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「急性大動脈解離」で急死する前に現れる症状はご存知ですか?急死する原因も解説!

 公開日:2025/09/24
「急性大動脈解離」で急死する前に現れる症状はご存知ですか?急死する原因も解説!

急性大動脈解離で急死する原因・急死する前の症状とは?メディカルドック監修医が急性大動脈解離で急死する原因・症状・なりやすい人の特徴・検査・治療法などを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

藤井 弘敦

監修医師
藤井 弘敦(医師)

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三重大学医学部卒業。沖縄県立中部病院で初期研修、河北総合病院で外科研修を経て現在は菊名記念病院で心臓血管外科医として日々手術・重症者管理を行っている。医療用アプリの開発や在宅診療、海外で医療ボランティアを行うなど幅広く活動している。外科専門医、腹部ステントグラフト実施医/指導医、胸部ステントグラフト実施医、米国心臓病学会ACLSプロバイダー、日本救急医学会JATECプロバイダーの資格を有する。

「急性大動脈解離」とは?

急性大動脈解離とは、大動脈の壁が裂けてしまう重篤な疾患です。

大動脈は、心臓から全身へ血液を送り出すための人体で最も太い血管です。大動脈の壁は「内膜」「中膜」「外膜」という三層構造をしており、それぞれが密接に連携して強固な構造を形成しています。

何らかの原因でこの血管内膜に裂け目ができると、血液が本来の経路(真腔)ではなく、中膜の層へと流れ込み、新たな空間「解離腔・偽腔(ぎくう)」を形成します。この偽腔にどんどん血液が入り込み偽腔が拡大することで真腔が圧迫され、血流が阻害されてしまいます。 これが大動脈解離の病態です。

急性大動脈解離は、解離が及んでいる範囲により大きく2つのタイプに分けられます。心臓からすぐのところにある上行大動脈に解離が生じている「スタンフォードA型」と、上行大動脈に解離が及んでいない「スタンフォードB型」です。A型は特に緊急性が高く、手術などの迅速な治療介入が求められます。

急性大動脈解離で急死する原因

急性大動脈解離は数分から数時間で急死してしまうこともあります。ここでは代表的な急死してしまう原因を紹介します。
どの原因も体の外からは見えず、しかも数分以内に起こり得るものです。対応できる科は心臓血管外科です。

大動脈の破裂

大動脈の外側の膜(外膜)まで裂けてしまうと体の中で大量出血が起こります。その結果数分で心臓が止まることもあります。

心タンポナーデ

血管が裂け、それが心臓の膜に逆行性に血液が流れ込むと血液が心臓の周りにたまり、心臓が圧迫されて動けなくなります。そうなると血液循環が破綻し、突然心停止することもあります。

心筋梗塞

解離した血管が心臓自体に血液を送る血管(冠動脈)の入り口をふさいでしまうと、心臓に栄養や酸素がいかず心筋梗塞の状態になります。急性大動脈解離で起こる心筋梗塞は急激に冠動脈の根本から塞いでしまうため、通常の心筋梗塞より重篤で、急死につながります。

脳梗塞

大動脈から脳に枝分かれしている血管に裂け目が広がることで、脳への血流が途絶えます。手足の麻痺が起こったり、巻き込まれた血管によっては呼吸が止まったり、意識を失ったりすることもあります。 脳神経外科だけでなく、循環器科や心臓血管外科と連携できる病院で緊急対応が必要です。

臓器の血流障害(腸・腎臓・下肢)

裂けて生じた偽腔が臓器に行く血流をふさぐことで、腸や腎臓、足などに血が届かなくなります。腸が壊死したり、腎不全を起こしたりすると命に関わります。

急性大動脈解離で急死する前に現れる症状

症状の出方には解離した血管の場所により差がありますが、「急死」に至る前に、体がSOSを出すことがあります。 どの症状も一分一秒を争うものですので直ちに救急車を呼びましょう。 

