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「水溶性食物繊維」を摂取すると体にどんな効果がある?管理栄養士が解説!

 公開日:2025/05/16
「水溶性食物繊維」を摂取すると体にどんな効果がある?管理栄養士が解説!

水溶性食物繊維とは?Medical DOC監修医が水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の違い・水溶性食物繊維の一日の摂取量・多い食品・効果・効果的な摂取方法などを解説します。

中島 三容子

監修管理栄養士
中島 三容子(管理栄養士)

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一般企業で約20年自動車部品の設計補助業務に従事したのち、栄養士の世界へ。2022年に管理栄養士資格取得後は、国家試験対策教材の制作サポートや食育コーディネートに携わる。また、持続血糖測定の管理事務および保健指導を行い、ひとりひとりの「なんとなくわかっちゃいるけど」に寄り添いアプローチする。

「水溶性食物繊維」とは?

「水溶性食物繊維」とは?

食べ物の中に含まれる食物繊維のうち、水に溶ける性質のものを「水溶性食物繊維」と呼びます。例えば、穀物やきのこに含まれるβ-グルカン、果物に含まれるペクチン、こんにゃくいもに含まれるグルコマンナン、昆布やわかめに含まれるアルギン酸などがあります。

「不溶性食物繊維」とは?

「不溶性食物繊維」とは?

食べ物の中に含まれる食物繊維のうち、水に溶けない性質のものを「不溶性食物繊維」と呼びます。例えば、植物性食品全般(植物の細胞壁)に含まれるセルロース・ヘミセルロース、エビやカニの外皮に含まれるキチン・キトサンなどがあります。

「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」の違いとは?

「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」の違いとは?

食物繊維は、人の消化酵素の作用を受けずに小腸を通過して大腸まで達する成分です。そこでさまざまな生理機能を果たしており、食物繊維はいわゆる生活習慣病の予防に寄与していることが明らかになっています。「水溶性食物繊維」は水に溶けてゲル化し、粘性・吸着性・発酵性を持ちます。一方、「不溶性食物繊維」は水に溶けにくく、保水性を持ちますが、発酵性は一般的に低いとされています。そのため、大腸での発酵は主に水溶性食物繊維が担い、不溶性食物繊維は腸内の通過を促す役割が強いとされています。このような性質の違いにより、体内での生理作用は大きく異なっています。そのため、両タイプの食物繊維をバランスよく摂取することが重要です。

水溶性食物繊維の一日の摂取量

水溶性食物繊維の一日の摂取量

食物繊維の目標量(日本人の食事摂取基準2025年版)
[男性]
18~29歳:20g/日以上
30~64歳:22g/日以上
[女性]
18~64歳:18g/日以上
この目標量(生活習慣病の発症予防を目的とした摂取量)は、現在の日本人の摂取実態からその実行可能性を考慮して低く設定されています。
健康への利益を考えた場合、成人で「25g/日以上」、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維のバランスは1:2の割合で摂ることが理想的です。

水溶性食物繊維の効果

水溶性食物繊維の効果

おなかの調子を整える

特定保健用食品で「おなかの調子を整える食品」として認められている成分の多くが食物繊維です。不溶性食物繊維がその保水性により便の量を増やすことに加えて、水溶性食物繊維が便をやわらかくすることで排便を促して便秘を予防します。さらに大腸内の細菌によって発酵して短鎖脂肪酸を生成します。これにより大腸内が酸性に傾くことで悪玉菌が減り善玉菌が増えて腸内細菌叢が改善し、腸内環境を良好に整えます。

食べ過ぎを防ぐ

水溶性食物繊維の持つ粘性により、食べ物が胃から小腸へゆっくりと移動することで胃内滞留時間が長くなり、満腹感を持続させます。それにより、食べ過ぎによるエネルギーの過剰摂取を防ぐことができ、肥満の予防・改善につながります。

食後血糖値の上昇を抑える

水溶性食物繊維の持つ粘性により、食べ物が胃から小腸へ少しずつ移動することで、糖の吸収速度を遅らせます。その結果、食後の急激な血糖値の上昇を抑えられ、インスリンの分泌も抑えられます。このことがⅡ型糖尿病の発症・重症化予防につながります。

血中コレステロール値を下げる

水溶性食物繊維はコレステロールやコレステロールから作られる胆汁酸を小腸内で吸着して体外(便中)へ排泄することで、血中コレステロール値を下げます。これにより、高LDL-コレステロール血症の予防・改善につながります。

