める必要があります。なお、妊婦や妊娠している可能性のある女性には使うことはできません。

重症化リスクのある新型コロナウイルス患者1433人を対象に臨床試験をおこない、有効性と安全性を検証・解析しました。その結果、発症5日以内の治療開始での入院・死亡例は、偽薬を投与したグループが9.7%なのに対して、モルヌピラビルを投与したグループは6.8%となり、相対リスクが30%低くなる結果が出ました。また、全体での死亡例は偽薬を投与したグループでは1.3%、モルヌピラビルを投与したグループでは0.1%と、モルヌピラビルを投与した方が少なくなりました。

一般流通が開始されたことへの期待感は?

モルヌピラビルが一般流通することでどのようなことが期待できるのでしょうか?

甲斐沼孟医師甲斐沼先生

モルヌピラビルは、新型コロナウイルスの増殖を阻害することで、世界中の人々の生命を救うことが期待されています。世界中で新型コロナウイルスとの闘いが続く中、早期の診断および投薬の重要性が叫ばれてきましたが、今回の一般流通開始によって医療機関や薬局は迅速にモルヌピラビルを購入することができるようになりました。医師がモルヌピラビルの投与が必要と判断する患者に対して確実に投与することが可能になり、人類に希望をもたらすことになると信じています。

まとめ

新型コロナウイルスの飲み薬「モルヌピラビル」を製造しているMSDが、9月16日からモルヌピラビルの一般流通を開始したことが今回のニュースでわかりました。投与が必要とされる患者に対して迅速な投与の可能性が増えることに注目が集まっています。

この記事の監修医師