【新型コロナワクチン】3回目接種 BA.5に65%の予防効果「未接種者も速やかに接種を検討することが重要」
国立感染症研究所の研究チームは、新型コロナウイルスの新しい系統で現在流行している「BA.5」に関して、「ワクチンを3回接種した14日後から3カ月における発症予防効果が65%あった」との推計を発表しました。このニュースについて武井医師に伺いました。
監修医師:
武井 智昭(医師)
日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属
国立感染症研究所による発表内容とは?
今回、国立感染症研究所が発表した推計について教えてください。
国立感染症研究所は、関東地方の7つの医療機関を受診した16~93歳の男女1547人を対象に調査を実施しました。ワクチン接種歴については、未接種者は197名で全体の12.8%、1回接種した人は0.5%の8名、2回接種した人は30.6%の471名、3回接種した人は56.1%の864人でした。
研究チームがワクチンの有効率を算出したところ、BA.5流行期において、ワクチンの2回接種後5カ月以降では35%という有効率が出ました。そして、3回接種した14日後から3カ月では65%、3回接種後3カ月以降では54%という有効率になったとのことでした。一方、BA.1やBA.2が流行した時期では、2回接種後5カ月以降では46%、3回接種した14日後から3カ月では72%、3回接種後3カ月以降では71%という有効率が算出されており、「BA.1やBA.2に比べてBA.5へのワクチンの有効性が低い」という結果が出ています。
研究チームは、今回の報告を受けて「BA.5流行期においては、2回接種後5カ月後には発症予防効果は低程度である一方、3回接種により発症予防効果が中~高程度まで高まる可能性が示された。また、2回接種と比較した3回接種の相対的な有効率についても同様に、一定程度見込まれることがわかった」と考察しています。また、研究チームは発表した文書の中で「未接種者も速やかに接種を検討することが重要である」と述べつつ、「度重なる免疫逃避能を有する変異株の出現および免疫の減衰の可能性から、オミクロン株を含めた変異株に対応したワクチンの早期の開発および導入が待たれる」と記述しています。
「オミクロン株対応ワクチン」とは?
国立感染症研究所がワクチンの有効率をHPで公表した際に考察部分で言及した、「オミクロン対応ワクチン」について教えてください。
WHO(世界保健機関)によると、これまで使用されてきたワクチンでもオミクロン株を含む全ての新型コロナウイルスに対して高い重症化予防効果があるとされています。ただし、従来のワクチンではオミクロン株への感染や発症予防の効果が低く、打ってから時間が経つと効果が弱まる懸念があり、オミクロン株対応のワクチンの開発を進められてきました。
2022年6月には、ファイザー社がFDA(アメリカ食品医薬品局)に臨床試験の結果を提出しました。臨床試験では、「56歳以上を対象にBA.1対応型ワクチンを4回目の接種で使用すると、従来型ワクチンを4回目に接種した人と比べてオミクロン株の派生型BA.1に対してウイルスの働きを抑える中和抗体の値が平均で1.56倍から1.97倍上昇した」ことが示されました。また、現在流行しているBA.5に対しては「BA.1には劣るものの、中和抗体の値の上昇がみられた」と報告されました。加えて、モデルナ社の臨床試験では「従来のワクチンと比較して、BA.1に対して平均で1.75倍上昇を示した」と報告されています。なお、ファイザー・モデルナ両社は8月に「FDAに緊急使用の許可を求める申請をおこなった」と発表しています。
今回の発表内容への受け止めは?
国立感染症研究所が、「BA.5に対する発症予防効果は、ワクチンを3回接種した14日後から3カ月では65%であった」とする推計結果についての受け止めを教えてください。
オミクロン株対応の2価ワクチンが導入予定ではありますが、基礎疾患がある人や高齢者は現在のワクチンでも十分に予防効果・重症化予防は期待できるため、接種を検討しいただければと思います。
まとめ
国立感染症研究所が、新型コロナウイルスのBA.5に関して、ワクチンを3回接種した14日後から3カ月における発症予防効果が65%あったとの推計を発表したことが今回のニュースでわかりました。発表の考察ではオミクロン株対応型ワクチンにも言及されており、今後のワクチン開発の動向についても引き続き注目が集まりそうです。