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「急性大動脈解離」を予防する可能性の高い「食べ物」はご存知ですか?医師が解説!

 公開日:2025/10/08
「急性大動脈解離」を予防する可能性の高い「食べ物」はご存知ですか?医師が解説!

急性大動脈解離の予防法とは?メディカルドック監修医が急性大動脈解離の原因・症状・予防する可能性の高い食べ物・発症のリスクを上げやすい食べ物・飲み物・予防するために大切な生活習慣・運動習慣などを解説します。

藤井 弘敦

監修医師
藤井 弘敦(医師)

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三重大学医学部卒業。沖縄県立中部病院で初期研修、河北総合病院で外科研修を経て現在は菊名記念病院で心臓血管外科医として日々手術・重症者管理を行っている。医療用アプリの開発や在宅診療、海外で医療ボランティアを行うなど幅広く活動している。外科専門医、腹部ステントグラフト実施医/指導医、胸部ステントグラフト実施医、米国心臓病学会ACLSプロバイダー、日本救急医学会JATECプロバイダーの資格を有する。

「急性大動脈解離」とは?

急性大動脈解離とは、大動脈の壁が裂けてしまう重篤な疾患です。

大動脈は、心臓から全身へ血液を送り出すための人体で最も太く重要な血管です。大動脈の壁は「内膜」「中膜」「外膜」という三層構造をしており、これらが一体となって強固な構造を形成しています。

しかし、何らかの要因でこの内膜に裂け目ができると、血液が本来の血流経路(真腔)ではなく、中膜の層へと流れ込み、新たな空間「偽腔(ぎくう)」を形成します。この偽腔にどんどん血液が入り込み偽腔が拡大することで真腔が圧迫され、血流が阻害されてしまいます。

その結果、心筋梗塞や脳梗塞、腸管虚血や腎機能障害など、重大な臓器障害を引き起こすことがあり、さらに外膜まで破れてしまう(破裂)と、致命的な出血をきたし、極めて高い確率で死亡に至る可能性があります。

急性大動脈解離は解離が及んでいる範囲により2つのタイプに分けられます。心臓に近い上行大動脈にまで及んでいるものを「スタンフォードA型」、上行大動脈には及んでいないものを「スタンフォードB型」と分類します。A型は特に緊急性が高く、手術などの迅速な治療介入が求められます。

急性大動脈解離の主な原因

急性大動脈解離は突発的に発症し、命に関わることもある重大な病気です。引き金となる原因はいくつかあり、ここでは特に関連が深いとされる4つの因子について、それぞれの特徴や注意点を紹介します。

高血圧

高血圧は急性大動脈解離の最も重要なリスク因子とされています。長期間にわたり血圧が高い状態が続くと、大動脈の内膜に負荷がかかりやすくなり亀裂が生じやすくなります。特に急激な血圧変動には要注意です。高血圧は自覚症状が乏しいことが多いですが、頭痛、めまい、胸の圧迫感を感じたときや、家庭で測定した(収縮期)血圧が繰り返し140mmHg以上を示す場合は、早めに内科や循環器内科で相談しましょう。また、脱水や強くいきむ行為、急激な寒暖差も血圧上昇の原因となるため、日頃から安定した体調管理を心がけることが大切です。

動脈硬化

動脈硬化とは、血管内壁に脂質やカルシウムなどが沈着し、血管が硬くなって弾力性を失った状態です。硬くなった血管壁は柔軟性を失うため、血圧の変動や血流による圧力に対して脆弱になり、解離が起こりやすくなります。喫煙、糖尿病、脂質異常症、運動不足などの生活習慣が動脈硬化に関与しています。自覚症状がないまま進行することが多いため、健診でコレステロールや血糖が高いと指摘された方、喫煙習慣のある方は特に注意が必要です。胸痛や歩行時のふくらはぎの痛みなどがある場合は、早めに循環器内科での診察を検討しましょう。

年齢

加齢に伴い血管の柔軟性は失われ、次第に硬くなっていきます。このため、年齢が高くなるほど急性大動脈解離のリスクは増加します。発症は70歳代に多くみられ、高齢者が急な胸や背中の痛みを訴えた場合には特に注意が必要です。高血圧や動脈硬化の既往がある場合は、定期的に主治医と相談し、必要に応じた検査を受けておくことが安心につながります。

