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「WPW症候群」の症状や原因はご存知ですか?医師が監修!

 公開日:2023/09/26
「WPW症候群」の症状や原因はご存知ですか?医師が監修!

WPW症候群とは、心臓の正常な伝導路と別に伝導路があることで、心拍数が速くなる病気です。先天性の病気で、症状がいつ頃現れるのかは個人差があります。

主な症状は頻拍発作で、ある日突然心拍数が速くなり、同期・息切れ・ふらつきなどの症状が現れるでしょう。

症状がひどい場合や生活に支障があり根治したい場合は、カテーテルアブレーションにより安全に治療することが可能です。

本記事では、WPW症候群の概要や原因・症状・治療法を解説します。「軽い運動で息切れする」「心電図検査でWPW症候群といわれた」という方は、ぜひ参考にしてください。

竹内 想

監修医師
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)

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名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。

WPW症候群とは

手首

WPW症候群とはどのような病気ですか?

WPW症候群とは、心臓の正常な伝導路と別の「副伝導路」が存在する病気です。生まれつき存在しているといわれ、心拍数が異常に速くなる「頻拍」の症状がみられます。名前の由来は、この病気を発見した3人の研究者「ウォルフ」「パーキンソン」「ホワイト」の名前をとって「ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群」になりました。
一般的に、心臓の拍動は右心房にある「洞結節」から規則正しいリズムで発生し、この電気信号が電線を伝わり心臓全体を刺激することで起こります。通常1箇所しかない電線が2つもしくは3つ以上存在するのがWPW症候群です。そのため、電気信号が正常な方よりも速く伝わることにより、不整脈が起こります。
具体的には、胸がドキドキしたりチクチクしたりすることが多いでしょう。生まれつき持っている病気ですが、10代のうちから症状が出る方もいれば無症状の方もいます。カテーテルアブレーション(高周波カテーテル焼灼術)と呼ばれる手術で、根治が可能です。
病気の発見は、健康診断で行う心電図でわかる場合もあれば、さらに詳しい検査が必要になる場合もあるでしょう。

どのくらいの人が発症しますか?

WPW症候群は、生まれつき抱えている方でも発症しない場合があるため、どのくらいの割合で発症するかはわかっていません。
しかし、WPW症候群を生まれつき抱えている方は、800〜1000人に1人の割合で存在するといわれています。成人の健康診断で発見されるのは、10万人に4〜6人といわれ、極めて稀な病気です。
さらに、生まれつきWPW症候群を抱えている方でも、不整脈や動悸などの症状が10代の頃からみられる方もいれば、検査で発見されたものの症状がない方もいます。
しかし、運動中や車の運転中に突然症状が出る可能性があるため、WPW症候群と診断されてすぐに手術を望む方もいることが現状です。

WPW症候群はいつ発症しますか?

WPW症候群は生まれつき抱えている病気ですが、10代または20代前半で明らかになることが多いです。また、1歳未満で症状が出たり、60歳以上ではじめて不整脈と診断される方もいます。明らかになる理由は、一般の健康診断で行う心電図検査で発見できるためです。
特に、頻拍発作の症状がない方は日々の生活で心臓の異変に気づきません。突発的に症状が現れるか、心電図検査で発見されるかで、自身の体の状況を把握できるでしょう。

WPW症候群はどのように診断されますか?

WPW症候群は、心電図検査で発見できます。心電図をとると「デルタ波」が現れる点が特徴です。そのため、頻拍発作の症状がない場合でもWPW症候群と診断される場合があります。
一方で、頻拍発作の症状がある場合でも、心電図検査でデルタ波がない場合があります。その場合は、エコー検査を行い詳しく調べることになるでしょう。
なお、心電図検査のデルタ波の発見により診断されるものを「顕在性WPW症候群」といい、デルタ波がない状態でエコー検査で診断されるものを「潜在性WPW症候群」といいます。

WPW症候群の寿命はどれくらいでしょうか?

WPW症候群を患っていて突然死する確率は、0.01〜0.03%です。1万人に1〜3人の割合になります。突然死する確率がゼロではないため注意が必要ですが、寿命を気にするような病気ではありません。
近年では、突然死する場合の電気生理学的特徴がわかってきているため、検査することである程度予測ができるでしょう。

WPW症候群の原因・症状

痛がる女性

WPW症候群の原因はなんですか?

