「WPW症候群の症状」はご存じですか?見逃し要注意の“心臓のサイン”を医師が解説!

WPW症候群の症状とは?メディカルドック監修医がWPW症候群の症状・A型、B型、C型それぞれの症状・原因・なりやすい人の特徴・治療法などを解説します。

監修医師:
桑原 優大(医師)
2010年昭和大学医学部卒業(2025年度時点で医師16年目です) 初期臨床研修修了後、都内病院にて心臓血管外科後期研修後、福井県で救急総合診療部で後期研修し、その後再度都内病院で心臓血管外科で医長として勤務。 現在(2025年度〜)は都内循環器クリニックにて地域医療に従事。
【保有資格】
循環器専門医 救急科専門医
外科専門医 心臓血管外科専門医
修練指導医 成人先天性心疾患専門医
難病指定医
目次 -INDEX-
「WPW症候群」とは?
WPW症候群は、生まれつき心臓に電話線のような”余分な電線”(副伝導路:ケント束)があることで、心房と心室の間の信号伝達が正常ルート(房室結節)を通らず、この線を使って早く伝わる状態を指します。その結果、心電図に「デルタ波」が現れることが最大の特徴です。
心電図で診断される疾患であり、30代以下の若年者に頻発し、1000人に1-2人に見られますが、そのうち約60~70%が一度も症状がないまま経過するとされています。
WPW症候群のA型・B型・C型とは?
心電図上のデルタ波の形から、古典的にはタイプが分けられます。
- A型:左心室側の副伝導路。前胸部V1誘導でデルタ波が「陽性」。
- B型:右心室側。V1では「陰性」。
- C型:その中間、もしくは複数同時に該当するタイプとして一部で使用。
しかし分類はあくまで心電図パターンによる識別で、臨床症状や治療法の本質的違いはありません。
現在では、単に副伝導路の位置(左側、右側、中隔)として理解されることが主流です。
WPW症候群の代表的な症状
多くは無症状で健診などで発見されることが多いですが、頻拍発作が起こると症状が出ます。
上室性頻拍では心拍数150-220回/分程度、ドキドキ感、動悸、息苦しさ、胸痛など。突然始まり突然終わることが多いです。
心房細動を合併すると、心房からの信号が副伝導路を通って心室に高速伝導され、心拍が時に300回/分を超えることもあり、めまいや失神、最悪の場合、心室細動による心停止を招くリスクがあります 。
小児期の症状としては、極端な頻拍時には青白い顔色(チアノーゼ)、呼吸苦、ぐったり、哺乳不良、腹痛があるなど、成人とは別の形で現れることもあります。
ドキドキ感、動悸、息苦しさ、胸痛
頻拍発作が持続した場合、迷走神経刺激(息こらえなどバルサルバ法・冷水で顔を洗うなど)の反射により心拍数を抑えられる可能性があります。症状軽減に有効とされています。
通常の動悸ならまずは内科または循環器科の外来受診で心電図検査を。動悸+胸痛・呼吸苦・失神がある場合は、救急対応が必須で迅速に評価・治療を。受診時には「心拍数、発作の持続時間、誘因、家族歴(突然死など)」を医師に提示することで、リスク評価の助けになります。
心臓の拍動異常(頻拍)
心房細動を合併し、血圧などが不安定な際には、カルディオバージョン(同期除細動)を迅速に実施することが必要です。心房細動時の注意として、副伝導路への伝導を促進してしまうβ遮断薬やカルシウム拮抗薬(アデノシンを含む)は禁忌です。Ia群やⅠc群の抗不整脈薬かカルジオバージョンが推奨されます。循環器科での緊急対応が必要です。
めまい、失神
極端な頻拍により脳血流が低下すると、めまいや失神を引き起こします。これらは心停止(心室細動)へ移行する前兆の可能性もあり、極めて緊急性が高い状態です。直ちに救急車を要請し、高度な不整脈治療が可能な循環器専門病院を受診してください。
【子供】WPW症候群の代表的な症状
動悸・息苦しさ・顔色が悪くなる・ぐったりする
頻拍発作が起こると動悸・息苦しさ・顔色が悪くなる・ぐったりするなどの症状が出ます。
乳児では母乳やミルクを飲まない、ミルクを続けて飲めない、汗をすごくかく、チアノーゼ、呼吸が速いなど。全身症状として、ぐったりして反応が悪くなるケースもあります。
家庭ではまず迷走神経刺激法(刺激量は慎重に、瞼の上から眼球圧迫、頸動脈洞マッサージ、冷水に顔をつけるなど)が考えられますが、乳児は医療機関へ直行することが推奨されます。
子供のWPW症候群の頻拍発作は小児循環器・救急で迅速対応。ぐったり・チアノーゼ・食べられない, 嘔吐や腹痛などの状態は心停止の前段階の可能性もあり、即救急搬送が必須です。
WPW症候群A型の代表的な症状
頻拍発作、心悸亢進、失神
A型(左側副伝導路)特有の症状はありません。通常のWPW症候群と同様に、頻拍発作、心悸亢進、失神などが出る可能性があります。対処法・処置・受診判断も他型と同様です。分類は心電図波形上のパターンに基づくもので、急性期や治療法には直接影響しません。動悸等の症状がある場合は循環器科を受診しましょう。