遺伝性疾患

マルファン症候群やエーラス・ダンロス症候群などの遺伝性疾患を持つ方は、生まれつき血管壁が弱いため、若年であっても急性大動脈解離を発症するリスクがあります。これらの疾患では、高身長や細長い手足、関節の過可動、視力異常、心臓弁膜症などが見られることがあり、家族歴がある場合は特に注意が必要です。心配な方は循環器内科の受診や遺伝カウンセリングを検討してみましょう。

急性大動脈解離の代表的な症状

急性大動脈解離の際に現れる症状は多岐にわたりますが、その多くが命に直結するサインであり、早期の発見と迅速な対応が生死を分ける鍵となります。ここでは、特に注意すべき代表的な症状を3つ取り上げます。

突発的な胸や背中の痛み

急性大動脈解離でもっとも典型的な症状が、突如として現れる激しい胸部や背部の痛みです。「引き裂かれるような痛み」「焼けつくような痛み」と表現されることもあり、痛みが胸から背中、さらに腹部や下肢へと移動していくこともあります。これは解離が広がっている兆候と考えられます。高齢の方では軽い腰痛程度にとどまる場合もあり、注意が必要です。こうした痛みが出現した際に自宅で様子を見るのは非常に危険なため、ただちに救急車を呼び医療機関を受診する必要があります。

突然の意識消失(失神)

急性大動脈解離によって心臓や脳への血流が遮断された場合、前触れなく意識を失う「失神」が起こることがあります。本人に痛みの自覚がないまま倒れてしまうケースもあるため、周囲の人が異変に気づくことが重要です。失神は心臓の周囲に血液がたまる「心タンポナーデ」や、脳に向かう動脈の解離による血流低下が原因となります。このような状態を見た場合は、迷わず救急要請を行い、救命救急センターや循環器系の専門科での対応が必要です。

手足の麻痺や言語障害などの神経症状

解離が脳に血液を送る動脈に及ぶと、脳梗塞に類似した症状が現れることがあります。たとえば、「手足が動かしにくい」「言葉がうまく出ない」「ろれつが回らない」といった症状や、両下肢の突然の麻痺やしびれが現れることもあります。これらは大動脈の枝にあたる血管が閉塞し、臓器や神経への血流が遮断されることが原因です。見た目は脳卒中に似ていても、急性大動脈解離の可能性を否定できないため、全身の評価と緊急治療が不可欠です。循環器内科、心臓血管外科、または救急科をすぐに受診してください。

急性大動脈解離を予防する可能性の高い食べ物

急性大動脈解離を確実に防ぐと証明された食品は現時点では存在しませんが、発症の背景となる生活習慣病を予防する食生活は、結果としてリスク低下に貢献します。ここでは、血管の健康維持に良いとされる代表的な食品を3つ紹介します。

野菜や果物

カリウムには余分なナトリウムを体外に排出して血圧を下げる働きがあり、食物繊維は脂質や糖分の吸収を穏やかにすることで、血糖値やコレステロール値の管理に役立ちます。さらに、緑黄色野菜に含まれる抗酸化物質やビタミンKは、血管の柔軟性や健康維持にも良い影響を与えるとされています。バナナ、ほうれん草、アボカド、海藻、玄米などを積極的に取り入れるとよいでしょう。

発酵食品

納豆や味噌、ヨーグルト、キムチなどに含まれる納豆菌や乳酸菌は腸内環境を改善し、その結果として血圧や血糖値の安定に貢献すると考えられています。日常的に取り入れることで、血管の健康をサポートする可能性があります。

青魚

サバ、イワシ、サンマなどの青魚には、EPAやDHAといったオメガ3脂肪酸が豊富に含まれています。これらは血液の流れを良好に保ち、中性脂肪を減らす働きがあり、動脈硬化の進行を抑える効果が期待されます。

急性大動脈解離発症のリスクを上げやすい食べ物・飲み物

食生活が乱れると生活習慣病を悪化させ、それが急性大動脈解離のリスク上昇につながる可能性があります。ここでは、特に注意が必要とされる3つの食べ物・飲み物の例を紹介します。

