目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 栄養素
  4. 「乳酸菌は内脂肪の減少に効果」がある?不足すると現れる症状も管理栄養士が解説!

「乳酸菌は内脂肪の減少に効果」がある?不足すると現れる症状も管理栄養士が解説!

 公開日:2025/09/26
「乳酸菌は内脂肪の減少に効果」がある?不足すると現れる症状も管理栄養士が解説!

乳酸菌の効果とは?メディカルドック監修医が乳酸菌とプラズマ乳酸菌の効果・一日の摂取量・不足すると現れる症状・過剰摂取すると現れる症状・多く含む食品・効果的な摂取方法などを解説します。

中島 三容子

監修管理栄養士
中島 三容子(管理栄養士)

プロフィールをもっと見る
一般企業で約20年自動車部品の設計補助業務に従事したのち、栄養士の世界へ。2022年に管理栄養士資格取得後は、国家試験対策教材の制作サポートや食育コーディネートに携わる。また、持続血糖測定の管理事務および保健指導を行い、ひとりひとりの「なんとなくわかっちゃいるけど」に寄り添いアプローチする。

「乳酸菌」とは?

「乳酸菌」とは?

「乳酸菌」とは、糖質を分解(発酵)して乳酸を多く産生する性質をもつ微生物の総称です。現時点で約400種類以上の乳酸菌が知られており、主に乳酸桿菌(Lactobacillus属)などが代表的です。なお、ビフィズス菌(Bifidobacterium属)も乳酸を産生しますが、分類学的には異なる系統(放線菌門)に属しており、狭義には乳酸菌ではありません。ただし、腸内で有用な働きをすることから、広義では乳酸菌と並んで「有用菌」として扱われることもあります。ビフィズス菌や乳酸菌などの有用菌(人体に有益な菌)の生菌あるいは生菌を含む食品を”プロバイオティクス”といい、特定保健用食品として「おなかの調子を整える食品」の表示が許可されるなど、その効果について注目されており、現在も国内外でさまざまな研究が行われているところです。

乳酸菌の一日の摂取量

乳酸菌の一日の摂取量

日本人の食事摂取基準2025年版には、乳酸菌の摂取量に関する明確な基準は設けられていません。 ただし、一部の研究や食品メーカーによる試験では、健康効果を期待する場合には1日あたり100億個程度の乳酸菌を摂取していたという報告もあります。 乳酸菌はあくまで食品由来の微生物であり、医薬品のように厳密な摂取量が定められているわけではありません。そのため、体調や目的に合わせて日常的に摂取することが大切です。

乳酸菌の効果

乳酸菌の効果

おなかの調子を整える

乳酸菌は糖質を分解(発酵)して、乳酸や酢酸といった有機酸を産生します。これにより大腸内が酸性に傾くことで悪玉菌が減り善玉菌が増えて腸内細菌叢のバランスが改善し、腸内環境を良好に整えます。その結果、便秘や下痢の予防・改善など、おなかの調子を整える効果が期待できます。

感染症のリスクを低下する

ヒトは、人体に悪影響を与えるウイルスなどから身を守る免疫という機能をもっています。免疫を担う免疫細胞は腸に多く存在しており、乳酸菌はその免疫細胞の働きを活性化することより、風邪やインフルエンザなどの感染症のリスク低下が期待できるとの報告があります。

肌の調子を整える

活性酸素は体内の細胞にダメージを与え、老化の一因になるといわれています。乳酸菌は腸内環境を整える働きがあり、その結果として腸内の炎症や悪玉菌の増殖が抑えられることで、肌荒れの改善や肌の状態を良好に保つ効果が期待されるという報告もあります。こうした作用は直接的というより、腸と肌の関係(いわゆる「腸―肌相関」)を通じた間接的な影響と考えられています。

