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「大腸がん」の「初期症状」とは? 予防のコツを専門医に聞いてみた

 公開日:2024/03/05

大腸がんは男女を合わせると日本で最も罹患数が多いがんです。その一方で、大腸がんは定期的な検査をすることで予防したり、重症化を防いだりすることができるがんでもあるとのことです。改めて、大腸がんとは一体どのような病気で、どのように対処していけばよいのか。検査の方法や頻度、予防方法に至るまで、つくば消化器・内視鏡クリニック院長の鈴木英雄先生に解説していただきました。

鈴木 英雄

監修医師
鈴木 英雄(つくば消化器・内視鏡クリニック)

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1994年筑波大学医学専門学群(現・医学群医学類)卒業。専門は消化器内科、医学教育。2003年に株式会社メディシス設立に携わる。2006年テキサス大学M.D. Andersonがんセンター客員助手。2021年筑波大学附属病院つくば予防医学研究センター部長、病院教授。2023年7月につくば消化器・内視鏡クリニックを開院し現職。医学博士。日本消化器病学会専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医、日本消化管学会胃腸科専門医・指導医、日本消化器がん検診学会認定医・総合認定医、日本ヘリコバクター学会ピロリ菌感染症認定医など。

大腸がんの基本

大腸がんの基本

編集部編集部

大腸がんは簡単にいうと、どのような病気ですか? 発症してしまうと大変な病気なのでしょうか?

鈴木 英雄先生鈴木先生

大腸がんは、結腸や直腸にできるがんの一種です。ポリープ(腺腫)が数年の経過で進行して形成されることが多いと言われています。近年増加傾向で部位別がん死亡数では男性の第2位、女性の第1位となっています。大腸がんは進行度合いでステージ0から4までの5段階で表記されます。5年生存率はステージ0が93%、1が92%、2が85%、3aが80%と高率ですが、3bは64%、4は20%と低率になってしまいます。よって、早期の段階で見つけることが非常に大事です。

編集部編集部

大腸がんの初期にはどのような症状が出ますか?

鈴木 英雄先生鈴木先生

大腸がんは初期ではほとんど症状が現れません。血便や腹痛、便秘や下痢を繰り返す、体重減少といった症状がある場合は進行している場合があり、無症状の段階でがん検診を受けることが重要です。

編集部編集部

大腸がんになりやすい人やリスク因子にはどのようなものがありますか?

鈴木 英雄先生鈴木先生

大腸がんになりやすい人やリスク因子はいくつかあります。以下に、一般的なリスク因子を挙げます。

  • 高齢化
  • 赤身肉・加工肉の摂取
  • 高脂肪・低繊維の食事
  • 肥満
  • 運動不足
  • 喫煙
  • 家族歴
  • 炎症性腸疾患

これらの要因は単独でなく、相互に影響し合うことがあります。ただし、これらのリスク因子が存在していても、予防策や定期的な検診をおこなうことで早期発見・治療が可能となります。大腸がんは予防可能で、健康的な生活習慣や定期的な検診が重要です。食事の質を向上させ、適切な運動をおこない、喫煙や過度のアルコール摂取を避けることが予防につながります。家族歴や年齢などのリスク因子も考慮しながら、定期的な検診を受けることが大切です。

大腸がん検診の大切さについて知る

大腸がん検診の大切さについて知る

編集部編集部

大腸がんは、どのような検査で見つかるのですか?

鈴木 英雄先生鈴木先生

大腸がんが発見される検査にはいくつかあります。

  • 便潜血検査
  • 便に血液が混ざっているかどうかを検査する方法です。大腸がん検診で2日間便を採取する2日法として用いられています。陽性の場合、確定診断のために大腸内視鏡などほかの検査が必要になります。

  • 大腸内視鏡検査
  • 内視鏡を用いて大腸全体をくまなく観察します。異常が見つかれば同時に生検やポリープ切除もおこなうこともできます。

  • CTコロノグラフィ
  • コンピュータ断層撮影(CTスキャン)を使用して、大腸の3次元画像を作成します。5mm程度の小さなポリープも検出できますが、異常が見つかった場合は大腸内視鏡による追加の検査が必要です。

  • PET-CT
  • 人間ドックやがんの転移、原発巣検索でおこなわれるPET-CTで大腸に集積が認められて大腸がんが発見されることがあります。

  • 血液検査
  • 一般の血液検査の貧血を契機に見つかることもあります。また人間ドックなどでの腫瘍マーカー(例: CEA)で見つかることもあります。

編集部編集部

何も症状が無くても便潜血検査は受けるべきでしょうか?

