1歳からテレビ・動画の視聴時間が長いと発達遅れに 千葉大学らの研究
千葉大学らの研究グループは、「乳幼児期におけるメディア視聴時間と子どもの発達の関係」を調査した結果、1歳からメディア視聴時間が長いと子どもの発達スコアが低くなる関連が認められたと発表しました。この内容について武井医師に伺いました。
監修医師:
武井 智昭(高座渋谷つばさクリニック)
平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。
日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属
目次 -INDEX-
研究グループが発表した内容とは?
千葉大学らの研究グループが発表した内容について教えてください。
今回紹介する研究は、千葉大学らの研究グループが学術誌「JAMA pediatrics」に投稿したものです。対象者は全ての質問票に回答した自閉症スペクトラムではない5万7980人です。まず、メディア視聴時間を5つに区分し(1日あたり0時間、1時間未満、1時間以上2時間未満、2時間以上4時間未満、4時間以上)、発達スコアについては1歳、2歳、3歳の時点で検討しました。また、発達スコアは5つの指標(コミュニケーション、粗大運動、微細運動、問題解決、個人‐社会)で検討しました。その結果、1、2、3歳の各年齢でのメディア視聴時間と、5つの領域すべてを合計した発達スコアとの関連を検討したところ、メディア視聴時間が長い方が、1年後の発達スコアが低くなることが分かりました。さらに、メディア視聴時間が長いと、1年後のメディア視聴時間も長くなる傾向も見られました。子どもの発達スコアを高くする育児環境要因としては、年上の兄弟、保育園の利用、子どもへの読み聞かせが挙げられます。
研究実施の背景は?
千葉大学らの研究グループは、メディア試聴時間と発達スコアへの関連を検討しましたが、なぜこうした研究を実施したのでしょうか。
千葉大学は今回の研究に関するプレスリリースの中で、「テレビやスマートフォンなど多数のメディア機器が生活の中に溢れる中で、メディア機器が子どもの成長にもたらす影響の評価は重要だと考えられる」と位置付けています。これまでの研究で、メディア視聴時間が長い子どもは発達が遅くなる関連が報告されていたものの、従来の解析では「メディア視聴時間が長いから発達が遅くなる」のか「発達が遅い子はメディア視聴時間が長くなりやすい」のかを分けて検討することができませんでした。そんな中、カナダで行われた先行研究で「2、3、5歳のメディア視聴時間と発達を比べた結果、メディア視聴時間が長いと発達スコアが低くなる」と報告がありました。千葉大学の研究グループは、より低い年齢でもそのような傾向があるのか、国が違っても同様の傾向を示すのかを明らかにするために今回の研究を実施しています。
発表内容への受け止めは?
千葉大学らの研究グループの発表に対する受け止めを教えてください。
近年は動画コンテンツの媒体や内容も多様化しており、子どもが長時間にわたって動画を視聴する傾向になりました。物事を考えるという脳の発達のみならず、近視傾向などさまざまな点での調査が必要と考えます。
まとめ
千葉大学らの研究グループは乳幼児期のメディア視聴時間と子どもの発達が関連するかどうかを調査し、1歳からメディア視聴時間が長いと子どもの発達スコアが低くなる関連が認められたと発表しました。スマホやタブレット、テレビなどさまざまなデバイスがありますが、こうした研究は小さい子どもとメディアの接し方について1つの参考になるかもしれません。