免疫逃れる「オミクロン株新系統」複数流行の懸念 「BA.5」ピーク後に拡大か
国立感染症研究所の脇田隆字所長は11月17日に記者会見をおこない、「オミクロン株の複数系統が同時に存在しながら広まっていく恐れがある」と指摘しました。こちらのニュースについて竹内医師に伺いました。
監修医師:
竹内 想(医師)
国立感染症研究所の脇田所長の指摘とは?
国立感染症研究所の脇田所長が11月17日の会見で指摘した内容について教えてください。
竹内先生
会見をおこなった国立感染症研究所の脇田所長は、厚生労働省専門家組織で座長を務めている人物です。脇田所長は11月17日に記者会見を開き、「BA.5による流行のピークは年内にも到来し、その後はXBBやBQ.1に置き換わる可能性がある」と述べ、「オミクロン株の複数系統が同時に存在しながら広まっていく恐れがある」と指摘しました。オミクロン株の新たな系統として警戒されているのは「XBB」「BQ.1」「BQ.1.1」で、WHOはこれらの系統に対して警戒を促す声明を出しています。
「XBB」「BQ.1」「BQ.1.1」は、日本国内でも感染の報告が上がり始めています。こうした新たな系統は日本で現在主流となっている「BA.5」よりも感染力が強い可能性があるため、東京都が新系統に対応した独自のPCR検査を始めるなど対策を強化している状況です。
「XBB」「BQ.1」「BQ.1.1」とは?
「XBB」「BQ.1」「BQ.1.1」について、現時点でわかっていることを教えてください。
竹内先生
「XBB」については、WHOが10月27日に発表した声明によると35カ国で感染が報告されていて、世界的にみると10月3~9日の時点で1.3%の有病率とのことです。「XBB」は「BA.2」から派生した変異ウイルスが組み合わさった「組み換え体」と呼ばれるタイプのウイルスです。感染力の高さが指摘されていますが、従来のオミクロン株に比べて免疫から逃れる能力や重症化率が高いとは言えない状況です。
「BQ.1」は、「BA.5」の亜系統でいくつかの重要な抗原部位にスパイク変異が起きています。また、「BQ.1.1」は、「BQ.1」からさらにスパイクに変異が起きているものです。WHOによると10月3~9日の時点で「BQ.1」の世界的な有病率は6%で、65カ国で検出されているとのことです。従来のオミクロン株と比べると、感染者の割合が増えている傾向にあり免疫から逃れる能力が高い可能性がありますが、実際に感染した場合の重症化リスクが高まったり免疫逃避が起きたりしたことを示すデータはまだ確認できていません。
脇田所長の指摘への受け止めは?
今回の国立感染症研究所の脇田所長の指摘についての受け止めを教えてください。
竹内先生
今後、オミクロン株の新系統株が広がる可能性が指摘されています。もともとウイルスは変異を繰り返す性質があるため、過度に恐れることなくワクチン接種や感染予防対策を講じていくことが大切であると考えられます。
まとめ
国立感染症研究所の脇田所長は11月17日に記者会見をおこない、「オミクロン株の複数系統が同時に存在しながら広まっていく恐れがある」と指摘しました。WHOでも警戒している系統でもあり、今後も注目が集まりそうです。