血圧の上昇を抑える

水溶性食物繊維はナトリウムを小腸内で吸着して体外(便中)へ排泄することで、血圧の上昇を抑えます。これにより、高血圧症の予防・改善につながります。

水溶性食物繊維の多い食品

水溶性食物繊維の多い食品

穀物

押麦100gあたりに6.3g、オートミールには3.2g、干しそばには1.6gの水溶性食物繊維が含まれています。

野菜

特に根菜類に多く、ごぼう100gには水溶性食物繊維が2.3g、不溶性食物繊維が3.4g含まれており、イメージとは違って水溶性食物繊維も多く含まれています。また、オクラにも多く、100gあたり1.4g含まれています。

熟した果実

果物に含まれる食物繊維は、未熟な果実ではプロトペクチンという不溶性食物繊維ですが、熟した果実のペクチンは水溶性食物繊維です。アボカド1個230gに水溶性食物繊維が3.9g、不溶性食物繊維が9.0g、りんご1個300gに水溶性食物繊維が1.2g、不溶性食物繊維が3.0g含まれており、これらはひとつの食品に水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両方がバランス良く含まれています。

海藻

海藻に含まれる食物繊維は水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の区別が難しいのですが、総量として、乾燥わかめ(水戻し)100gあたりに4.0g、干しひじき(ゆで)に3.7g、めかぶわかめ(生)に3.4gと豊富に含まれています。

豆類

豆類の大豆(乾燥)には100gあたり1.5g、大豆の加工品であるきな粉には2.7g、糸引き納豆には2.3gの水溶性食物繊維が含まれています。納豆は1パック50gで水溶性食物繊維を1.2g、不溶性食物繊維を2.2gとバランス良く摂取できます。

水溶性食物繊維の効果的な摂取方法

水溶性食物繊維の効果的な摂取方法

水溶性食物繊維を多く含む食品の摂取

水溶性食物繊維は、穀物の中で押麦(大麦)に多く含まれています。精白米にはほとんど含まれていないため、押麦を1/3程度配合して主食に取り入れることで安定して水溶性食物繊維を摂ることができます。

水溶性食物繊維と一緒に摂取すると効果を高める栄養素・食品

水溶性食物繊維は、ヨーグルトなどに含まれるビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌のエサになることで腸内環境を整えています。その効果を高めるには、それらを一緒に摂取することを意識すると良いです。例えば、ごぼうサラダをヨーグルトで和えて作るなど、少しの工夫で水溶性食物繊維の効果を高めることができるので、おすすめです。

水溶性食物繊維の効果を高める摂取タイミング

水溶性食物繊維は毎回の食事に意識して取り入れたいですが、特に食後の血糖値上昇を抑える点では一日の早い時間に摂取することで効果を高めるとされています。これは「セカンドミール効果」と呼ばれ、ファーストミール(初めにとる食事)が、セカンドミール(次の食事)後の血糖値に影響を及ぼす考え方です。例えば、朝食に水溶性食物繊維を取り入れると昼食後の血糖値上昇を抑える効果が期待できるということです。また、サプリメントの場合は食前に飲むことで、食事による糖やコレステロールの吸収を抑える効果が得られやすいとされています。

「水溶性食物繊維」についてよくある質問

「水溶性食物繊維」についてよくある質問

ここまで水溶性食物繊維について紹介しました。ここでは「水溶性食物繊維」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

水溶性食物繊維を簡単に摂取する方法はありますか?

中島 三容子中島 三容子

納豆に刻んだオクラを混ぜるだけのネバネバの組み合わせは、水溶性食物繊維が多く含まれている食品を一度に簡単に摂ることができます。

バナナに水溶性食物繊維は含まれていますか?

中島 三容子中島 三容子

バナナに水溶性食物繊維は含まれていますが、多くはありません。その割合は不溶性食物繊維がほとんどで、バナナ100gに水溶性食物繊維0.1g、不溶性食物繊維1.0gが含まれています。

編集部まとめ

人の健康に欠かせない様々な生理機能があり、第6の栄養素といわれる食物繊維ですが、現在の日本人の摂取量は目標量に対して大幅に不足している状況です。特に水溶性食物繊維は不溶性食物繊維とあわせて意識して毎日の食事にプラスしていく必要があります。このことから、日本人の通常の食生活では食物繊維を摂り過ぎることはほとんどありませんが、いわゆるサプリメントなどで多量に摂り過ぎるとミネラルなどの吸収を妨げることもあるため、食物繊維を含むサプリメントなどを摂取する際は、医師や薬剤師に相談することをお勧めします。

「水溶性食物繊維」と関連する病気

「水溶性食物繊維」と関連する病気は10個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

内科の病気

  • 肥満症
  • 高LDL-コレステロール血症
  • 高血圧症
  • 高尿酸血症・痛風

循環器内科の病気

脳神経外科の病気

消化器内科の病気

「水溶性食物繊維」と関連する症状

「水溶性食物繊維」と関連している、似ている症状は3個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

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