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アトピー治療においてステロイド剤の有効性は? それ以外の治療ってどうなの?

 更新日:2023/03/27

アトピー性皮膚炎の治療で意見を分けるのが「ステロイド剤の使用」だ。反対派のなかには、感染症リスクを問う声も少なくない。仮にステロイド剤を使わないとしたら、どのような治療方法があるのか。本当にステロイド剤は危険なのか。最新事情を「よこはま にしかげ小児科・アレルギー科」の西影京子先生に伺った。

西影 京子

監修医師
西影 京子(よこはま にしかげ小児科・アレルギー科 院長)

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関西医科大学卒業。医学博士。2018年、横浜駅近くに「よこはま にしかげ小児科・アレルギー科」開院。薬だけに頼らない治療、病気になりにくい体づくりを心がけている。日本小児科学会認定小児科専門医・指導医、日本アレルギー学会認定アレルギー専門医。日本小児アレルギー学会、日本小児皮膚科学会、日本免疫学会、日本臨床環境医学会、EAACI(European Academy of Allergy & Clinical Immunology:ヨーロッパアレルギー学会)、日本抗加齢医学会の各所属。アトピーに関する著書多数。

アトピーに有効とされる注射薬が登場

アトピーに有効とされる注射薬が登場

編集部編集部

ステロイド剤以外で、アトピー性皮膚炎に有効なお薬って、あるのでしょうか?

西影 京子西影先生

デュピクセント」というアトピー性皮膚炎治療薬があります。肌の炎症を起こす刺激物質に反応しづらくなる注射薬で、保険適用です。

編集部編集部

問い合わせが多そうですね?

西影 京子西影先生

希望して来院する方も多く、当院でも多くの患者さんに治療を受けていただいています。塗り薬でも効果の高いJAK阻害薬など、かゆみをとめるのに効果的な外用薬があり、それらを積極的に使用しています。

編集部編集部

先生の医院で、それ以外の治療法はありますか?

西影 京子西影先生

まずは原因をみつけることです。原因に対処できれば皮膚炎もずっとよくなります。腸内環境をよくするための食事指導もします。その上でステロイドやJAK阻害薬などの塗り薬です。痒みがきつい時は抗ヒスタミン薬も処方しますが、長期の処方は避けたいですね。

編集部編集部

長期の処方を避けたい理由はなんでしょうか?

西影 京子西影先生

ヒスタミンは脳内で神経伝達物質として働き脳を覚醒させています。抗ヒスタミン薬はこれを抑えるわけですから、怖いですよね。もっとも最近のお薬は脳へ入っていかないよう工夫されているのでそれほど心配しなくてもよいですが、小さなお子様への長期処方はしたくないですね。原因を見つけて対処することで、塗り薬も飲み薬も使用期間を短くできます。

ステロイド外用薬の是非について

ステロイド外用薬の是非について

編集部編集部

ステロイド剤は、そもそも避けるべきなのでしょうか?

西影 京子西影先生

私は、必要な治療だと考えています。なぜなら、アトピーの原因物質は、主に肌から取り込まれるからです。皮膚バリアーを十分に保てていないと、バリアーの隙間からさまざまなアレルゲンの侵入を許してしまいます。このような場合は、ステロイド剤を使ってでも皮膚を正常な状態に戻さないといけないでしょう。

編集部編集部

その一方、長期使用による副作用も懸念されているようですが?

西影 京子西影先生

たしかにステロイド剤は、長く使い続けると害が出てきかねません。お子さんの場合、毎日塗るとしたら、最長で1カ月が限度でしょう。皮膚のターンオーバーは約2週間ですので、新しい皮膚でバリアー機能が十分に保たれてきたら、ステロイド剤の使用頻度を下げていきます。

編集部編集部

どれくらいの間隔を空ければ「安全」といえるのでしょう?

西影 京子西影先生

ステロイド剤の濃度にもよりますよね。例えば「ミディアムクラスのステロイド剤(たとえばリドメックス)」なら、「週2回の連続塗布でも副作用が出ない」ことが確認されています。

編集部編集部

治療の「やめ時」、別の方法への「変え時」みたいなタイミングはありますか?

西影 京子西影先生

アトピーの治療には、ステロイド剤に限らず、さまざまな方法が用いられています。その中には、自分に合っていない進め方もあるでしょう。ですから、ぜひ治療開始と同時に担当医師へ、「治療のめどをどれくらいの期間で考えていますか」と聞いてみてください。その時期が過ぎても効果がなければ、別の治療方法や受診先を検討しましょう。

西影医師が推奨する食事療法とは

西影医師が推奨する食事療法とは

編集部編集部

先生が取り入れている食事療法について教えてください

西影 京子西影先生

私が注目しているのは、腸内の細菌と真菌との共生バランスです。ここではわかりにくいので、真菌のことを「イースト(酵母)」と呼ぶことにしましょうか。乳酸菌のような菌とイーストは、「片方が増えれば他方が減る」関係にあります。

編集部編集部

どちらが増えすぎても良くないと?

西影 京子西影先生

そうなんです。とくにイーストの中には、「カンジダ」のように、皮膚病を引き起こすタイプのものがいます。イーストの増えすぎは、当然、アトピーにも関係してくるでしょう。

編集部編集部

ある種のイーストが増えると、肌荒れに直結するわけですね?

西影 京子西影先生

まだ完全に立証されていませんが、私は、その可能性が高いと考えています。また、また、イーストは糖分を好みますので、「甘い物の食べ過ぎ」によっても増加してしまいます。皮膚にはマラセチアという真菌がいて、アレルギーを起こしている人もいて、汗をかくととてもかゆくなることもあります。

編集部編集部

腸内の環境を整えることが、アトピーに有効であると?

西影 京子西影先生

そう考え、食事指導などをおこなっています。また、アレルギー反応を抑制することで知られる「酪酸菌」別名「宮入菌」を処方することもあります。自分の腸内に生息している乳酸菌を増やすことのできる「乳酸菌生成エキス」などのサプリメントをすすめることもあります。当院の症例を見る限りでは、腸内環境の整備がかなりの成果を上げていると実感しています。

編集部まとめ

アトピー性皮膚炎の薬には、皮膚に塗る外用薬と、体内に入れる内服薬があります。副作用リスクを考えるなら、外用薬であるステロイド剤のほうが、むしろ安全なのかもしれません。もちろん、薬を全く用いない食事療法という選択肢もあるでしょう。早く治したいのか、長くかかっても可能な限りリスクを避けたいのか。その選択は、皆さんの判断です。

医院情報

よこはま にしかげ小児科・アレルギー科

よこはま にしかげ小児科・アレルギー科
所在地 〒221-0834 神奈川県横浜市神奈川区台町15-1 横浜西口KSビル1F
アクセス 横浜駅 ジョイナスB1F南12番出口より徒歩2分
診療科目 小児科、アレルギー科

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