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「学校でのマスク着用は新型コロナ感染抑制に有効」との研究報告「マスク義務化が功を奏した」

 更新日:2023/03/27
学校でのマスク着用はコロナ抑制に有効との研究報告

ハーバード・T・H・チャン公衆衛生大学院の研究グループは、マスク着用義務の解除後15週間で、解除前に比べて新型コロナウイルスの感染者が生徒・教職員1000人あたり44.9人増加したことを明らかにしました。また、「学校でのマスク着用が新型コロナウイルスの感染抑制に有効である」と学術誌に報告しました。このニュースについて郷医師に伺いました。

郷 正憲医師

監修医師
郷 正憲(医師)

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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、ICLSコースディレクター、JB-POT。

研究グループが発表した内容とは?

ハーバード・T・H・チャン公衆衛生大学院の研究グループが発表した内容について教えてください。

郷 正憲医師郷先生

今回取り上げるのは、ハーバード・T・H・チャン公衆衛生大学院の研究グループが発表した研究内容です。研究グループは、マサチューセッツ州ボストンの72学区の生徒29万4084人と教職員4万6530人を対象に、マスク着用義務の有無が学校での新型コロナウイルス発症に及ぼした影響を検討しました。州全体の新型コロナウイルス発症率について、マスク着用義務が解除される前は学区間で同等でした。その一方、州全体のマスク着用義務が解除後15週間の段階で、生徒と教職員1000人あたり44.9人増加しました。この数値から発症者は1万1901人と推計され、その間に発症した全学区の新型コロナウイルス症例の29.4%に相当するとのことです。

研究グループは「マスクの着用は、学校における新型コロナウイルスの感染や対面授業の機会損失を抑制するのに重要であることが裏付けられた」と結論づけています。また、「低所得者や黒人、ラテン系、先住民のコミュニティがある学区では、教室に生徒が密集しているケースや換気設備が整っていないケースが多く、感染リスクが高いにもかかわらず、マスク着用の継続により新型コロナウイルスの発症が抑制された」と指摘した上で、「全ての人がマスクを着用するというユニバーサルマスキングは、教育上の不平等を是正する上で特に有用であると考えられる」とも指摘しています。

研究内容への受け止めは?

ハーバード・T・H・チャン公衆衛生大学院の研究グループが発表した内容への受け止めを教えてください。

郷 正憲医師郷先生

今回の研究結果はマスク着用の有用性にフォーカスを当てていますが、実際にはマスク以外の要素もある可能性を考慮しなくてはなりません。なぜなら、マスクを着用している人が多い環境では、マスクをつけている人が減っているであろう環境よりも感染率が低かったというデータは分かるのですが、そのほかの要素が加味されていないのです。例えば、マスクを着用していると会話以外に、外食や食べ歩きの機会が減少します。それらの行為は飛沫を多く発生させ、新型コロナウイルス感染の機会を増やす可能性があるので、マスクを義務化している環境では感染機会が減少するというデータを修飾してしまいます。同様に「低所得者や黒人、ラテン系、先住民のコミュニティがある学区ではマスク着用義務によって感染が抑制された」とありますが、これらも行動がどのように変化しているかを加味していないため、マスクだけで感染抑制効果があったとは言い切れないでしょう。ただし、「新型コロナウイルスの感染を抑制するかどうかにかかわらず、マスク着用を義務化するという方策が、どういった経路であれ感染者を減らすということにつながっている」というデータは貴重であると言えます。

日本の学校でのマスク着用をどう考えるべきか?

今回の研究内容はアメリカの学校の生徒や教職員を対象にしたものでしたが、日本の学校でのマスク着用についてどう考えるべきでしょうか?

郷 正憲医師郷先生

もちろん、このデータを利用してマスクを着用し続けるということ自体が感染リスクを低下させるという結果は受け取っていいと思います。また、論文では証明されていませんが、やはり私はマスクの着用そのものでも感染抑制効果はあると考えます。たしかに、ウイルスやエアロゾルのサイズはマスクの編み目構造よりも小さいため通過しますが、少なくとも多くのウイルスが含まれている飛沫の飛散を防止することができます。また、「呼気によってマスクが水分を含むことで編み目構造の隙間を埋め、よりウイルスの通過を予防する効果がある」という研究結果もあります。少なくともウイルスの飛散を減少させることはできますから、感染リスクをなくすことはできなくとも減少させることはできるでしょう。現状、子どもの間ではワクチン接種が十分に進んで居らず、後遺症を起こしている子どもも散見されていますから、まずはマスク着用によって感染リスクを下げるというのは非常に重要なことであると考えます。

まとめ

ハーバード・T・H・チャン公衆衛生大学院の研究グループは、マスク着用義務の解除後15週間で、解除前に比べて新型コロナウイルスの発症が生徒・教職員1000人あたり44.9人増加したことを明らかにし、学校でのマスク着用が新型コロナウイルスの感染抑制に有効であると学術誌に報告しました。日本での第8波への警戒が続く中で、参考になる情報と言えそうです。

この記事の監修医師