中学・高校・大学男子の運動能力が低下 コロナ禍が影響か
10月8日、スポーツ庁は2022年度の「体力・運動能力調査」の結果を公表し、中学・高校・大学生など男子の一部年代で、運動能力が新型コロナウイルス流行とほぼ同時期に低下傾向であったことが明らかになりました。この内容について丹下医師に伺いました。
監修医師:
丹下 仁志(医師)
スポーツ庁が発表した内容とは?
10月8日にスポーツ庁が公表した2022年度の「体力・運動能力調査」の結果について教えてください。
スポーツ庁が公表した「体力・運動能力調査」は、1964年から毎年実施されています。今年度の対象となったのは全国の6~79歳で、握力や上体起こしなど6~8項目の体力テストのほかに運動習慣なども調べており、2022年度はおよそ5万6000人分のデータが得られています。
2023年10月8日に公開された結果では、体力テストの各項目を数値化して合計した「体力合計点」が、男子は19歳までの年代の多くで前の年度を下回ったことが明らかになりました。前年度を100%とした場合に、9歳では98.4%、13歳では98.8%、16歳では97.1%、19歳では93.0%と、それぞれ低くなっています。ここ数年、19歳までの男子では低下傾向の年代があり、調査結果を分析した順天堂大学大学院の内藤久士教授は「運動部の子どもの割合が高く運動をよくしている世代は、コロナ禍で部活動が制限された影響を受けているのではないか」とコメントしています。一方、2013年度からの10年間では、男女ともに多くの年代の合計点が横ばいか、向上傾向にあります。ただし、40代の女性は低下傾向が続いており、この年代の女性は週に1日未満、かつ30分未満しか運動しない人が54%に上っていました。
スポーツ庁は「スポーツを通じたライフパフォーマンスの向上を目指して、環境整備や普及啓発などに取り組みたい」としています。
体力低下傾向が続く問題とは?
今回の調査で、中学・高校・大学生など男子の一部年代で、新型コロナウイルス流行とほぼ同時期に低下傾向だったことが明らかになりました。この体力の低下傾向が続くことで、どのような問題が起こり得るのでしょうか?
子どもたちの体力の低下は、将来的に国民全体の体力、運動能力の低下につながる可能性があります。肥満や高血圧、脂質異常症のような生活習慣病といった健康障害の増加や、それに伴う医療費負担の増加につながりかねず、社会全体への影響が考えられます。また、運動習慣や体力はストレスの解消や精神面の安定にも寄与するため、メンタルヘルスへの影響も危惧されます。さらに、体力の低下によって机に座った姿勢が維持できなくなり、学力の低下につながる恐れもあります。
今回の発表内容への受け止めは?
10月8日にスポーツ庁が公表した2022年度の「体力・運動能力調査」の結果についての受け止めを教えてください。
体力は精神・身体の健康と密接に結びついており、子どもたちの体力低下によって社会全体の活力の低下や将来の健康障害につながりかねません。これにはコロナ禍での活動制限、スマホ・タブレット・パソコンの使用によるスクリーンタイムの増加などによる運動習慣の減少が影響している恐れがあります。今回の体力や運動能力の低下傾向が続いているという報告を受けて、子どもたちの運動習慣や生活習慣を見直す良い機会にしていただければと思います。
まとめ
10月8日、スポーツ庁は2022年度の「体力・運動能力調査」の結果を公表し、中学・高校・大学生など男子の一部年代で、運動の力が新型コロナウイルス流行とほぼ同時期に低下傾向だったことが明らかになったことがわかりました。新型コロナウイルスによる部活動の制限が指摘されており、その影響の大きさが改めて浮き彫りになった形となりました。