WPW症候群は先天的な心臓の病気です。生まれつき正常な伝導路とは別の「副伝導路」があり、通常よりも速く伝わることで不整脈が起こります。また、過去の研究結果で、明確に「WPW症候群が遺伝する」という報告はありません。
しかし、親子でWPW症候群を患っている症例が報告されており、遺伝により発症することが完全に否定できない状況です。家族にWPW症候群の方がいる場合は、早めの検査をおすすめします。

WPW症候群の症状について教えてください。

WPW症候群の症状は、頻拍発作を起こすことです。WPW症候群の患者さんは、普段の生活では何の症状もありません。あるとき突然頻拍発作を起こすため注意しましょう。頻拍発作には次の2種類があります。

  • 房室回帰頻拍
  • 心室早期興奮を伴う発作性心房細動

房室回帰頻拍とは、WPW症候群で多くみられる頻拍発作です。正常な伝導路と副伝導路を通じて心房と心室の間を電気刺激がグルグルと回ることで起こります。房室回帰頻拍は、通常150〜250拍の速い脈が「突発的に始まり突然終わる」ことが特徴です。主な症状は、動悸・ふらつき・胸痛・息苦しさなどがあり、一般的に「命の危険はない」とされています。
一方で心室早期興奮を伴う発作性心房細動とは、心房内のあらゆるところで無秩序な電気刺激が起こり、心房が震えるような状態になる不整脈です。よくみられる不整脈の症状で、それほど悪い状態ではないとされています。しかし、副伝導路の伝達が良い場合は心拍数が増え、毎分240〜300拍以上になり呼吸困難・意識消失などの症状が現れかねません。
さらに、極めて稀な症状ですが「心室細動」に移行する可能性があります。心室細動とは、最も悪性度の高い不整脈で、最悪の場合は死に至る可能性もあるでしょう。

WPW症候群の治療

OKサインをしている医師

WPW症候群の治療法について教えてください。

WPW症候群の治療法は、次の2つです。

  • 正常な心拍に回復させる手技・薬剤
  • カテーテルアブレーション

WPW症候群による頻拍発作は、手技によって迷走神経を刺激することで心拍数を低下させます。迷走神経を刺激する手技は、頻拍発作が始まった直後に行うことで効果が期待できるでしょう。この手技で効果がみられない場合は、静脈注射を投与します。
頻拍発作を停止させるには、アデノシン・ベラパミルなどの薬品が一般的です。患者さんが10歳未満の小児や乳児の場合は、ジゴキシンを使用します。ジゴキシンは、成人が使用すると心房細動が心室細動に進行するリスクがあるため、10歳を超えると投与を中止することが通例です。
また、WPW症候群を根治するには、カテーテルアブレーションという手術を行います。カテーテルアブレーションとは、心臓に挿入したカテーテルで高周波の電磁波を照射して副伝導路を破壊する手術です。
この手法で、ほとんどのWPW症候群が治療され、不整脈の薬も不要になります。以前は心臓手術により副伝導路に直接メスを入れる手術が行われましたが、現在はカテーテルによる手術が行われ、患者さんへの負担が軽減されています。

無症状でも治療が必要ですか?

WPW症候群が無症状の場合は、必ずしも治療する必要はありません。頻拍発作を生じない限り、治療する必要がないためです。頻拍発作を生じない場合は、医師の診断を仰ぎつつ、経過観察で良いでしょう。
ただし、パイロットや運転手・高所作業者など頻拍発作が業務上で影響するような職業の場合は、予防的にカテーテルアブレーションを受ける場合もあります。

手術は必要ですか?

WPW症候群は、必ずしも手術が必要な病気ではありません。例えば、頻拍発作の頻度が高い場合や、頻拍発作の影響で生活に支障が出る場合は手術を検討すると良いでしょう。ただし、WPW症候群を治療するために行う「カテーテルアブレーション」はそれなりのリスクを伴います。
近年では死亡事故の報告はありませんが、稀に心房ブロック・一過性脳虚血・大動脈閉鎖不全などの事故が報告されています。確率は0.5〜0.7%程度といわれており、1000人に5〜7人の確率です。
このようにカテーテルアブレーションによって大きな病気に発展する可能性がゼロではないため、担当医師と十分に相談して手術を行うかどうかを検討しましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

WPW症候群は先天性の病気で、あるとき突然不整脈と同じような頻拍発作の症状が現れます。基本的には、突然始まり突然終わるものが多く、それ以上症状がひどくなければ手術の必要はありません
仮に症状が良くなく手術を行う場合でも、カテーテルアブレーションによって治療が行えます。ほとんどの確率で頻拍発作に怯える生活から抜けられるようになるため、担当医師と相談の上治療を進めましょう。

編集部まとめ

胸を押さえる女性
WPW症候群は、生まれつき心臓の正常な伝導路と別の伝導路が存在し、心拍数が非常に速くなる病気です。

必ずしも症状が現れるわけではなく、1歳で現れる方もいれば、生涯症状がない方もいます。

しかし「いつ発作が起こるかわからない」という不安を抱えて生きていくのは、精神的にも肉体的にも負担がかかることでしょう。

現在はカテーテルアブレーションによる手術で対応できるようになり、以前より安全に高い確率で根治できるようになりました。

WPW症候群でお悩みの方は、担当医師に相談の上、適切な治療を受けましょう。

この記事の監修医師