内臓脂肪を減少する

乳酸菌のひとつであるガセリ菌SP株を摂取した集団は、摂取していない集団と比べて内臓脂肪面積の有意な減少が認められたとの試験結果が報告されています。ガセリ菌SP株という乳酸菌を食事とともに摂取することで腸管からの脂質の吸収を抑制すると考えられています。

プラズマ乳酸菌の効果

プラズマ乳酸菌の効果

「Lactococcus lactis subsp. lactis JCM 5805」、通称プラズマ乳酸菌は、ヒトの免疫細胞のひとつであるプラズマサイトイド樹状細胞(pDC)に作用することが確認され、これを示した世界初の論文報告がなされた乳酸菌として知られています。

免疫機能の維持をサポートする

一般的な乳酸菌は一部の免疫細胞(NK細胞など)のみを活性化しますが、プラズマ乳酸菌は、免疫細胞の司令塔である「プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)」に直接働きかけ、免疫細胞全体の活性化を促します。これにより、健康な人の免疫機能の維持をサポートし、感染症予防やウイルス増殖の初期抑制に役立つことが期待されています。

腸内の有用菌が減少すると現れるおもな症状

腸内の有用菌が減少すると現れるおもな症状

腸内には乳酸菌やビフィズス菌などの有用菌が存在しており、腸内環境のバランスを保つうえで重要な役割を担っています。これらの菌が減少し、悪玉菌が増えると腸内環境が乱れ、以下のような不調が現れることがあります。

便秘・下痢

乳酸菌が減少し悪玉菌が増えると、腸の動きが鈍くなって便秘になりやすくなったり、有害物質やガスの刺激で下痢が起こりやすくなります。症状が悪化した場合は主治医または消化器内科を受診してください。

腹部膨満感

腸内でガスが過剰に発生することにより、お腹の張りや膨満感を感じることがあります。

食欲不振・吐き気

腸内環境の悪化は消化器全体に影響を及ぼすため、食欲不振や吐き気があらわれることがあります。

免疫力の低下

腸には多くの免疫細胞が存在しており、腸内環境が乱れると免疫のバランスにも影響を与える可能性があります。そのため、風邪や感染症にかかりやすくなることもあります。

肌荒れ

腸内環境が悪化に伴い、悪玉菌が増殖し有害物質が発生することで、肌荒れにつながることがあります。

乳酸菌を過剰摂取すると現れる症状

乳酸菌を過剰摂取すると現れる症状

下痢・腹痛

通常の飲食による摂取では余分な乳酸菌は便中に排泄されるため、過剰摂取によるリスクはほとんどありませんが、サプリメントなどで乳酸菌を一度に大量摂取すると、腸内細菌のバランスが一時的に崩れ、腸の蠕動運動が促進されて下痢や腹痛などの消化器症状が現れることがあります。このような症状が現れた際にはサプリメントなどの服用はただちに中止してください。また、摂取した乳酸菌の種類が体質に合わない場合や乳糖不耐症の方が乳酸菌を含む乳製品を摂った場合にも、同様の症状が現れることがあります。症状が続く場合には、主治医または消化器内科への相談をお勧めします。

乳酸菌を多く含む食品

乳酸菌を多く含む食品

ヨーグルト

乳酸菌を多く含む食品は、主に発酵食品に多く見られます。その中でもヨーグルトは乳酸菌含有量が多く、乳酸菌食品の代表と言えます。ヨーグルトは動物の乳に乳酸菌を混ぜて作ります。発酵の過程で生成される乳酸によって乳に含まれるたんぱく質が凝固してヨーグルトができます。「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」では、1mlあたり1000万以上の乳酸菌または酵母数を含むものを発酵乳(ヨ―グルト)と定義しています。現在、日本ではさまざまな乳酸菌やビフィズス菌で作られたヨーグルトが流通しています。

