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WHO「60歳未満の健康な成人は追加接種推奨しない」コロナワクチン新指針

 公開日:2023/04/10
WHOが新型コロナワクチンについて新指針公表

3月28日、WHO(世界保健機関)は新型コロナウイルスのワクチン接種をめぐり、60歳未満の健康な成人にはこれ以上の追加接種を推奨しない立場を明らかにしました。このニュースについて郷医師に伺いました。

郷 正憲医師

監修医師
郷 正憲(医師)

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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、ICLSコースディレクター、JB-POT。

WHOが示した新しい指針とは?

今回、WHOが示した予防接種に関する新指針の内容について教えてください。

郷 正憲医師郷先生

今回取り扱うのは、3月28日にWHOのSAGE(予防接種に関する戦略的諮問委員会)が公表した新しい指針についてのニュースです。SAGEは、新型コロナウイルスに対するリスクの程度を「高」「中」「低」の3つに分類していています。この中でリスクが「高」に該当する人は、高齢者や若くても糖尿病などの基礎疾患がある成人、免疫不全の人、妊婦、第一線の医療従事者としており、該当する人々には引き続きワクチンの追加接種を推奨しています。

60歳未満の健康な成人、基礎疾患があっても子どもや若者などがリスク「中」とされており、通常の2回接種を済ませた後の1回の追加接種は推奨しています。2回以上の追加接種に関しては「安全に問題はなく、深刻な症状や死の危険に対して効果はある」と指摘していますが、「得られる効果は実際にはかなり少ない」とも述べられています。こうした観点からリスク「中」の集団については、もはや追加接種を勧めることはないと結論付けられました。

リスクが「低」とされたのは、生後6カ月から17歳までの赤ん坊や未成年でした。

新しい指針への受け止めは?

WHOが出した新しい指針に対する受け止めを教えてください。

郷 正憲医師郷先生

WHOがこのような指針を発表した背景には、多くの国で新型コロナウイルスのワクチン接種あるいは感染によって免疫を得た人が多数を占めるようになったため、国によって方針を変更することの根拠を示すためというものがあります。このことによって、既に免疫を多数が得ている国はワクチンを追加で必要とすることがなくなり、一方でまだ免疫を獲得していない人が多い国にはワクチンを分配しやすくするという効果を期待している面もあります。リスクを層別化することで今後のワクチン接種の方針を各国が決めやすくなり、安定したワクチン供給と感染対策の適正化を狙っていると考えられます。

日本国内にどのような影響が出る可能性が?

国内ではオミクロン株に対応した現行の接種が5月7日に終了しますが、その後は年末年始の感染拡大に備えて65歳未満で基礎疾患のない人への接種が9月以降に再開される予定になっています。WHOが示した今回の新しい指針が日本国内にどのような影響を与える可能性があるのかを教えてください。

郷 正憲医師郷先生

今回のWHOの指針を踏まえて、日本でもワクチン接種の方針に変更が加えられる可能性があります。既に日本では抗体のでき方からみて、約4割の人が既に感染していて、8割以上の人が2回以上のワクチン接種を完了しているとされています。しかし、3回目のワクチン接種についてはまだの人が4割いるとされており、この中でまだ感染していない人が十分に抗体を持っているのか、また2回ワクチンを接種しているだけでは本当に免疫が不十分なのか、今後検討される必要があるでしょう。

さらに、小児に関しては感染率、ワクチン接種率のいずれも低い状態がまだ続いていると言われています。先ほどの指針は前提として集団の8割以上に免疫が存在する場合、感染症の広がりが抑えられる、あるいは感染しても軽微な症状で済むという前提の下に提言されている指針ですから、日本の小児にはこの条件が当てはまりません。小児は重症化率が低いとはいえ、現段階では保育園や学校などでクラスターが発生しやすく、感染者数が増加すると重症化したり死亡したりするケースはどうしても出てきてしまいます。今後、高齢者やリスクの高い人、あるいは希望者のみの接種に限定されるようになるとは思いますが、小児接種に関しては議論が続くものと思われます。

まとめ

3月28日、WHOは新型コロナウイルスのワクチン接種をめぐり、60歳未満の健康な成人にはこれ以上の追加接種を推奨しない立場を明らかにしたことが今回のニュースでわかりました。日本国内にどのような影響が出るのか、今後も注視が集まります。

この記事の監修医師