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新型コロナウイルス患者へのレムデシビル、最終解析結果を公表

 更新日:2023/03/27
コロナ患者へのレムデシビル 最終解析結果を公表

WHO(世界保健機関)は、2020年3月から実施している新型コロナウイルスに対する既存の抗ウイルス薬4剤の転用を検討する連帯治験におけるレムデシビルに関する最終解析結果を医学雑誌「The Lancet」に報告しました。このニュースについて武井先生にお話を伺います。

武井 智昭 医師

監修医師
武井 智昭(医師)

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平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。
日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属

レムデシビルとは?

まず、レムデシビルについて教えてください。

武井 智昭 医師武井先生

本来、レムデシビルはエボラ出血熱向けに開発された抗ウイルス薬です。ただ、海外で実施された臨床試験で重症化リスクを持つ軽症や中等症の新型コロナウイルス患者にレムデシビルを投与したところ、偽薬を投与したグループに対して入院・死亡リスクを9割近く低下させたというデータが出たことから、日本では2020年5月に新型コロナウイルスの治療にも使えるよう特例承認されています。2022年4月にFDA(アメリカ食品医薬品局)は、12歳未満で体重3.5kg以上の小児患者さんに対して入院している、もしくは入院しておらず軽度から中等度の新型コロナウイルスであり、入院や死亡を含む重症化リスクが高い場合に適応を認めています。

WHOによる報告の内容とは?

WHOによる報告内容について教えてください。

武井 智昭 医師武井先生

今回の治験は、最終解析までに35カ国454施設が参加しました。レムデシビルに関する試験への登録は、試験薬のグループと対照のグループを合わせて8275例となりました。解析の結果、全体の院内死亡率は対照グループの15.6%に対し、レムデシビルを投与したグループでは14.5%となり、死亡率比は0.91でした。また、換気療法を施行済みの重症患者の院内死亡率は、対照グループは38.6%でしたが、レムデシビルを投与したグループでは42.1%となり、これらの比較ではレムデシビル投与による院内死亡率の有意な低下は認められなかったという結果が出ています。換気療法は施行していないが酸素投与はしている患者5839例の院内死亡率は、対照グループの16.3%に比べてレムデシビルを投与したグループでは14.6%でした。酸素を投与していない例の1730例では、対照グループの3.8%に対してレムデシビルを投与したグループでは2.9%でした。換気療法を施行していない例を総合すると、院内死亡率は対照グループの13.5%に対してレムデシビルを投与したグループでは11.9%になりました。研究者らは「換気療法施行済みの新型コロナウイルス患者においては、レムデシビルの有意な効果は認められなかった」と結論づけています。

報告に対する受け止めは?

今回報告されたWHOの連帯治験におけるレムデシビルに関する最終解析結果について受け止めを教えてください。

武井 智昭 医師武井先生

レムデシビルの効果は、大規模試験では明らかにはなりませんでした。今後は、ほかの治療薬を含めた有効性を大規模に検証していく必要があると考えます。

まとめ

WHO が、レムデシビルに関する連帯治験での最終解析結果を医学雑誌「The Lancet」に報告したことが今回のニュースで明らかになりました。研究者らは「現在使用されている経口抗ウイルス薬や免疫調節薬、抗体医薬は、レムデシビル連日投与と比べ新型コロナウイルスに対して効果的かつ簡便、安価な可能性があり、大規模ランダム化試験で比較する必要がある」ともコメントしています。

この記事の監修医師