WPW症候群B型・C型の代表的な症状
頻拍発作、不整脈症状
上記A型同様、B型・C型についても臨床症状や処置、受診タイミングに差異はありません。いずれも診断/治療は副伝導路の位置を評価・カテーテルアブレーションに備えるための重要情報として使われます。自覚症状がある場合は放置せず、循環器専門医による精査を受けてください。
WPW症候群の主な原因
先天的異常(ケント束)
先天的に胎児期に房室間に余分な筋線維が残存することで起きます。これが原因で心房と心室の間に正常なルート以外の電気の通り道ができてしまいます。
遺伝的要因
稀に家族性で、PRKAG2遺伝子変異が関連(心肥大合併例)するようです。心機能低下や不整脈の症状が出る場合があるため、家族歴がある場合は循環器科での定期的なチェックが推奨されます。
先天性心疾患の合併
先天性心疾患との合併でEbstein病では20〜50%にWPW症候群を認め、副伝導路が複数・再発難易度高めのため専門的治療必要です。
WPW症候群になりやすい人の特徴
性差と年齢
性別は男性にやや多い(男性:女性=約2:1)です。好発年齢は二峰性(生後直後/学童以降)で発症することが保存的に知られており、10~30代に最も多いです。
特定の疾患を有する方
Ebstein病など特定の先天性心疾患を持つ方はWPW症候群の頻度が高めです。
遺伝的背景
特定の遺伝子変異(PRKAG2等)を持つ家族歴がある場合、発症しやすくなります。生活習慣との明らかな関係は未解明ですが、過労やストレスが発作を誘発する一因となる可能性があります。
WPW症候群の治療法
カテーテルアブレーション
最終的には循環器内科医(循環器専門医、不整脈専門医)によるカテーテルアブレーションが推奨されます(成功率95%、再発5%未満)。早期のカテーテルアブレーションは“短期入院”。創部管理と経過観察に1〜2泊程度です。
薬物療法
投薬として上室性頻拍で迷走神経刺激法後にβ遮断薬・カルシウム拮抗薬、より危険な心房細動合併ではプロカインアミドなどの抗不整脈薬(Ⅰa,Ⅰc群)やカルディオバージョンなどが適応です。循環器科の外来または入院下で行われます。
経過観察
発作未経験の無症候性で低リスク(運動テストでデルタ波消失)の場合、まずは経過観察となります。リハビリというより生活指導(過労・カフェイン・飲酒制限)を含むフォローアップが大切です。
「WPW症候群の症状」についてよくある質問
ここまでWPW症候群の症状について紹介しました。ここでは「WPW症候群の症状」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
WPW症候群を発症すると疲れやすくなるのでしょうか?
桑原 優大(医師)
WPW自身が直接「持続疲労」を引き起こすことは少ないですが、頻拍発作が起きると極度の疲れを感じることがあります。発作が頻回・長時間になると心機能への負担で一時的に疲れやすくなり、活動耐性の低下や息切れも出やすくなります。発作がなければ日常的な疲労感は少ないとされています。
まとめ
WPW症候群は「生まれつきの余分な電線」による異常伝導が原因。多くは無症状ですが、発作時には動悸・めまい・失神の可能性あり。型(A/B/C)は心電図上の分類であり、治療方針に本質的差はありません。小児/成人ともに、迷走神経刺激や薬物療法、必要であればカテーテルアブレーション(循環器専門医)で治療可能。家族性・Ebstein病合併例はリスクが高く、専門対応が望ましい。無症状でも将来リスクがある場合に備え、経過観察・検査を行います。疲れやすさは「頻拍発作時の後遺症」であり、常に感じるわけではありません。
「WPW症候群」に関連する病気
「WPW症候群」から医師が考えられる病気は4個ほどあります。
各病気の詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
健康診断の心電図検査で見つかる病気でもあり、30代以下の若年者に多く、1000人に1-2人に見られますが、3人に2人は一度も症状がないまま経過すると言われています。
「WPW症候群」に関連する症状
「WPW症候群」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状の詳細についてはリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
子供の場合は、母乳やミルクを飲まない、ミルクを続けて飲めない、汗をすごくかく、チアノーゼ、呼吸が速いなどの症状が見られることもあります。
参考文献
- 最新ガイドラインに基づく循環器疾患 診療指針(2024-2025)総合医学社
- 今日の診療指針(2024) 医学書院


