FOLLOW US

目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. NEWS
  3. 新型コロナによる死者、ワクチン接種で「90%減少」京都大の研究チーム推計

新型コロナによる死者、ワクチン接種で「90%減少」京都大の研究チーム推計

 公開日:2023/12/01
新型コロナワクチンによって死者9割以上減と推計

京都大学らの研究グループは、「新型コロナウイルスワクチンの接種によって、国内の2021年2~11月の感染者と死者をいずれも90%以上減らせた」との推計結果を発表しました。この内容について中路医師に伺いました。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

プロフィールをもっと見る
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

研究グループが発表した内容とは?

今回、京都大学らの研究グループが発表した内容について教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

京都大学らの研究グループは、新型コロナウイルスワクチンの接種の効果がどの程度あったのかを検討しました。研究結果は、イギリスの学術雑誌「Scientific Reports」に掲載されています。

日本では2021年2月から新型コロナウイルスのワクチン接種が始まりましたが、効果の検討はこれまで十分におこなわれていませんでした。研究グループは、1、2回目の接種をしていた2021年2月17日~11月30日を対象に、「接種した人が増加するペース」「当時主流だったデルタ型の感染力」「別の研究で示されていたデルタ型に対するワクチンの効果」「人の移動の活発さ」などのデータを分析しました。そして、様々な条件の下で、感染者数や死者数がどう変化するかを調査しました。なお、対象期間の感染者数は抗体保有率のデータから470万人と計算しています。研究の結果、ワクチン接種によって感染者数を92.6%、死者数を97.2%減らせたという推計が導かれました。ワクチンを接種した人の感染が防げると、その人が感染させる人も減る効果が特に大きかったとのことです。

研究グループの西浦博教授は「結果的にワクチン接種は上手くいったと言えるが、それで終わりにしてはいけない」と指摘し、「将来の感染症対策のためにはワクチン接種を進めつつ、感染状況の推移をリアルタイムで予測して、政策を決める人や社会に示せる仕組みが必要だ」と話しています。

新型コロナウイルスワクチンの今後の接種は?

厚生労働省が新型コロナウイルスのワクチン接種について決めた方針について教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

厚生労働省は2023年9月8日に開かれた専門家部会で、新型コロナウイルスのワクチン接種について議論をおこないました。新型コロナウイルスのワクチン接種は現時点では、予防接種法上の臨時接種に位置付けられているため、接種費用については全額公費で実施されています。専門家部会は、新型コロナウイルスがオミクロン株になってから、重症化率が低下していることや感染症法上で5類に移行したことなどから、「まん延予防上緊急の必要がある」状況にはないと判断されました。2024年度以降、65歳以上の高齢者らはインフルエンザなどと同じく公費助成で無料、もしくは低額で受けられる定期接種の扱いとして、それ以外は希望者が自己負担で受ける任意接種とする方向で検討しています。

また、専門家部会は新型コロナウイルスのワクチン接種の目的を重症化予防と位置付け、これまで年末年始に比較的大きな感染拡大を繰り返していることから、接種時期を秋冬とする案を示しました。使用するワクチンは流行する変異株に応じて毎年見直すという考えを示しています。専門家部会は今後も検討を進め、2023年中にも最終的な方針を取りまとめる予定です。

今回の発表内容への受け止めは?

京都大学らの研究グループが発表した内容についての受け止めを教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

これまで、「新型コロナウイルスワクチンの接種率の違いで死亡率に大きな差がある」などのワクチンが死亡率を低下させるという論文は欧米で多くありましたが、日本からの論文は少ないのが実情でした。今回、京都大学らのグループが日本人を対象にワクチン接種が新型コロナウイルスによる死者を大幅に減少させるエビデンスを英語論文で海外に発信できたことは、大変有意義なことであると考えられます。もちろん、当時の人の移動制限の影響やデータの解析方法などに関わる限界はありますが、今後もオミクロン流行期での同様の研究が期待されます。

まとめ

京都大学らの研究グループは、新型コロナウイルスワクチンの接種によって、国内の2021年2~11月の感染者と死者をいずれも90%以上減らせたとの推計結果を発表しました。国全体で進めたワクチン接種体制ですが、その成果が科学的に示されたことについては大きな注目を集めそうです。

この記事の監修医師