塩分を多く含む食品

塩分の摂りすぎは血圧を上昇させ、大動脈にかかる圧力を強める原因になります。ラーメン、漬物、加工肉(ハムやソーセージなど)は無意識のうちに塩分を多く摂取しやすいため、日常的に摂取量に注意が必要です。

飽和脂肪酸・トランス脂肪酸を多く含む食品

これらの脂肪は悪玉コレステロール(LDL)を増加させ、動脈硬化を進行させるとされています。ポテトチップス、フライドチキン、洋菓子(バターやマーガリンを多く使うもの)などが該当し、控えめにすることが望ましいです。

過剰なアルコール摂取

アルコールは一時的に血圧が下がるように見えることがありますが、実際には交感神経を刺激し、血圧を不安定にする要因となります。ビール、焼酎、ワインなども含め、飲酒は「適量」を守ることが肝心です。

急性大動脈解離を予防するために大切な生活習慣・運動習慣

食生活の改善に加え、日々の生活スタイルを見直すことも、急性大動脈解離の予防には不可欠です。生活習慣病を予防するために重要な、3つの生活習慣を紹介します。

減塩と栄養バランスのとれた食事

外食や加工食品中心の食事は塩分過多になりやすく、高血圧の原因となります。野菜や魚を取り入れた減塩メニューを自炊中心で心がけることで、血管への負担を和らげることができます。

継続できる有酸素運動

運動不足は高血圧や動脈硬化の進行を助長します。ウォーキングや軽いジョギング、水中歩行などの有酸素運動を、無理のない範囲で生活に取り入れましょう。1日20~30分、週3~5回を目安に継続することが大切です。

禁煙とストレスコントロール

喫煙は急性大動脈解離の直接の原因ではないものの、動脈硬化や大動脈瘤のリスクを高め、発症の引き金になることがあります。ニコチンは血管を収縮させ、血圧や心拍数を上げるため、禁煙は重要な予防策です。また、ストレスや睡眠不足も血圧変動の要因となるため、深呼吸、入浴、趣味の時間を活用して自律神経の安定を図りましょう。

「急性大動脈解離の予防」についてよくある質問

ここまで急性大動脈解離の予防について紹介しました。ここでは「急性大動脈解離の予防」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

急性大動脈解離の前兆となる症状について教えてください。

藤井 弘敦藤井 弘敦 医師

急性大動脈解離は、突然発症し命に関わることもある非常に危険な病気ですが、一般的に「前兆」と呼べるような分かりやすいサインはありません。多くの場合、何の予告もなく、突如として「引き裂かれるような激しい胸や背中の痛み」や「失神」「手足の麻痺」といった症状が現れます。これらはすでに病気が始まっている状態であり、「前兆」ではなく「発症時の症状」です。発症の予測が難しいため、高血圧や動脈硬化などのリスク因子を持つ方は、日ごろから血圧管理や生活習慣の改善を心がけることが予防につながります。このような激しい痛みが現れた際には、すぐに救急車を呼ぶことが命を守る行動になります。

編集部まとめ 急性大動脈解離は命に関わる病気です。日常生活での予防を心がけましょう!

急性大動脈解離は突然発症し、命に関わる危険性の高い病気です。しかし、高血圧や動脈硬化、喫煙などのリスク因子を日頃からコントロールすることで、発症のリスクを下げることは可能です。塩分を控えた食事、適度な有酸素運動、禁煙、ストレスの管理など、日常生活の中でできる予防習慣が重要です。
発症時には突然症状が現れるため、異常を感じたら早めに医療機関を受診するか、救急車を呼ぶことが大切です。

「急性大動脈解離」と関連する病気

「急性大動脈解離」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

脳神経内科の病気

急性大動脈解離に合併して上記のような重大な病気がみられることがあります。急性大動脈解離は命に関わる病気であり、胸痛、背部痛、失神など急性大動脈解離を疑う症状がみられる場合には救急要請をしましょう。

「急性大動脈解離」と関連する症状

「急性大動脈解離」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 腹痛
背部痛
  • 失神
  • 意識障害
  • しゃべりにくい
  • 口角が下がる
  • 手足が動かしにくい

急性大動脈解離はいろいろな症状が現れます。上記は症状の例ですが、症状のみでは急性大動脈解離を区別することができません。疑われる症状がある場合には、医療機関を受診して早急に相談しましょう。

この記事の監修医師