鈴木 英雄先生鈴木先生

大腸がんは初期段階では症状がほとんど現れないため、早期発見のためには、症状が無くても便潜血検査を受けることが重要です。日本では大腸がん検診として40歳以上を対象に年に1回の便潜血検査がおこなわれています。

編集部編集部

大腸がんの検査は、何歳からどのくらいの頻度で受ける必要がありますか?

鈴木 英雄先生鈴木先生

大腸がんの家族歴やリスクがない人は、40歳以上を対象にした年に1回の便潜血検査による大腸がん検診を受けることが推奨されています。家族歴やほかのリスク因子がある場合は、年齢とは関係なく便潜血検査や内視鏡検査を受けると良いでしょう。頻度については担当の医師と相談する必要があります。

編集部編集部

特に検査を受けた方が良い人の特徴はありますか?

鈴木 英雄先生鈴木先生

家族に大腸がんの人がいる場合ほかのリスク因子がある人は、積極的に便潜血検査や内視鏡検査を受けてください。

大腸がんを予防する方法とは?

大腸がんを予防する方法とは?

編集部編集部

大腸がんは予防できる病気なのでしょうか?

鈴木 英雄先生鈴木先生

大腸がんは食事などの生活習慣に関わるリスク因子を減らすことや、検診や内視鏡検査を受け、がんになる前の腺腫の段階で切除することで予防することができます。

編集部編集部

日常生活でできる大腸がんの予防行動はありますか?

鈴木 英雄先生鈴木先生

大腸がん予防に関係する生活習慣は、以下の通りです。

  • 健康的な食事
  • 低脂肪の食事とし、食物繊維やカルシウムを重点的に取り入れることが推奨されています。ハムやソーセージ、ベーコンなどの加工肉は食べ過ぎに注意しましょう。

  • 適正体重の維持
  • 肥満は大腸がんのリスクを増加させることがあります。適正な体重を維持することが予防に寄与します。

  • 運動
  • 適度な運動は大腸がんの発生リスクを低減させると言われています。歩行などの軽い運動を1日60分おこなう汗をかく程度の運動を1週間に60分程度おこなうと良いでしょう。65歳以上の高齢者は、強度を問わず、身体活動を毎日40分おこなうことが推奨されています。

  • 禁煙
  • 喫煙は大腸がんを含む様々ながんの発生リスクを増加させるため、禁煙が予防につながります。

  • 節酒
  • 過度なアルコール摂取は大腸がんのリスクを増加させる可能性があるため、適切な範囲でのアルコール摂取が重要です。日本酒なら1合、ビールなら大瓶1本、焼酎なら1合の2/3、ウィスキーならダブル1杯、ワインならボトル1/3程度までです。

これら、「健康的な食事」「適正体重の維持」「運動」「禁煙」「適度なアルコール摂取」の5つの生活習慣を実践することで、がんになるリスクをほぼ半分にできることが分かっているので、出来ることから取り組みましょう。

編集部編集部

その他、大腸がん予防で知っておくべきことはありますか?

鈴木 英雄先生鈴木先生

生活習慣の改善で、大腸がんのリスクを大きく下げることはできますが、ゼロにはできません。しかし、たとえ大腸がんになっても、初期に発見できれば、ほぼ100%治すことができます。早期発見に最も重要なのは「定期的に検査を受けること」です。定期的な検診、内視鏡検査により、ポリープやがんを早期に発見することが大腸がんで命を落とすことを防げます。

編集部まとめ

大腸がんは日本で主要ながんであり、初期症状がほとんどないため、40歳以上の方は年1回の便潜血検査が推奨されるようです。適正な体重維持や運動、禁煙などががん予防に効果的であるとのことでした。また、定期的な検査と生活習慣の見直しは大腸がんの予防と早期発見に寄与し、治療の成功率も向上させると教えていただきました。本稿が読者の皆様にとって大腸がんの基本情報を知るとともに、がん予防に取り組むきっかけとなりましたら幸いです。

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