チーズ

チーズは「ナチュラルチーズ」と「プロセスチーズ」の2つに大きく分けられます。ナチュラルチーズには、発酵に使用された乳酸菌が生きたまま含まれていることが多く、乳酸菌を摂取できる食品として知られています。一方、プロセスチーズはナチュラルチーズを加熱して溶かし、再び固めて作られるため、一般的には乳酸菌の生菌はほとんど含まれていません。ただし、製法や加熱温度によってはごくわずかに生き残る場合もあり、製品によって含有状況には差があります。

乳酸菌飲料

乳酸菌飲料は、牛乳などを乳酸菌で発酵させ、甘味料、果汁、香料などを加えた飲み物です。生菌タイプと加熱殺菌タイプの2種類があります。飲み物として乳酸菌を手軽に取ることができますが、含まれる甘味料などによりエネルギーの摂り過ぎや虫歯のリスクも考えられるため、取り入れ方には注意が必要です。

漬物

キムチやぬか漬けなどの漬物にも乳酸菌が豊富に含まれています。キムチは、白菜に塩や唐辛子、ニンニクや魚介塩辛を加えて乳酸発酵させた漬物です。塩だけではなく、魚介塩辛を入れることで乳酸菌による発酵が促進されます。ぬか漬けに使われる「ぬか床」は米ぬかに塩と水を練り合わせて作ります。そこに野菜を漬け込むことで、乳酸菌による発酵が進みます。漬物は、漬け込む野菜を変えることで味のバリエーションも広がるため、飽きることなく日々取り込める乳酸菌であるといえるでしょう。ただし、食塩も大量に含まれるため、食べ過ぎには気を付ける必要があります。

味噌

日本の伝統的な発酵調味料である味噌にも乳酸菌が多く含まれています。毎日の食事に味噌汁を取り入れることで、乳酸菌も補給することができます。

乳酸菌の効果的な摂取方法

乳酸菌の効果的な摂取方法

乳酸菌を多く含む食品の摂取

ヨーグルトは100gあたり約10億個の乳酸菌が含まれており、他の発酵食品と比べても高い含有量です。また、現在販売されているヨーグルトにはさまざまな種類の乳酸菌やビフィズス菌が使われているため、複数種類を摂ることで、より多様な菌種を腸内に届けることができます。

乳酸菌と一緒に摂取すると効果を高める栄養素・食品

オリゴ糖や食物繊維などの難消化性糖質は、乳酸菌などの有用菌(プロバイオティクス)の栄養源となり増殖を助けることにより、腸内細菌叢を改善するため”プレバイオティクス”といいます。プロバイオティクスであるヨーグルトとプレバイオティクスであるバナナやはちみつなどを一緒に摂ることで、乳酸菌の働きをさらに高めることができます。

乳酸菌の効果を高める摂取タイミング

乳酸菌は胃酸に弱いため、胃酸が薄まる食後に摂取すると、生きた乳酸菌が腸に届きやすくなります。また、乳酸菌は腸内に長く留まらないため、毎日継続して摂取することでその効果を維持できます。

「乳酸菌の効果」についてよくある質問

「乳酸菌の効果」についてよくある質問

ここまで乳酸菌の効果を紹介しました。ここでは「乳酸菌の効果」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

乳酸菌を摂取するメリットについて教えてください。

中島 三容子中島 三容子

乳酸菌の摂取は、腸内環境の改善をはじめとして、全身の健康維持や美容、免疫機能の向上などさまざまなメリットがあるとされています。

まとめ

乳酸菌は、専門家や企業などの研究により有効性が認められ、様々な効果が期待されています。しかし、その機序には未解明の部分が多く、今後もさらなる研究が必要です。ひとつの成分に注目するのではなく、太古の昔から人類がしてきたように、バランスのとれた食事や適度な運動とともに、乳酸菌を含む食品を取り入れることが健康への第一歩です。

「乳酸菌」と関連する病気

「乳酸菌」と関連する病気は5個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

消化器内科の病気

内科の病気

  • インフルエンザ感染症
  • 風邪症候群
  • 肥満症

「乳酸菌」と関連する症状

「乳酸菌」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する症状

この記事の監修管理栄養士