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ジョンソン・エンド・ジョンソン製の新型コロナウイルスワクチン承認へ

 更新日:2024/03/08
J&J製コロナワクチン承認へ

厚生労働省の専門部会は5月30日、アメリカの製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソンの新型コロナウイルスワクチンを薬事承認することを了承しました。このニュースについて甲斐沼先生にお話を伺います。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

今回のニュース内容とは?

今回取り上げるニュース内容について教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼先生

今回のニュースは、アメリカの製薬会社大手のジョンソン・エンド・ジョンソン社が開発した新型コロナウイルスワクチンについて、日本国内での製造販売が承認される見通しというものです。5月30日に、厚生労働省の専門部会が薬事承認を了承すると結論を出したことで、今後厚生労働大臣による正式承認がおこなわれる方針です。承認されれば、日本では5例目となる新型コロナウイルスワクチンになります。ただし、現場で必要なワクチンは既に確保できていることから、公費で無料となる臨時接種には位置付けない方針だということです。

ジョンソン・エンド・ジョンソン製ワクチンとは?

新たに承認される方針のジョンソン・エンド・ジョンソン製ワクチンについて教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼先生

ジョンソン・エンド・ジョンソン製のワクチンはウイルスベクターを用いるタイプのワクチンです。最初に2回の接種が必要な他社のワクチンと違い、1回で済むのが大きな特徴です。接種対象は18歳以上で、0.5mlを1回、筋肉に注射します。追加接種となる2回目接種は、1回目から少なくとも2カ月経過した後に接種を認める形になります。

臨床試験では、接種を受けなかった人と比べて中等症や重症の発症を66%程度減らし、重症化を防ぐ効果は85%だったという結果が出ています。ウイルスベクターが用いられるジョンソン・エンド・ジョンソン製ワクチンでは血栓症が稀に生じると報告されていて、FDA(アメリカ食品医薬品局)によると、接種100万回あたり3.23件の頻度で血栓症が生じるということです。血栓が確認されたのは、ほとんどが18歳から49歳の女性であり、この年代の女性に限れば100万人あたり約7人の割合とのことです。

新たな薬事承認への受け止めは?

ジョンソン・エンド・ジョンソン製ワクチンが承認されると国内5例目の新型コロナウイルスワクチンとなりますが、承認される意義や医療現場への影響などについて教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼先生

アメリカ製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソン社が開発したワクチンは、ウイルスベクターワクチンというタイプであり、ウイルス表面に存在する突起したスパイクタンパク質の設計図となる遺伝子を無害な別のウイルスに組み込んで、そのウイルスごと投与する方法です。このワクチンを接種することで、無害なウイルスがヒトの細胞に感染し、新型コロナウイルスと同じスパイクタンパク質が合成されることを通じて、体内における免疫機能の働きで自然と抗体が作成される仕組みとなっています。

アメリカでは本ワクチンに関して2021年2月の段階で緊急使用許可が発出されており、-20度で2年間、2~8度の環境下で最大3カ月間程度保管できるシステムになっています。そのうえ、従来の主要なワクチンは2回接種が原則であった一方で、1回のみ接種するだけで免疫抗体が作成されることから広く普及して接種されるものと考えられており、実際に海外では18歳以上に対して筋肉注射で接種が進められています。1回でワクチン接種が済むようになれば、世界的に普及しやすく簡便に取り扱いできます。また、超低温のみならず一般的な冷蔵保管が可能であるため、冷凍設備が必ずしも整備されていない状況下でも大規模な接種事業が展開しやすくなります。

これまでに副作用として血栓症が報告されたことを受けて、CDCなどは2021年4月に一旦ワクチン接種を一時停止するよう求めましたが、その後に「本ワクチン接種によるベネフィットはリスクを上回る」と判断しました。それに伴って、今後は医療機関などにおいてワクチン接種後に引き起こされるリスクを有する血栓症の対策などを徹底的に周知したうえで、ワクチン接種を再開する方向に進んでいくものと考えられます。

まとめ

厚生労働省の専門部会が5月30日、アメリカの製薬大手ジョンソン・エンド・ジョンソンの新型コロナウイルスワクチンを薬事承認することを了承したことが今回のニュースでわかりました。今後もこうしたワクチン情報は注目を集めそうです。

この記事の監修医師