突然の激しい胸や背中の痛み

最も典型的な症状で、「引き裂かれるような」「今まで経験したことのない」痛みと表現されます。痛みは解離の進行に伴って背部や腹部、下肢へ移動することもあります。
このような痛みが出現した場合、自宅で安静にすることは非常に危険ですので直ちに救急車を呼ぶべきです。

失神・意識障害

心臓や脳への血流障害が起きると、突然意識を失ったり、けいれんや意識障害が出現したりすることがあります。これらは、心臓の周囲に出血する「心タンポナーデ」や脳へ行く血管が解離することで起こる脳血流低下に起因します。

手足の麻痺・言葉が出にくい

大動脈解離が脳を栄養する血管に及んだ場合、脳梗塞のような症状(片側の手足が動かしにくい、言葉が出ない、ろれつが回らないなど)が出ることがあります。下行大動脈が障害されると、足のしびれや麻痺が出現することもあります。このような症状があれば循環器内科や心臓血管外科、救急科をすぐに受診してください。

急性大動脈解離になりやすい人の特徴

大動脈解離は、誰にでも起こりうる病気ではありますが、特に以下のような特徴をもつ人は発症リスクが高いため注意が必要です。

高血圧のある中高年男性

大動脈解離は70歳以上の男性に多くみられます。加齢に伴い血管の壁が硬くもろくなりやすくなることが要因とされており、特に高血圧を合併している高齢男性は注意が必要です。

動脈硬化がある人

動脈硬化は、大動脈の壁を脆弱にし、解離を起こしやすくする重要な危険因子です。高血圧・脂質異常症・糖尿病・喫煙・肥満などの生活習慣病が動脈硬化を進行させるため、これらを有する方は発症リスクが高まります。特に喫煙は最も重要な危険因子の一つであり、禁煙によってリスクを下げることが可能です。予防には、バランスの取れた食事、適度な運動、規則正しい生活を心がけ、血圧や血糖値、コレステロール値を良好に保つことが重要です。

遺伝性疾患を持つ人

マルファン症候群やエーラス・ダンロス症候群など、結合組織に異常を持つ遺伝性疾患では、血管壁が生まれつき弱いため、若年でも大動脈解離を発症することがあります。
また、家族に大動脈疾患の既往がある人もリスクが高く、定期的な検査が勧められます。

急性大動脈解離の検査法

大動脈解離の診断には、迅速かつ正確な画像診断が欠かせません。ここでは代表的な3つの検査についてご紹介します。

胸部レントゲン

簡便に行える初期検査です。大動脈の拡大や縦隔(左右の肺の間にある部分)の広がりなどが見られることがありますが、異常所見がみられないことも少なくありません。
検査自体は短時間で終わり、痛みもなく被ばく量も少ないため、多くの医療機関で一般的に行われています。しかし確定診断には他の画像検査が必要です。
救急外来で採血と並んで最初に行うことが多い検査です。しかしこれだけでは診断できないため、多くの場合は追加検査を行います。

心臓超音波検査(心エコー)

超音波で心臓や大動脈の状態を観察します。大動脈解離により心臓の外側に血液がたまっていないか(心タンポナーデ)、大動脈の付け根が広がっていないか、上行大動脈が裂けていないかなどを調べます。体に負担が少なく、移動が難しい場合でもベッドサイドで実施できる非常に有用な検査です。
異常があれば即入院して治療を受けます。

CT・MRI検査

造影剤を使用したCTは、大動脈解離の確定診断に欠かせない検査です。解離の範囲や偽腔の広がり、臓器虚血の有無を詳しく確認できます。
造影剤アレルギーがある、妊娠中の方など、造影CTが施行できない場合はMRIを使用することもあります。しかし、検査時間が長くかかるため、全身状態の不安定な急性期には不向きです。 大動脈解離の診断がつければ入院です。治療内容によっては数週間の入院が必要です。

急性大動脈解離の治療法

大動脈解離の治療は、解離の型(Stanford A/B)と病態、合併症の有無によって異なります。 基本的には、「A型」は緊急手術の対象となることが多く、「B型」や偽腔が閉塞したタイプでは内科的治療が選択されることがあります。

