【若年女性が約8割】市販薬を「オーバードーズ」救急搬送される若者が増加
埼玉医科大学病院などが参加する厚生労働省の研究班の調査結果によると、市販薬の過剰摂取(オーバードーズ)で救急搬送された患者122人のうち8割近くが女性だったことが明らかになりました。この内容について郷医師に伺いました。
監修医師:
郷 正憲(徳島赤十字病院)
厚生労働省の研究班による調査結果とは?
厚生労働省の研究班による調査結果について教えてください。
郷先生
この調査は、埼玉医科大学病院などが参加する厚生労働省の研究班が実施したものです。研究班は、2022年12月までの1年8か月間に、解熱鎮痛剤などの市販薬を過剰摂取(オーバードーズ)して救急搬送された122人について調査を行いました。その結果、オーバードーズによる緊急搬送された人の平均年齢は25.8歳で、最年少は12歳だったことが明らかになりました。また、男女別に集計すると、女性が79.5%、男性が20.5%と女性の割合が高かったことがわかりました。職業ごとの分析では、緊急搬送された中で最も多かったのが学生で33.6%、次に割合が高かったのはフルタイムで働く人で26.2%でした。緊急搬送された人の8割以上の人が家族やパートナーと同居していたということです。搬送された人のほとんどは入院し、半数以上は集中治療が行われ、また後遺症で通院が必要になった人がいたことも明らかになっています。
オーバードーズとは?
厚生労働省の研究班が調査した、オーバードーズについて教えてください。
郷先生
「オーバードーズ」とは、薬を使うときの一回あたりの用量が過剰であること、または薬物の過剰摂取に及ぶ行為のことです。最近では、一般の患者自身が自らの判断で過量の薬を服用するケースが問題視されています。また今回、厚生労働省の研究班が調査の対象にした、薬局で自由に購入できる市販薬がオーバードーズの対象となっていることは、大きな問題として認識されています。実際に、国立精神・神経医療研究センターが行った実態調査によると、薬物の依存や乱用で治療を受けている10代の患者が主に使用している薬物を調べた結果、市販薬が占める割合は2014年の0%から2022年には65%と顕著に増加しています。市販薬の中にも、覚醒剤や麻薬のような作用を生じる成分が含まれているものがあり、用法・用量を守らなければ急性毒性のために死んでしまうケースもあります。さらに、使い続けることで依存症に陥り、薬なしでは生活できないという状態になってしまうこともありえます。 厚生労働省はエフェドリン、ブロムワレリル尿素、プソイドエフェドリン、コデイン、ジヒドロコデイン、メチルエフェドリンの6つの成分を含む製剤を「乱用などのおそれがある医薬品」に指定しています。
調査結果への受け止めは?
厚生労働省の研究班による調査結果への受け止めを教えてください。
郷先生
救急現場を担当する医療従事者からすると、女性が搬送されてくるケースが圧倒的に多いので納得の調査結果と言えます。さまざまな理由があると思いますが、女性の方が衝動的な行動を起こしやすい傾向にあるのではないでしょうか。また、最近の傾向として市販薬でのオーバードーズが増加傾向にあります。以前は医療機関での処方薬によるオーバードーズが多かった印象ですが、処方の制限などによって処方薬でのオーバードーズは減少した代わりに、市販薬でのオーバードーズが増えてきている印象です。なかなか制限がかけづらい領域ではありますので、何らかの対策が必要と考えられます。
まとめ
埼玉医科大学病院などが参加する厚生労働省の研究班が過剰摂取で救急搬送された患者122人を調べたところ、8割近くが女性だったことが明らかになりました。薬物の過剰摂取は極めて危険な行為ですので、過剰摂取を抑制するための対策が求められます。