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「塩野義製薬の新型コロナウイルス飲み薬」100万人分の供給開始も専門家の間では懐疑的な意見

 更新日:2023/03/27
国内開発初 塩野義製薬の新型コロナ飲み薬を緊急承認

11月22日、厚生労働省は塩野義製薬が開発した新型コロナウイルスの飲み薬「ゾコーバ」を緊急承認しました。このニュースについて郷先生にお話を伺います。

郷 正憲医師

監修医師
郷 正憲(医師)

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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、ICLSコースディレクター、JB-POT。

塩野義製薬の治験結果について

塩野義製薬が発表した最終段階の治験結果の内容について教えてください。

郷 正憲医師郷先生

11月22日、厚生労働省は塩野義製薬が開発した新型コロナウイルス治療薬「ゾコーバ」を緊急承認しました。軽症者にも使用することができる初の国産飲み薬で、緊急承認制度でも初めて適用されました。厚生労働省は塩野義製薬と100万人分の供給契約を結んでおり、11月28日から医療機関などへの供給を開始しています。

「ゾコーバ」の承認を巡っては、2022年2月に使用の承認申請がおこなわれ、緊急承認制度を活用して6月と7月に審議されたものの継続審議となりました。その後、塩野義製薬は9月に最終段階の治験結果を厚生労働省などに提出していました。最終段階の治験は、重症化リスクがない人やワクチンを接種した人を含めた、12歳から60代までの軽症から中等症の新型コロナウイルスの患者1821人を対象に、2022年2月から7月中旬まで実施されました。

治験では1日1回、5日間「ゾコーバ」を服用するグループと服用しないグループに分けられました。「ゾコーバ」を服用したグループは、せきや喉の痛み、鼻水・鼻づまり、倦怠感、発熱・熱っぽさの症状が7日前後で全てなくなりました。また、「ゾコーバ」を服用したグループは、服用していないグループと比べて上記の症状がなくなるまでの時間が約24時間短くなりました。さらに、投与を始めて4日目の段階でウイルス量が大幅に減少したほか、重篤な副作用もなかったとのことでした。「ゾコーバ」は11月28日から全国2900の医療機関などに供給される見通しで、供給される医療機関は都道府県などのホームページに掲載されます。

新型コロナウイルス治療薬「ゾコーバ」とは?

今回、緊急承認された治療薬「ゾコーバ」について教えてください。

郷 正憲医師郷先生

「ゾコーバ」は塩野義製薬が開発を進めている新型コロナウイルス治療薬です。ウイルスの増殖を抑制する効果があり、軽症者や無症状者向けの飲み薬となります。感染初期に1日1回、5日間自宅などで服用することで重症化を防ぐ効果が期待されています。

塩野義製薬はこれまで、中間段階の治験の結果を用いて日本国内での緊急承認制度の活用を目指してきました。しかし、厚生労働省が7月に開いた専門家による会議では、中間段階の治験で設定していた目標の1つである「新型コロナウイルスに特徴的な12症状全ての改善が確認できなかった」などの理由で承認が見送られて継続審議となっていました。

日本で開発された飲み薬が承認されたことについての受け止めは?

国内で開発された新型コロナウイルスの飲み薬が初めて承認されたことについての受け止めを教えてください。

郷 正憲医師郷先生

たしかに、国産初の新型コロナウイルス感染症治療薬ということで期待を持っている人もいらっしゃるようですが、じつは感染症の専門家からは懐疑的な意見も出ています。新型コロナウイルスの治療においては、重症化予防・死亡抑制が重要視されています。今回承認されたゾコーバは、残念ながら治験では重症化予防効果・死亡抑制効果が認められませんでした。さらに問題なのが、ゾコーバと同時に使用することができない併用禁忌薬剤が非常に多いということです。併用禁忌薬剤が36種類もあり、持病があるとかなり引っかかってくることが多くなるほか、妊婦も使用できません。そのため、そもそもゾコーバを使用できるのが「重症化するような持病がない若い非妊婦」ということになります。現時点で認められている効果は症状が消失するまでの時間ですが、他人に感染させる可能性が低下するかどうかも確認されていませんので、ゾコーバを飲んだからといって療養期間が短縮されるということでもありません。ですから、専門家の間では投与する意味があるのかが疑問視されているのです。

ただし今後、後遺症の軽減効果が確認される可能性はあります。ご存じの通り、新型コロナウイルスは後遺症が起こり得ます。また、数年後に何らかの合併症を発症するかもしれないことが推測されていますが、まだ分かっていません。感染後すぐにゾコーバを内服することで、これらの後遺症が減少することが分かれば非常に有用な薬ということになるでしょう。

今回の承認は、積極的に治療に用いるためというより、遠隔期のデータを取るために一旦承認して、販売後にデータを更に集めて有用性を探すということに主眼が置かれていると考えます。これで非常に良い結果が出れば後遺症に悩む人が減らせるというだけではなく、日本発の薬が世界を変えたということになりますから、今後の結果に期待が高まります。

まとめ

11月22日、厚生労働省は塩野義製薬が開発した新型コロナウイルスの飲み薬「ゾコーバ」を緊急承認したことが今回のニュースでわかりました。「ゾコーバ」は11月28日から医療機関への供給が始まっているため、今後の動きにも注目が集まります。

この記事の監修医師