人工血管置換術

上行大動脈に解離が及ぶStanford A型では、心臓の周囲の出血が心臓を圧迫する心タンポナーデが起こります。また、血管の解離が、上行大動脈の側にある大動脈弁に障害を与えたり(大動脈弁逆流)、冠動脈を閉鎖(心筋梗塞)したりすることもみられます。こうした理由から、命を救えないケースが多くあります。そのため、多くの患者さんは緊急手術の対象となります。
「人工血管置換術」は、解離した大動脈の部分を切除し、人工血管で置き換える方法です。置き換える部位に応じて、「上行置換術」「弓部置換術」「下行置換術」などと呼ばれます。
手術中には、体温を下げて全身の血液循環を一時的に止める「循環停止」と呼ばれる操作を行います。これは臓器を守りつつ安全に手術を行うための重要な手技ですが、体への負担はどうしても大きくなります。 術前の状態や術後の合併症、リハビリの進み具合によって変わりますが、入院期間は2〜4週間ほどです。

ステントグラフト内挿術

カテーテルと呼ばれる細い管を足の付け根や腕の血管から挿入し、「ステントグラフト」(ステントといわれるバネ状の金属を取り付けた人工血管)を大動脈の内側に留置する治療法です。主にStanford B型で実施する機会が多いです。
この方法は胸やお腹を大きく切開する必要がなく、人工血管置換に比べて体の負担も軽く、術後の回復が早いのが特徴です。特に高齢の方や他の病気があって開胸手術が難しい方に適しています。ただし、血管の形や状態によっては適応できない場合もあり、その場合は人工血管置換術と組み合わせた「ハイブリッド手術」を行うこともあります。 術前後の状態によって入院期間は大きくかわります。

内科的治療(保存療法)

Stanford B型大動脈解離で、破裂や臓器への血流障害がない場合には、痛みのコントロールと厳格な血圧や脈拍の管理を行います。これにより大動脈への負担を減らし、症状の悪化や解離の進行を防ぎます。しかし、血流の低下による腹痛や足の痛みなどの症状が見られた場合は、緊急手術が必要になることもあります。
内科的治療で急性期を乗り越えることができるのであれば、入院期間は2週間ほどです。

「急性大動脈解離」についてよくある質問

ここまで急性大動脈解離などを紹介しました。ここでは「急性大動脈解離」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

ストレスが原因で急性大動脈解離を発症することはありますか?

藤井 弘敦藤井 弘敦 医師

強いストレスが直接の原因になることは少ないですが、慢性的なストレスや睡眠不足などでは血圧が上がったり、血圧が不安定になったりすることが大動脈解離発症の引き金になることがあります。睡眠や休養を大切にしましょう。

編集部まとめ

急性大動脈解離は、ある日突然起こり、わずかな時間で急死してしまう可能性がある病気です。特に「胸や背中の激しい痛み」「失神・意識障害」「手足の麻痺」といった症状が出た場合には、ためらわずに救急要請をすることが重要です。
発症のリスクが高いのは、高血圧を持つ中高年の方や動脈硬化のある方、また遺伝性疾患を抱える方です。診断には造影CTが不可欠で、治療は外科手術やステント治療、薬による内科的治療などが状況に応じて行われます。
また、発症を未然に防ぐためには、日頃から血圧を安定させ、生活習慣を整えることが欠かせません。規則正しい生活を送り、持病がある方は医療機関での定期的なチェックを行いましょう。

「急性大動脈解離」と関連する病気

「急性大動脈解離」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

循環器内科の病気

脳神経内科の病気

生活習慣病が原因となることが多いため、普段の生活習慣を見直し、問題があるようであれば改善させることが発症予防に重要です。

「急性大動脈解離」と関連する症状

「急性大動脈解離」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 背中の痛み
  • 呼吸困難
  • 失神
  • 心肺停止

大動脈解離は病院到着までに半数以上が死亡し、病院到着後も致死率が高いという非常に緊急性の高い病気です。上記のような症状が急に見られた場合には、すぐに救急車を呼んで受診してください。

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