【新型コロナウイルス】インフルエンザと同等の「5類」へ見直し 厚生労働省が本格検討
厚生労働省は、新型コロナウイルスの感染症法上の分類見直しに向けた議論を本格的に始めました。このニュースについて郷医師に伺いました。
監修医師:
郷 正憲(医師)
新型コロナウイルスを巡る分類見直しとは?
新型コロナウイルスを巡る感染症法上の分類見直しの動きについて教えてください。
郷先生
新型コロナウイルスは現在、通常の感染症法上の分類からは独立した新型インフルエンザ等感染症に位置付けられています。入院勧告が可能になったり、医療費やワクチン接種が公費負担になったりしていますが、重症化率が低下していることが指摘され、5類相当、もしくは5類への変更を求める声が上がっています。11月30日に開かれた厚生労働省のアドバイザリーボードでは、加藤厚生労働大臣が「感染力の状況や最新のエビデンスに基づき、総合的に早期に議論を進めたい」と述べ、新型コロナウイルスの感染症法上の分類の見直し検討に向けて、現在の病原性や感染性などに関するリスク評価を示すよう求めました。さらに、国会で成立した改正感染症法の付則に、新型コロナウイルス感染症の分類見直しを「速やかに検討する」と明記されており、季節性インフルエンザと同じ5類への緩和も視野に入れた見直しの議論が本格化しています。加藤厚生労働大臣は12月2日の記者会見で「新型コロナウイルスの分類そのものは当面維持しつつ、専門家の意見も聞きながら総合的に検討を進めたい」と、分類変更に向けた議論を加速させる考えを示しています。
感染症法上の分類とは?
感染症法で規定されている分類について教えてください。
郷先生
感染症法では、1類から5類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、新感染症に分けられています。「1類感染症」はエボラ出血熱などが該当し、入院等の対人措置や消毒などの対物措置、交通制限等の措置が可能になります。「2類感染症」は結核などが該当し、入院等の対人措置と消毒等の対物措置が可能になります。「3類感染症」はコレラなどが該当し、就業制限等の対人措置、消毒等の対物措置が可能になります。「4類感染症」は狂犬病などが該当し、動物への措置を含む消毒等の措置をとることができます。「5類感染症」はインフルエンザや梅毒、麻疹などで発生動向調査が実施できます。
また現在、新型コロナウイルスが分類されている新型インフルエンザ等感染症は、入院等の対人措置、消毒等の対物措置が可能になるほか、政令により1類感染症相当の措置も可能になったり、感染した恐れがある被地に対する健康状態報告要請や外出自粛要請などの実施が可能になったりします。
新型コロナウイルスを巡る分類見直しへの受け止めは?
新型コロナウイルスの感染症法上の分類の見直しへの受け止めを教えてください。
郷先生
今回、厚生労働省が本格的に議論を始めたためにフォーカスされるようになりましたが、実際にはこれまでにも扱いは徐々に変化してきています。現在、新型コロナウイルスは新型インフルエンザ等感染症に分類されていますが、当初はこの中でも2類に相当するほどの強力な感染対策をおこなっていました。すなわち、全例入院、全例隔離、濃厚接触者の綿密な洗い出しです。しかし、ご存じのように感染者数の急増とワクチンの広がりから扱いが緩徐に変更され、現在では実質5類と同等の扱いになっています。そのため、今回の検討はそれを実質的な5類という扱いから、実際に5類と同じであるということを明記するための作業と言えます。これにより、さらに濃厚接触者や接触者の出勤停止が緩和されるなどの生活の変化があるかもしれませんが、それ以上にワクチンや治療を受けようとしたときに自己負担がかかってくる可能性があります。現在はほぼ全て公費負担で、国家財政的にも非常に負担が大きいため、そこを是正するための動きとも捉えることができます。5類という言葉だけに惑わされず、どのような意味で5類あるいは5類相当にするのかを注視する必要があります。
まとめ
厚生労働省が、新型コロナウイルスの感染症法上の分類見直しに向けた議論を本格的に始めたことが今回のニュースでわかりました。新型コロナウイルス対策にも大きな影響が出る議論なだけに今後も注目が集まります。