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ファイザー製コロナ飲み薬、重症化予防効果37%にとどまる 臨床試験結果の88%よりも低く

 公開日:2023/09/29
ファイザーのコロナ飲み薬、実臨床での重症化予防効果が臨床試験時を下回る

ファイザー製の新型コロナウイルスの飲み薬「パキロビッド」が、重症化リスクの高い患者の入院または死亡を予防する効果が37%にとどまることが実際の臨床現場のデータを分析した研究で明らかになりました。このニュースについて、中路医師に伺いました。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

実臨床データによる研究内容とは?

新型コロナウイルスの飲み薬に関する研究内容について教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

今回紹介するのは2023年9月21日にアメリカの医学誌「JAMA Network Open」に発表された研究についてです。この研究はファイザー製の新型コロナウイルスの飲み薬「パキロビッド」とメルク製の「ラゲブリオ」について実臨床での有効性について調べています。

研究では2022年から2023年初めを対象期間として、アメリカのオハイオ州の医療機関クリーブランド・クリニックの数千人の患者の電子健康記録を解析しています。その結果、パキロビッドは重症化リスクの高い患者の入院または死亡を予防する効果が37%にとどまるという結果が出ました。これはファイザーとFDA(アメリカ食品医薬品局)が2021年の臨床試験の結果として報告していた88%よりもかなり低い結果です。ただし、死亡に限って解析すると予防効果は84%となり、改めて高い効果を確認しています。

研究グループは、臨床試験は限定的な自然免疫しか持たないワクチン未接種者が対象だったのに対して、今回の研究ではワクチン接種済みの人や、以前にも感染したことがある患者なども含まれる点を指摘しています。また、パキロビッドの臨床試験当時はデルタ株が主流でしたが、今回の研究の対象期間はオミクロン株が主流だったことにも言及しています。メルク製のラゲブリオについても、実臨床での有効性は入院または死亡の予防効果が42%、死亡に限定した予防効果が77%という結果になりました。

「パキロビッド」とは?

今回の研究対象となったパキロビッドについて教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

重症化リスクのある新型コロナウイルスの患者を対象としたパキロビッドの臨床試験では、入院または死亡のリスクが発症後3日以内に投与した場合は89%、5日以内では88%減少したという結果が出していました。パキロビッドの服用対象は12歳以上の新型コロナウイルスに感染した人で、かつ重症化リスクのある患者です。2種類の薬を1日2回、5日間服用します。服用開始のタイミングは発症後、5日以内にできるだけ早くとされています。

添付文書では、HIVに感染している人や腎機能や肝機能に障害のある人、妊婦、授乳中の女性などは服用に注意するか、服用しないよう求めています。また、厚生労働省は、高血圧や脂質異常症、不眠症などの治療に使われる39種類の薬や食品を使用している人に対してはパキロビッドパックの服用を認めていません。

今回の研究内容への受け止めは?

今回の研究内容では、臨床試験よりも実臨床の方が重症化リスクの高い患者の入院または死亡を予防する効果が低く出ました。この結果についての受け止めを教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

あらゆる分野の研究において、治験時とリアルワールド(実臨床)のデータはその対象が異なることなどにより、有効性などに差が出ることがあります。今回のパキロビッドの関するデータでも治験時より全体の予防効果は低い結果となりました。しかし、死亡に限ると高い予防効果を保っており、最終的な目標である重症化による死亡を回避できる点では、引き続き我々が新型コロナウイルスと対峙して上では有効な手段と考えられます。特に「高リスク患者」に対しては推奨されるものと考えられます。

まとめ

ファイザー製の新型コロナウイルスの飲み薬「パキロビッド」が、重症化リスクの高い患者の入院または死亡を予防する効果が37%にとどまることが、実際の臨床現場のデータを分析した研究で明らかになりました。予防効果の数字が低くなったとはいえ、研究グループは「新型コロナウイルスとの闘いでは引き続き有効な手段であり、重症化を防ぐために入院前の患者に使うことができる」との見解を示しています。

この記事の監修医師