【新型コロナワクチン】5~11歳への接種「努力義務」適用へ、3回目接種も開始
9月6日、厚生労働省は5~11歳の新型コロナウイルスワクチン接種について、予防接種法に基づいて協力を求める「努力義務」の適用を自治体に通知しました。このニュースについて武井医師に伺いました。
監修医師:
武井 智昭(医師)
日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属
厚生労働省がおこなった通達の内容とは?
今回、厚生労働省がおこなった通達の内容について教えてください。
すでに5~11歳への新型コロナウイルスのワクチン接種が開始されていて、対象者は700万~800万人ほどと言われています。接種開始当初、予防接種法に基づく接種の努力義務は保護者に課されていませんでした。ところが、厚生労働省は9月6日に開かれた自治体向けの説明会で、「5~11歳へのワクチン接種について、予防接種法に基づく接種の努力義務の適用を開始する」と伝えました。
努力義務とは、法的な強制力や罰則はありませんが、「接種をするよう努めなければならない」とする予防接種法の規定です。説明会では、努力義務の適用についての説明のほか、5~11歳までの子どもの3回目接種が9月6日付けで正式に開始されたことも伝えられました。3回目接種の対象になるのは2回目接種から5カ月以上経過した子どもで、厚生労働省は速やかに希望者への接種を開始するよう自治体に求めました。
5~11歳へのワクチン接種については、12歳以上を対象にしたワクチンに比べると1回に接種する有効成分の量は3分の1と少なく、3週間の間隔で2回接種を受けることになります。学校での集団接種は推奨されていないため、自治体による集団接種か小児科のクリニックなどでの個別接種とする方針が立てられています。使用するワクチンはファイザー製で、基礎疾患を有しているといった重症化リスクの高い子どもの接種が優先されます。なお、費用は臨時接種に位置付けられているため公費で無料となります。
5~11歳へのワクチンの効果は?
5~11歳に対するワクチンの効果について教えてください。
ファイザー社がFDA(アメリカ食品医薬品局)に提出した5~11歳の2268人が参加した臨床試験の資料によると、「12歳以上が接種する3分の1の有効成分量を2回、3週間の間隔を空けて接種したグループは3人が新型コロナウイルスを発症しましたが、同じ間隔で偽薬を接種したグループでは16人が発症した」という結果でした。臨床試験によるワクチンの有効性は、90.7%ということになりました。
また、ワクチン接種をして新型コロナウイルスに感染した子どもたちは症状も軽く済み、深刻な副反応も起きなかったそうです。ただし、ニューヨーク州の保健当局などの別の研究チームが公開した研究結果によると、「ファイザー製ワクチンを接種した5~11歳はオミクロン株が主流となった2021年12月中旬の時点で感染を防ぐ効果が68%でしたが、2022年1月下旬では12%と大幅に低下していた」とのことでした。5~11歳で感染を防ぐ効果が大幅に低下した理由について、研究チームは「接種するワクチンの成分の量が3分の1と、少ないことが影響している可能性がある」と指摘しています。
努力義務の適用について受け止めは?
5~11歳へのワクチン接種に対して努力義務が適用されたことについての受け止めを教えてください。
たしかに、子どもで重症化した症例は極めて少ないのが現状です。その一方で、基礎疾患がある家族(年齢問わず)と生活をする人への配慮として、努力義務は接種促進という観点から必要な対応であったと思われます。ただし、実際に接種するかどうかは、保護者・本人の意見を踏まえて最終的に判断をするようにしてください。
まとめ
厚生労働省が、5~11歳への新型コロナウイルスワクチン接種について、予防接種法に基づいて協力を求める努力義務の適用を自治体に通知したことが今回のニュースでわかりました。努力義務については、法的な強制力や罰則はなく、あくまでも接種を受けるよう努めるというものであることの周知も重要になりそうです。