「糖尿病の診断基準」はご存知ですか?診断された後の注意点も解説!【医師監修】

健康診断で血糖値が高め、糖尿病予備軍などといわれ、不安を感じたことはありませんか? 糖尿病は進行すると合併症を引き起こすリスクがあり、早期発見と予防が大切な病気です。本記事では、糖尿病の診断基準、血糖値やHbA1cの数値による判定区分、さらにそれぞれの区分に応じた対処法を解説します。

監修医師:
林 良典(医師)
消化器内科
呼吸器内科
皮膚科
整形外科
眼科
循環器内科
脳神経内科
眼科(角膜外来)
目次 -INDEX-
糖尿病の検査、診察の流れと診断基準

糖尿病と診断されるまでの流れを教えてください
健康診断・人間ドックでの指摘
糖尿病の初期は自覚症状に乏しく、健康診断の血液検査における異常値が発見のきっかけとなることが多いです。
医療機関を受診
1度の採血の結果で糖尿病の診断がつく場合もありますが、診断のために再度検査が必要な場合もあります。健康診断がきっかけの場合は、健康診断と受診した際の採血の結果を使用します。
診断
問診や医師による診察、血液検査の結果から診断します。
糖尿病は自覚症状に乏しく、健康診断や、ほかの理由で医療機関を受診した際に偶然見つかることが多いです。
糖尿病かどうかを確かめるためにどのような検査を行いますか?
- 空腹時血糖値:10時間以上絶食した状態で測定した血糖値
- 随時血糖値:時間や絶食などの条件なしに測定した血糖値
- 75OGTT2時間値:75gのブドウ糖が溶けた液体を飲んで2時間後の血糖値
通常健康診断では10時間以上の絶食状態での採血となるため、空腹時血糖値とHbA1cの結果から診断がなされます。
また、HbA1cとは、直近1〜2ヶ月の平均の血糖状態を反映する指標です。
このように糖尿病の主な診断方法では、現在の血糖値と過去の血糖の状態を用いて判断を行います。
糖尿病の診断基準を教えてください
- 空腹時血糖値が126mg/dL以上
- 随時血糖値が200mg/dL以上
- 75gOGTT2時間値が200mg\dL以上
- HbA1cが6.5%以上
そして、下記を満たすと糖尿病と診断されます。
- 同日もしくは異なる日の採血で①から③のいずれかと④を満たす
- 異なる日の採血で①から③のいずれかを満たす
- ①から③のいずれかに加え、典型的な糖尿病症状もしくは糖尿病網膜症を認める
このようにいくつかのパターンで糖尿病は診断にいたります。
糖尿病の判定区分

糖尿病の判定区分について教えてください
境界型とはどのような状態ですか?
糖尿病型と判定された場合は糖尿病が確定しますか?
- 血糖値とHbA1cが両方とも糖尿病型の場合
- 典型的な糖尿病症状(口渇、多飲、多尿、体重減少など)や確実な糖尿病網膜症があり、血糖値が糖尿病型の場合
すなわち、以下の場合には糖尿病とは診断されません。
- 血糖値のみが糖尿病型の場合
- HbA1cのみが糖尿病型の場合
この場合は、別の日に再度採血を行い、その検査結果が糖尿病型であれば糖尿病と診断されます。なお、HbA1cのみが2回糖尿病型と判定された場合も糖尿病とは診断されません。血糖値が1度は糖尿病型であることが診断には必須となります。
正常型のうち正常高値について教えてください
糖尿病や糖尿病疑いと診断された場合の対処法

糖尿病と診断された場合、生活はどのように変わりますか?
糖尿病には、1型糖尿病と2型糖尿病があり、タイプによって診断後の生活が異なります。
1型糖尿病とは、身体の免疫機能が自身の膵臓にあるβ細胞を破壊してしまい、インスリン分泌ができなくなっている状態です。この場合には、生活習慣が原因ではないため、食事や運動の厳しい制限ではなく、生涯にわたってのインスリン治療により管理をします。
一方、2型糖尿病は、インスリンの働きが悪くなったり、分泌量が不足したりすることで起こります。遺伝的要因も関与しますが、生活習慣も関与し、特に以下の3つが代表的な原因と考えられています。
- 過剰カロリー摂取による肥満
- 高脂肪食摂取
- 運動不足
このいずれにおいても、インスリン抵抗性(体内でのインスリン作用の低下)を招くとされています。そのため2型糖尿病の場合は、薬による治療に頼るのではなく、自身の生活習慣の改善が治療の主体となります。
また、どちらのタイプであっても、血糖を適切にコントロールし、合併症を防ぐことは大切です。合併症の有無を確認するための定期的な検査も欠かせません。
糖尿病疑いと判断されたときに気を付けることを教えてください
具体的には以下のような生活習慣を心がける必要があります。
規則正しくバランスのよい食事
1日の食事回数を減らすことや過度な糖質制限は、かえって1回の食事で脂質や塩分のとりすぎにつながることもあり、推奨されません。また、過食、間食、バラバラな時間の食事も血糖の乱れにつながります。1日3食で、偏りのない食事をとることが大切です。
定期的な運動
運動に関しては、有酸素運動やレジスタンス運動(筋力トレーニング)の組み合わせや、週に150分以上の運動が有効などという報告はあります。しかし、何よりも大切なことは一人ひとりに合った運動習慣を、主体的に続けられることです。まずは、糖尿病疑いと判断された際には、1日の間で動いていない時間を少しでも減らすことから始めることをおすすめします。
また、食事や運動のみならず、睡眠不足やストレスも糖尿病の発症リスクです。そのため、生活の基本である、食事・運動・睡眠の質を向上させ、ストレスを溜めすぎないことが重要です。
糖尿病と診断されるとどのような治療が行われますか?
2型糖尿病と診断された際は、必ずしも薬物療法が開始されるとは限りません。インスリンによる速やかな血糖管理を要さない場合には、生活習慣の改善から始めます。しかし、改善が見込めない場合には、血糖降下薬を使用します。しかし、薬物療法が始まったとしても、治療の基本は生活習慣であることは忘れてはなりません。
編集部まとめ

糖尿病は現代の医学でも発症すると完治が難しいとされています。また、自覚症状にも乏しいため、気が付かないうちに発症している可能性もあります。本記事で述べたように、2型糖尿病は生活習慣に起因する側面もあるため、発症しないように予防することが大切です。定期的に健康診断をうけ自分の身体の状態を確認することも重要です。この機会にぜひ自分の生活を見直してみましょう。




